インターフェイス~新卒新入社員が6ヶ月間研修する中小企業

経営

広島市に株式会社インターフェイスと言う中小企業がある。主製品は計測制御システムやFAコントローラー等、工場向けの各種電子機器メーカーである。

設立は1978年、現社長の國司健さんが脱サラし、理想の会社を求めスタートしている。

國司社長の掲げた理想の会社とは、「夢と自由のある会社」「人間尊重の会社」「技術を売り物にする会社」である。その理由は、自分が一社員として勤めていた会社が、必ずしもこうした経営をやっていなかったからである。

こうした目標を高らかに掲げるとともに、「人を大切にする」という経営理念を創り、この間ブレず、社員重視の経営を実践してきた結果、今や社員数は非正規を含め約250名、既に200アイテムを超す自家商品を保有しる独立企業として市場の高い評価を得ている。

当社が、この間とりわけ重視してきたことは、人財の確保・育成である。まず確保に当たっては、設立当初こそ、中途採用であったが、その後、全て新卒社員、しかもその全てを技術系としたのである。

その理由は、良い悪いは別にして他社の経験のない真っ白な若者を一から育て上げたかったことと、先輩が後輩を教え、後輩は先輩の背中を見ながら成長する「大家族的経営」こそが、人財教育の理想と考えたからである。

さらに言えば、技術を売り物にする会社ならば、人事や経理等、間接部門の社員も技術に対する一定の知識と理解があった方が、セクショナリズムに陥らないと考えたからである。

また当社は新卒社員の育成にもことのほか尽力している。その1つが、新卒社員教育である。当社では毎年4月1日の入社式が終わると、全員(毎年5名程度)が大分工場で研修を受ける。大分工場は大分空港の近くにあり、工場敷地の三分の二は野菜や果物畑と言う自然環境が残された場所である。

直ぐ近くに会社の寮があり、全員がこの寮に入り寝食を共にする。そこから毎朝、工場に行き、先輩社員や外部講師から朝から晩まで研修を受ける。興味深いことは、研修期間の6ヶ月間、現業には就けず、しかも研修の内容も、技術や管理といったマネジメントノウハウに関するものはほとんどせず、大半の時間は5Sやコミュニケーション力・チーム力等、いわゆる人間力・社会人基礎力を高める研修である。

6ヶ月の研修が終わると、本人の希望も重視し、広島の本社や工場等に配属されるのであるが、その姿は人間力豊かな即戦力人財に変貌しているという。その成長ぶりに、最も驚くのは、会社関係者というより、その両親をはじめとした家族という。

こうした現実を見ると、企業に最も付加価値をもたらす方策は、「人財確保と人財教育」に尽力することといえる。

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筆者紹介

坂本光司

アタックスグループ 顧問
経営学者・元法政大学大学院教授・人を大切にする経営学会会長  坂本 光司(さかもとこうじ)
1947年 静岡県生まれ。静岡文化芸術大学文化政策学部・同大学院教授、法政大学大学院政策創造研究科教授、法政大学大学院静岡サテライトキャンパス長等を歴任。ほかに、「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞審査委員長等、国・県・市町村の公務も多数務める。専門は、中小企業経営論、地域経済論、地域産業論。これまでに8,000社以上の企業等を訪問し、調査・アドバイスを行う。

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