人財が追いかけてくる中小企業

経営

資本力・規模力が大企業と比較し総じて劣位な中小企業が、成長発展していく唯一の方法は、何にもまして人財の確保・育成に注力した経営を貫くことである。

というのは、人財こそ中小企業の成長発展の原動力であり「新しい感動的価値」創造の唯一の担い手だからである。

しかしながら、多くの中小企業はこの最も大切なことを頭では理解していたとしても、実践が未だ、はなはだ不十分と言わざるを得ない。このことは好況の時は人財を強く求めるが、逆に不況になると、人財を求めないばかりか、苦渋の選択と言いつつ、従業員のリストラを平然と実行する経営をみればよく分かる。

こうした経営は根本的に間違っていると言える。というのは、自社が好況であったのは、そこに人財が豊富に存在していたからであり、逆に自社が不況になったのは、自社には人財が少なすぎたからなのである。つまり、不況といって人財を求めなければ、外部環境の好転による、一時的好況に浴したとしても、内発的な景気の創造は到底困難であり、永遠に不況に悩まされる経営が続いてしまうのである。

だからこそ、人財は設備投資等とは異なり、好不況にかかわらず強く求め続けるべきなのである。

事実、好不況により業績が大してぶれない、いわゆる「景気超越型企業」「景気創造型企業」の経営をみると、好不況にかかわらず人財確保に注力しているという確かな共通項が発見できる。

こういうと、「人財を募集しても、中小企業にはなかなか優秀な人財が振り向いてくれない」と、あきらめ顔の中小企業が多いが、それは全くの誤解である。

というのは、筆者の良く知る人財確保に注力している中小企業にあっては、優秀な人財が、わざわざ入社したいと全国各地から追いかけてくるからである。

その代表格は「ライブレボリューション」「アニコム」「鎌倉シャツ」「船橋屋」「アチーブメント」そして「伊那食品工業」等々である。これら中小企業はいずれも採用枠数名から10数名でありながら、大学生等の応募は毎年約1万人を超えている。その1つ、「ライブレボリューション」は社員数僅か60名の中小企業で、募集人員も僅か数名というのに、入社希望の大学生等は、毎年3万人をはるか超えている。

これら企業のキーワードをあえて言えば「愛」「温もり」「仲間」「社員第一主義」「オープン」等である。

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筆者紹介

坂本光司

アタックスグループ 顧問
経営学者・元法政大学大学院教授・人を大切にする経営学会会長  坂本 光司(さかもとこうじ)
1947年 静岡県生まれ。静岡文化芸術大学文化政策学部・同大学院教授、法政大学大学院政策創造研究科教授、法政大学大学院静岡サテライトキャンパス長等を歴任。ほかに、「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞審査委員長等、国・県・市町村の公務も多数務める。専門は、中小企業経営論、地域経済論、地域産業論。これまでに8,000社以上の企業等を訪問し、調査・アドバイスを行う。

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