いい人を集めるには求人票に「○○情報」を入れる

経営

「求人を出してもなかなか応募がない」
そんなご相談をいただくことがあります。

「応募はたくさん来るけど、採用したいと思える人の応募が少ない」
というのも多くいただくご相談です。

なぜそのようなことが起こってしまうのでしょうか。

今回は、これまで数千件の求人票作成に携わってきた筆者が、正しく自社の情報を伝えるポイントについて解説していきたいと思います。

最後までお読みいただくことで、自社にふさわしい人を集める求人票作成のポイントをご理解いただけることでしょう。

多様化する募集手段、それらいずれにも共通すること

求人募集のやり方はとても多様化しています。

求人情報誌や求人情報サイトなどいわゆるマス広告を使うスタイルもあれば、人材紹介会社を通じて自社に会う人を紹介してもらうスタイルもあります。
ほかにも、SNSを使った「ソーシャルリクルーティング」、社員紹介(リファラル採用)、マッチングプラットフォームサービスの活用等の「ダイレクトリクルーティング」など実にさまざまです。

どういった募集手段を用いるか、これは重要なポイントですが、そのいずれにも共通することがあります。

それは、言葉を使って自社の情報を伝達するということです。

自社のことが正しく伝わらなければ、どんなにお金を費やしても、求める結果を得ることはできません。
 

“売れる営業”と“売れない営業”との違いから考える

私は採用のコンサルティングをしている傍ら営業のコンサルティングもしています。

コンサルティングの一環で、営業同行することもよくありますが、数多くの営業パーソンと関わるなかで、“売れる営業”と“売れない営業”との違いを様々な角度でパターン分析しています。

その違いの一つで特徴的なものに、「商品の開発秘話を語る」というものがあります。

新規営業の場面を想像してみてください。
目の前にいるお客様は当社のことを当然よく知りません。

この場面で、“売れない営業”は、会社パンフレット、商品チラシを取り出して、そつなく説明をします。一見問題なさそうです。

一方、“売れる営業”は、「なぜ自分はこの会社の営業をやっているのか」「この商品はなぜ開発されたのか」といったことをストーリーで語ることがあるのです。

ポイントは、お客様に価値観を共感いただく、ということ。

お客様が商品購入の意思を持ったということは、金額以上の価値があると感じたということです。
つまり、営業活動において重要なのは、商品を購入することによって得られる価値、便益、メリットを伝えるということに他なりません。

しかし、商品がコモディティー化している現代において、商品そのものに違いを生み出し、また説明することは非常に難しくなっています。

そこで、“売れる営業”は、商品や自身にストーリーを乗せて伝えているのです。
商品そのものの違いではなく、商品の背景にあるストーリーへの共感が、購入の決め手となることは少なくないことです。
 

いい人を集めるには、「背景」を語る

それでは、転じて採用活動においてなかなか求人を出しても応募がない会社とは、どういった状態でしょうか。
言わずもがな、“売れない営業”の状態です。
まずは、“売れない営業”だということを自覚しましょう。

では、いい人を集めるには、どのようにしたらいいのでしょうか。

それは、「背景を語る」ということです。
“売れる営業”の特徴の一つである「商品の開発秘話を語る」と通ずるアプローチです。

採用活動において、よく伝え忘れてしまうのが、
なぜ、この求人をするのか?
今回、新しい人財を採用することで、実現したいことはどんなことか?

といった背景情報です。

求人票を作成する際は、必ず「自社のことを知らない人がたまたま求人票を見た」というシチュエーションを想像することが必要です。

当然、その人は、自社の情報を何も持っていません。

前提知識を共有している相手であれば、ある程度の情報を伝えれば、何となくわかるものですが、求人票をたまたま見た人はそうではない相手です。
つまり、「ある程度の情報」を与えただけでは理解されません。

そのなかでも、「背景情報」は省略しないというのがポイントです。
 

背景を語ることで、採用を成功させた事例

ある会社の採用支援に携わった実例をご紹介しましょう。
その会社は、1年半にわたり、新規事業の立ち上げにあたって求人をおこなっていました。
しかし、応募はほとんどなく、あったとしても面接に至らないという状況が続き、1年半もの間、一人も採用できない状況となっていました。

ご支援の初日、私がおこなったことは、
「そもそも、なぜ採用する必要があるのですか?」とお訊ねすることでした。

「前にもお伝えした通り、新規事業を立ち上げるからですよ、人がいなければ事業開始できません。だから採用するのです」
これが採用担当者の方の回答でした。

「では、そもそも、なぜ新規事業を立ち上げるのですか?」
私は、次にその質問を投げかけました。

「なぜって……」

そこから、約3時間かけて、ようやくできあがったのが、次の文章でした。

当社は、古紙回収業者として、地域密着の姿勢で事業をおこなってきました。

一方、古紙回収業は地域とのつながりが深いものの、直接地域の方々と関わる機会が少ないため、社長は悩んでいました。
「もっと地域の皆様の『顔が見える』サービスを展開したい」と。

そこで、新規事業を立ち上げることにしました。
(中略)
この新規事業によって、これまでの古紙回収業の枠を超えて、多種多様な地域の皆様のお困り事を解決できます。

この仕事は、地域の皆様のお困り事を解決し、お役に立てる仕事です。
「これからもっと人の役に立つ仕事をしたい」
「地域社会、地域の生活者の方々に喜んでいただきたい」
「毎日『ありがとう』がもらえて信頼関係が築ける仕事がしたい」

こんな仕事がしたいと思っている方を募集しています。

なぜ、この求人をするのか?
今回、新しい人財を採用することで、実現したいことはどんなことか?

このことを深く掘り下げ、採用活動をした結果、約2か月後に2名の正社員採用が実現しました。
自社の価値観に共感していることから、入社後もイキイキと業務に取り組んでいるとお聞きしています。

採用活動をおこなううえでのベースとなる背景情報は、求職者が応募する動機と直接繋がるものです。

給与以外の報酬を得ることを働く動機とする求職者が増えているからです。
そんな時代において、企業側が採用活動において発信するメッセージは、自社の価値観が盛り込まれていなければならなくなっています。

ぜひ、採用活動をする際には、このことを覚えておいていただきたい、そう思っています。
 

求人企業側自らがメッセージを作っているか?

なお、求人媒体会社の営業担当者が全員このような知識を持っているとは限りません。
ですから、求人票作成を丸投げしているとしたら、大変危険です。

世の中に、似たり寄ったりの求人情報が溢れているのは求人企業側自らがメッセージを作っていないことが原因です。
世の中に似たり寄ったりの求人情報は溢れていても、似たり寄ったりの会社は存在しません。

それぞれの会社に歴史があり、想いがあり、未来へのビジョンがあります。
それを言葉にする。その飾らない言葉が何よりも求職者に届くものです。
テクニックはそのあと身につけるか、私のようなプロに任せれば良いのです。

ぜひ、「なぜ採用するのか」を掘り下げていただき、想いを語っていただければと思います。

いい人を集めるには求人票に「背景情報」を入れる、ぜひ実践してみてください。

筆者紹介

株式会社アタックス・セールス・アソシエイツ 採用コンサルタント 酒井 利昌
学習塾業界、人材サービス業界を経て、株式会社アタックス・セールス・アソシエイツへ入社。前職の人材サービス業界では、人材派遣、新卒採用を通じた、大学生と企業とのマッチング支援に従事。9年間で1,000社の採用支援、学生3,000人の就業支援に携わる。
現職では、年間150日以上の研修、セミナー、コンサルティング支援に従事。
予材管理のコンサルティングは、カーディーラー、住宅設備メーカー、建設・設備工事業、工作機械商社、食品包装専門商社など多岐に渡る。マネジメントの初期設計から成果を導き出すための再設計まで、組織の現状を正しく捉え、指導することに定評がある。
また、新入社員や若手社員向けの研修も実績多数。インパクトのある激しい研修指導により、目標を絶対達成させるマインドをゼロから鍛え上げており、企業からのリピートオーダーが絶えない。営業コンサルティングに加え、採用コンサルティングにも従事。超売り手市場のなか、培ってきた営業・マーケティングノウハウを採用活動に転用することで、携わった企業すべてを短期間で採用目標達成に導いている。
著書『いい人財が集まる会社の採用の思考法』(フォレスト出版)
酒井利昌の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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