清川メッキ~一千億個つくり不良率ゼロの企業

経営

福井県福井市に清川メッキという社名の中小企業がある。業種は社名のとおり各種メッキ業である。

メッキ業は、典型的な受注・下請型産業で、それゆえ、発注者の意向に強く左右されやすいばかりか、近年の国際分業の拡大や受注競争の激化の中で、その受注量も大きく減少している業界である。

事実、業界統計を見ると、今から15年前は全国各地に約3,000社存在したメッキ業は今や1,500社に激減している。

こうした状況下にある業界であるが、清川メッキはゆっくりではあるが、着実に業績を伸ばしているのである。

当社の創業は今から49年前の1963年、現会長の清川氏が脱サラしスタートしている。

その後、地元では清川三兄弟と評判の三人の息子さんが経営・技術・営業担当として順次入社し、全社一丸となっての経営革新に取り組んでいった。その結果、その業績は年々高まっていき今や社員数は250名、売上高経常利益率は10%前後以上を持続する超優良企業である。

当社の好業績の要因は多々あるが、とりわけ明記しなければならないのが、人材の確保・育成と独自技術の創造確保にこの間、一貫して注力してきたことである。

人材確保育成でいえば、創業当初から、企業の盛衰は「人財の有無」と位置づけ、確保はもとより人材教育に多くの時間と資金を投下している。

事実、当社の250名の社員の大半は、新卒者であるばかりか、技術者・研究者が約50名、出身大学も東京大学工学部をはじめ、全国の有力有名大学の卒業生が多数を占める。

加えていえば、メッキ業では珍しく全社員に占める女性割合は40%と高い。

また、この間、一貫して新技術開発に注力してきたこともあり、業界の評価はきわめて高い。事実、日本を代表するビッグビジネスから依頼される開発テーマは年々増加し、今やその数は年間1,000件に達する。

当社がとりわけ評価されているのは、その品質管理技術で、事実、当社で昨年1年間にナノメッキした部品は約1千億個であったが、そのうちの不良品はなんと「ゼロ」だったという。

この「清川メッキ」こそ、わが国中小製造業の生き残りのモデル企業といっても過言ではない。

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筆者紹介

坂本光司

アタックスグループ 顧問
経営学者・元法政大学大学院教授・人を大切にする経営学会会長  坂本 光司(さかもとこうじ)
1947年 静岡県生まれ。静岡文化芸術大学文化政策学部・同大学院教授、法政大学大学院政策創造研究科教授、法政大学大学院静岡サテライトキャンパス長等を歴任。ほかに、「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞審査委員長等、国・県・市町村の公務も多数務める。専門は、中小企業経営論、地域経済論、地域産業論。これまでに8,000社以上の企業等を訪問し、調査・アドバイスを行う。

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