今年、企業の採用活動は新型コロナウイルスに大きな影響を受けた1年でした。
面接の延期や中断等が相次ぐなか、各企業が試行錯誤したのが「オンライン採用」です。
「オンライン説明会」、「オンライン面接」「オンラインインターンシップ」に課題を持つ企業が増え、私のもとにはその実施方法について数多くのご相談がありました。
そこで、今回はそのなかでも「オンライン面接」にフォーカスし、採用活動のオンライン化について各種調査データをご紹介しながら、考察していきたいと思います。
最後までお読みいただくことで、採用活動におけるオンライン化の実態、今後の動向を知ることができます。
これからの自社の採用活動を検討するうえで、ぜひ最後までお読みください。
「オンライン面接」、実施していますか?
経団連が9月15日に会員企業の2021年春入社の大学生の就職・採用活動に関する調査結果を発表しました。新型コロナウイルス感染拡大で92.9%の企業がオンライン面接を実施し、全体の63.8%の企業が面接すべてをオンラインにしたと回答しました。
(経団連全会員企業1,448社のうち、442社が回答(回答率30.5%))
出典:「2021年度入社対象 新卒採用活動に関するアンケート結果」(日本経済団体連合会)
一方で、このようなデータがあります。
総合人事・人財サービスを展開するアデコ株式会社が10月30日に、企業の人事・総務担当者1200名を対象に新卒、中途採用活動の実態に関する調査結果を発表しました。
(調査対象:従業員1000名以上の企業に勤める担当者600名、従業員1000名未満の企業に勤める担当者600名)
これによると、採用方法について、約半数が「オンライン・対面式の両方」で実施している一方、企業規模別で比較すると、企業規模が小さい方が「対面のみ」で実施している割合が高い傾向が見られます。
出典:「緊急事態宣言から半年後の企業テレワーク実態調査」(アデコグループ)
貴社はいかがでしょうか。「オンライン面接」を実施していますか。
「オンライン面接」をしない企業は、今後もしない傾向
エン・ジャパン株式会社は、自社サービスを利用する企業935社を対象におこなった「オンライン面接」に関するアンケート調査結果を発表しました。
(調査した935社の96%が従業員1000名以下の企業)
これによると、オンライン面接の実施経験がある企業の71%が「今後も積極的に実施する」と回答する一方、未経験の企業は「今後も実施したくない」が半数以上となっています。
出典:『900社に聞く︕「オンライン面接」実態調査』(エン・ジャパン株式会社)
「今後も実施したくない」と回答した企業の理由としては、
- 社内でテレビ会議を利用する機会がないため、オンラインに慣れていない。コロナ感染拡大中であれば、オンラインもやむを得ずといった感じ。(メーカー/101~300名)
- 社内見学もセットになるので、来てもらった方が辞退にもつながりにくい。(サービス関連/1~50名)
- 応募者に施設の雰囲気を知ってもらうのも大事だと思うので、来てもらった方がよい。(商社/1~50名)
- 機材など、必要な物が多い。また、相手の人柄は画面越しでは判断が難しい。(不動産・建設関連/51~100名)
が挙げられています。
オンライン面接には、「日程調整の手間が省けるので、採用までの時間短縮に繋がる」「面接のドタキャンも減る」「地方など、遠方の求職者との面接機会ができる上、交通費の負担がない」といったメリットがある一方、デメリットがあるのも確かです。
しかし、私は「オンライン面接」を実施しないデメリットの方が今後大きくなると予測しています。なぜなら、「オンライン面接」をしない企業には、そもそも応募しなくなっていくかもしれないからです。
「オンライン面接」をしないと、そもそも選んでもらえない?
企業側の視点で、メリット/デメリットを挙げるのもいいですが、その前に求職者側の視点を持ち合わせて、採用手法を検討することも忘れてはなりません。
求職者側が、「オンライン面接」にどのような意見を持っているかご存知でしょうか。
人材紹介会社エンワールド・ジャパン株式会社が、転職活動における「オンライン面接」についての意識調査を行い、2,081名から得た回答結果によると、
転職希望者の43%が、オンライン面接の実施有無が「応募の意向に影響する」と回答しています。そして、年代別では、年代が若いほど「影響する」と回答した割合が高くなっています。
出典:「グローバル人材のオンライン面接意識調査」(エンワールド・ジャパン株式会社)
「とても影響する」「やや影響する」と回答した理由として、
第1位は「新しい時代の変化にスピーディーに順応できる企業かどうかが分かる」
第2位は「有事の際に柔軟な対応ができる企業かどうかが分かる」と続き、採用プロセスを通じて、柔軟性のある企業かどうかを確認していることがうかがえます。
一方で、一次面接~最終面接まですべてをオンラインにすることには抵抗があるようです。
「どの様な面接方法が理想ですか」という問いには、「最終面接以外はオンライン、最終面接のみ対面」という回答が最多で35%となっています。
こうした求職者側の意向は、転職希望者のみでなく、新卒学生にも同様に見られている傾向です。
エン・ジャパン株式会社が行った『22卒学生600名に聞く「オンライン就活」意識調査』によると、オンライン就活をすることについて、7割が「メリットを感じる」と回答しています。
一方、オンラインでの参加に抵抗がある就活イベントは、「最終面接」「インターンシップイベント」となっています。
出典:「22卒学生600名に聞く「オンライン就活」意識調査」(エン・ジャパン株式会社)
企業側はこうした情報をもとに、今後の採用活動に、オンラインと対面とをどう組み合わせていくべきか検討するべきです。
採用を成功させる秘訣は、正しい情報収集
拙著『いい人財が集まる会社の採用の思考法』にも書きましたが、採用がうまくいっている会社には、「マーケットを知っている」という特徴があります。
採用環境はとても変化が激しいものです。
その変化をキャッチして、採用活動に反映させている。
これこそ採用がうまくいっている会社の特徴です。
何も考えずにこれまでのやり方を続けていたら完全に時代遅れになってしまいます。
世の中の動きをもとに、抜本的な戦略を組み立てなおすこと。
自社の戦況をリアルタイムで捉え、戦術を柔軟に変化させること。
いずれにしても、採用を成功させるには、常に新しい情報を収集する努力が欠かせません。
今回のコラムをお読みになって、「へえ~!」「そうなんだ!」と思った方は、少々ヤバイと思ったほうがいいでしょう。
今回の最新情報をもとに、これからの採用活動のやり方を再検討いただけたら嬉しいです。
筆者紹介
- 株式会社アタックス・セールス・アソシエイツ 採用コンサルタント 酒井 利昌
- 学習塾業界、人材サービス業界を経て、株式会社アタックス・セールス・アソシエイツへ入社。前職の人材サービス業界では、人材派遣、新卒採用を通じた、大学生と企業とのマッチング支援に従事。9年間で1,000社の採用支援、学生3,000人の就業支援に携わる。
現職では、年間150日以上の研修、セミナー、コンサルティング支援に従事。
予材管理のコンサルティングは、カーディーラー、住宅設備メーカー、建設・設備工事業、工作機械商社、食品包装専門商社など多岐に渡る。マネジメントの初期設計から成果を導き出すための再設計まで、組織の現状を正しく捉え、指導することに定評がある。
また、新入社員や若手社員向けの研修も実績多数。インパクトのある激しい研修指導により、目標を絶対達成させるマインドをゼロから鍛え上げており、企業からのリピートオーダーが絶えない。営業コンサルティングに加え、採用コンサルティングにも従事。超売り手市場のなか、培ってきた営業・マーケティングノウハウを採用活動に転用することで、携わった企業すべてを短期間で採用目標達成に導いている。
酒井利昌の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。
著書『いい人財が集まる会社の採用の思考法』(フォレスト出版)