求人募集時に“女性歓迎”はOK?NG? 法律を知り、いい採用を実現しよう。

経営

求人募集をする際は、気をつけなければならないことがいくつかあります。
そのなかでも今回はあたりまえだけど、大事なことをテーマに扱いたいと思います。

それは、“法律に従って求人募集する”ということ。

本当にあたりまえのことです。
地味な話ではありますが、求人手法が多様化している今、法律を知らないことによるリスクが高まっています。
大手求人媒体や紹介会社経由であれば、各社がチェックしますので、リスクは抑えられますが、自社サイト、SNSを通じた情報発信や、リファラル採用(社員紹介)を行う際、誰も検閲しないまま発信したことで、社会的な信頼が失われるケースも存在します。

今回は、約9年間、求人媒体の運営に携わってきた筆者が、主に、「職業安定法」「男女雇用機会均等法」を用いて、求人票掲載時に最低限押さえておくべきポイントを解説します。

法律のことを正しく理解することで、自社に合った求職者に適切なアプローチを行うこともできます。(そのことは後半に記述しています)

最後までどうぞお付き合いください。

職業安定法

まずは、職業安定法です。

第5条の3には、「労働者供給事業者は、それぞれ、職業紹介、労働者の募集又は労働者供給に当たり、求職者、募集に応じて労働者になろうとする者又は供給される労働者に対し、その者が従事すべき業務の内容及び賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない」とあります。

つまり、「応募者に対して、仕事内容、賃金、労働時間、その他の労働条件を明示しなければなりません」ということ。

求人媒体や紹介会社を通じて募集をする際には、各社のフォーマットがありますので、それに従えば心配ありませんが、気を付けるべきは、その他の場合です。

たとえば、会社ホームページ。
採用ページにちょくちょく見かけるのが、「委細面談」という表現です。
委細面談とは、「詳しいことは面接のときに話します」という意味。
飲食店やアパレルの店舗前の求人貼り紙にもよく見かけますね。

これは、法律違反です。
委細面談だけでは何も情報がありませんので、応募が見込めないことは言うまでもありません。
働き方が多様化している昨今、求職者との間で調整することは必要ですが、業務内容、賃金、労働時間の事前の明記は必須です。

また、同第42条には、「当該募集に応じようとする労働者に誤解を生じさせることのないように平易な表現を用いる等その的確な表示に努めなければならない」ともあり、条件を明示する際は、誤解を与えないよう、分かりやすい言葉に努めなければなりません

男女雇用機会均等法

続いて、男女雇用機会均等法。

第5条には、「事業主は、労働者の募集及び採用について、女性に対して男性と均等な機会を与えなければならない」とあります。

ですから、男女のいずれかを募集したり、いずれかを優遇したりといった表現は違法になります

「男性歓迎」「女性歓迎」といったあからさまな表現はもちろんですが、「営業マン」「カメラマン」「ウエイター」といった表現もNGですので、注意が必要です。
「マン」は、一般的に男性のことを示す表記であり、男性を優遇していると受け取られる可能性があるためです。

営業マン → 営業担当者、営業スタッフ
カメラマン → フォトグラファー、カメラマン(男女)
ウエイター → ウエイター・ウエイトレス
(このように、表現を変える必要あり)

※「男性活躍中」という表記は、現状を示す表現として使用可能です。ただし、誤解を招かないよう、使用する際には注意が必要です。

ポジティブ・アクションをご存知ですか?

男女雇用機会均等法においては、求人活動で男女に差をつけることは、原則禁止されていますが、ある条件を満たせば、女性に向けた求人を出すことができます。

「ポジティブ・アクション」をご存知でしょうか?

募集する職種の女性の比率が4割を下回っている状況であれば、女性に向けた求人を出すことができる、というものです。

参照:厚生労働省『DO!ポジティブ・アクション』

4割を基準とし、男女の労働者間に格差が生じている場合には、「女性のみ」を対象とすること、女性を優遇することは、法律違反となりません。

※求人票内に性別の対象、優遇を記載する際は、必ず「ポジティブ・アクションによる募集」と記載することも必須です

なお、女性の比率が4割以下という条件は、企業全体での比率ではないという点には注意が必要です。あくまで募集する職種の比率です。全社員の男女比が7:3であったとしても、募集する職種の女性比率が4割を超えている場合には、ポジティブ・アクションは適用されません。
(看護師や保育士など女性の多い職種では、男性への格差是正に用いることも可能です)

男女雇用機会均等法は知っていても、ポジティブ・アクションを知らないがために、ズバリ女性歓迎と表現せずに、あやふやな表現をしているケースがよく見られます。
それは、求職者側に正しいアプローチができていないことを意味しますので、とてももったいないことです。

まとめ

今回のコラムを通じて、求人募集をするうえで最低限守らなければならないルールがあることを整理できましたでしょうか。

仕事内容、給与、応募条件を正確に記載することで、採用後のミスマッチやトラブルを防ぐことができます。

ぜひ、基本を押さえたうえで、自社に合う人財を採用する取り組みを進めていただきたいと思います。

筆者紹介

株式会社アタックス・セールス・アソシエイツ 採用コンサルタント 酒井 利昌
学習塾業界、人材サービス業界を経て、株式会社アタックス・セールス・アソシエイツへ入社。前職の人材サービス業界では、人材派遣、新卒採用を通じた、大学生と企業とのマッチング支援に従事。9年間で1,000社の採用支援、学生3,000人の就業支援に携わる。
現職では、年間150日以上の研修、セミナー、コンサルティング支援に従事。
予材管理のコンサルティングは、カーディーラー、住宅設備メーカー、建設・設備工事業、工作機械商社、食品包装専門商社など多岐に渡る。マネジメントの初期設計から成果を導き出すための再設計まで、組織の現状を正しく捉え、指導することに定評がある。
また、新入社員や若手社員向けの研修も実績多数。インパクトのある激しい研修指導により、目標を絶対達成させるマインドをゼロから鍛え上げており、企業からのリピートオーダーが絶えない。営業コンサルティングに加え、採用コンサルティングにも従事。超売り手市場のなか、培ってきた営業・マーケティングノウハウを採用活動に転用することで、携わった企業すべてを短期間で採用目標達成に導いている。

酒井利昌の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

著書『いい人財が集まる会社の採用の思考法』(フォレスト出版)

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