経営リスク総点検!~外部環境の変化にびくともしない会社

経営

外部環境が大きく変化した2024年

8月末に、大型の台風10号が日本に上陸しました。

九州地区を中心に甚大な被害を与えるとともに、飛行機や新幹線を始めとした様々な移動手段の運休が相次ぎ、多くの人々に影響を与えました。

台風による営業休止や、運送の遅れなど、ビジネス面でも多くの企業に影響が及びました。

今年だけでも、年初の能登半島地震や、8月上旬には日向灘で発生した地震の影響により南海トラフ臨時情報が発令されるなど、近年、数多くの自然災害が発生しています。

また、自然災害以外にも、ビジネスに多大な影響を与える外部環境の変化は、継続的に発生しています。

近年ですと、ロシアによるウクライナ侵攻に伴う原料高や、急激な円安に伴う輸入価格の高騰など、企業の業績に重大なインパクトを与える環境変化が発生しています。

経営者の重要な役割とは

このような環境変化の中でも会社を永続させることが、経営者の重要な役割です。

今回は、外部環境が大きく変化しても企業を存続させるための要点について、お話ししたいと思います。

そのポイントは、次の2点であると筆者は考えます。

1.損益分岐点の引き下げ
2.リスク分散

1.損益分岐点の引き下げ


外部環境が大きく変化しても企業を存続させるためのポイント1つ目は損益分岐点の引き下げです。

損益分岐点を引き下げられると、黒字を維持するために必要な売上水準が低下しますので、外部環境の変化を受けて売上が下がった場合でも、利益を確保しやすくなります。

損益分岐点を引き下げるために、やるべきことは以下の通りです。

固定費の削減

損益分岐点を引き下げるための方策の1つ目は固定費の削減です。
固定費は、以下の3つに分類することが出来ます。

【人件費】給与・賞与や福利厚生費、法定福利費など
【戦略経費】将来の売上や利益を獲得するための費用
【節約可能費】人件費、戦略経費以外の費用

上記のうち、節約可能費は徹底的に削減を図るべきコストです。

まずは貴社で発生している費用を上記の3つに分類することで、節約可能費がいくらくらいあるのか見える化をしてみてください。

その上で、節約可能費に分類された費用について、徹底的な削減を検討します。
削減を検討する際のポイントは、以下の2点です。

①ゼロベースで検討する

過去の経緯や固定概念は取っ払い、ゼロベースで必要なコストなのか、削減できないのかを検討してみてください。

②聖域を作らない

節約可能費に分類された費用については、聖域を作ってはいけません。
社内的に触れづらい費用であっても、聖域なく削減を検討することが必要です。

固定費の変動費化

損益分岐点を引き下げるための方策の2つ目は固定費の変動費化です。

固定費を変動費化することで、売上が下がったら費用を下げられるコスト構造に変わり、売上低下局面でも利益を確保しやすくなります。

固定費を変動費化するためには、社員を派遣や外注に変える、社内で行っている業務をアウトソース化するなどの方策が考えられます。

上記の「固定費の削減」において、節約可能費の削減を検討する中で、削減が難しい費用については、変動費化できないかを検討すると良いでしょう。

粗利率の向上

損益分岐点を引き下げるための方策の3つ目は粗利率の向上です。

粗利率を向上させることにより、売上に対する粗利の割合が増え、より少ない売上高で利益を確保できるようになるため、損益分岐点の引き下げにつながります。

粗利率を向上させるための方策は、以下のとおりです。

①付加価値の向上

粗利率を向上させるためには、競合他社よりも価値の高い製商品を販売したり、周辺サービスで差別化するなど、お客様に喜んでお金を払っていただけるような付加価値の向上が必要となります。

付加価値の向上は、一朝一夕に達成することは困難です。

「固定費の削減」の中でお話しした戦略経費を活用し、日ごろから付加価値の向上に向けた活動や投資を行っていく必要があります。

②セールスミックスの見直し

会社全体の粗利率を向上させるためには、粗利率の低い製商品構成を下げ、粗利率の高い製商品構成を上げることで実現可能です。

こういったセールスミックスの見直しの方策を検討するためには、まずはどの製商品の粗利率が高く、どの製商品の粗利率が低いのかを明らかにしなければなりません。

社内の業績管理体制を整備し、製商品別の粗利率の把握をしてみてください。

そのうえで、営業部門を交えて、粗利率の高い製商品構成を上げていくための方策を検討していくことになります。

2.リスク分散


外部環境が大きく変化しても企業を存続させるためのポイント2つ目はリスク分散です。

ビジネスを継続させていくには様々なリスクがつきものです。
できる限りリスク分散を図ることにより、企業を存続できる可能性が高まります。

リスク分散を考えるべき事項として、主に以下のようなものがあります。

取引先の分散

仕入先や外注先などについて、一部の企業へ集中しており、代替先が無い場合には、取引が何らかの理由で停止した場合に、ビジネスの継続に影響を与える事態となってしまいます。

日ごろから、仕入先や外注先について、取引が集中していないか、集中している場合には万が一に備え、代替先を確保しておくなど、有事の際にもビジネスを継続できる体制を築いておく必要があります。

得意先の分散

一部の得意先に売上高が集中していると、その得意先との取引に何かしらの問題が発生した場合に、企業の存続に影響を及ぼしてしまう可能性が高まります。

日ごろから、得意先数を増やし、一部の得意先へ売上高が集中しないように気を付けておく必要があります。

筆者のクライアント先には、得意先への集中は全体売上高の30%以内に抑えるなどの基準をもっている経営者がおられます。

拠点の分散

製造拠点などが1箇所に集中している場合には、自然災害などで当該拠点が影響を受けた際、企業の存続に影響を及ぼしてしまう可能性が高まります。

製造拠点の分散や、緊急時の外注先の確保など、万が一の場合にもビジネスを継続できる体制を築いておく必要があります。

事業の分散

単一事業のみの場合、当該事業の事業環境の悪化が、企業の存続に影響を及ぼす可能性が高まります。

ある事業の業績が悪化しても、他の事業で補完できるように、事業の分散を図れると企業を存続できる可能性が高まります。

なお、既存の事業が悪化してから、新規事業への参入を検討する場合がありますが、その場合は新規事業を検討するための時間や資金面での制約が発生してしまうため、既存事業が好調な時にこそ、新規事業の立ち上げを検討しておくべきです。

最後に

以上、外部環境が大きく変化しても企業を存続させるためのポイントを説明してきました。

中小企業の経営者は、いかなる場合でも企業を永続させることが大きな使命です。

日ごろから、企業を永続できる体制構築を念頭において、経営を進めていかれることをお奨めします。

アタックスグループでは、企業を永続できる体制を構築するための中期経営計画の策定や、社内管理体制の整備のサポートを行っております。

ご相談ください。

筆者紹介

株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティング 執行役員
中小企業診断士 辻 裕之
銀行系システム会社、NRIデータサービス(現野村総合研究所)を経て、アタックスに参画。中堅中小企業を中心に、企業再生、M&Aサポート、計画経営推進、管理体制整備、経営顧問業務など幅広い業務にあたるオールラウンダーなプロジェクトマネージャーとして活躍中。
辻 裕之の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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