千葉県香取市の田園風景に囲まれたエリアに株式会社「和郷」という社名の企業がある。主事業はトマト・大葉・キャベツ等野菜類を生産する株式会社農業である。
加えていえば、単に野菜類を生産する巨大な農家ではなく、JAや問屋等中間組織を通さず、自身が創造開発した販売チャンネルで、国内はもとより海外にまで輸出をしている独立色強いビジネス農業体である。
当社の実質的創業は今から20年前の平成3年である。現社長である木内博一氏ら有志5名が日本の農業の未来に危機意識を募らせ、スタートしている。
5名は全員が地域の農業者の若手後継者で、このままでは、野たれ死ぬ…と「生産者の自立・自律」を活動理念として夢と希望を胸にあえて大同団結したのである。
木内氏らが当初描いた夢と希望とは「農業を企業化し、自分たちが丹精込めて生産した農産品を直接消費者に届けたい…。世界の人々にも食べて頂きたい…。」であった。 つまり、研究も生産も販売も全て人に頼らず自分たちがやる、といった農業の第6次産業化である。
この間の努力と苦労が実り、20年後の今日、当社の売上高(含むグループ会社)は、約50億円、従業員数は正規社員70名、非正規社員約250名の計320名の規模までに成長発展している。野菜類の生産販売農家の分野では、今や我が国最大級の農家である。
また夢の1つであった輸出も、創業当時はゼロであったが、その後、年々増加し、今や月商で約4,000万円、年間では約5億円に達する。20年前まで、輸出ゼロの一農家が、年間生産販売高の約1割を輸出する農家にまで成長発展したのである。
ちなみに輸出先は香港、より具体的にいえば、「ホンコンそごう店」に直納している。大半の野菜類は、成田・香港便を利活用した「フライト農業」で、品質や鮮度志向さらには安全安心志向の中国人顧客の人気商品の1つという。
そして、販売やマネジメントを担当する「株式会社和郷」を支えているのが、地域の農業者から成る「農事組合法人和郷園」である。
当初わずか5軒の農家の後継者でスタートした組織であったが、年々その参加者は増加し、現在では92軒の地域の農家がこの活動に参加し、その生産面積は実に180haに達する。
なお国内の販売方法は全国の選りすぐりの生協店が65%、全国のスーパーが20%、そして、ネット販売やイベント販売等が15%である。
こうした頑張る農家の存在を見せつけられると、農業こそ未来産業と思えてならない。
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筆者紹介
- アタックスグループ 顧問
経営学者・元法政大学大学院教授・人を大切にする経営学会会長 坂本 光司(さかもとこうじ) - 1947年 静岡県生まれ。静岡文化芸術大学文化政策学部・同大学院教授、法政大学大学院政策創造研究科教授、法政大学大学院静岡サテライトキャンパス長等を歴任。ほかに、「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞審査委員長等、国・県・市町村の公務も多数務める。専門は、中小企業経営論、地域経済論、地域産業論。これまでに8,000社以上の企業等を訪問し、調査・アドバイスを行う。