評価高いサンアクアTOTOの経営

経営

北九州市の南小倉区に「サンアクアTOTO株式会社」という社名の企業がある。主製品は社名でお分かりのように、トイレ用品で著名な「TOTO」の水洗金具や給排水金具の組み立てや、商品取扱説明書の作成・施工データ作成等である。

設立は1993年、TOTOと福岡県そして北九州市が出資し、いわゆる第3セクターとしてスタートしている。出資比率はTOTOが60%、県と市がそれぞれ20%ずつである。

第3セクターと言うと、行政主体・行政依存のイメージが強いが、当社の実態は一般的な3セクとは大いに異なる。それは当社の設立目的が、「就労したくても働く場がない障害のある人たちの受け皿」会社だからである。福岡県や北九州市から、たっての要請があり、その役割をTOTOが引き受けてくれたのである。

現在、当社には84名の社員が在籍しているが、そのうちの49名が障がい者である。比率でいえば、約60%と、わが国平均の1.7%をはるかに上回っている。

より驚かされるのは、働く障がい者の多様性や、その職種である。49名の社員の障がいは、「肢体不自由」が25名、「知的障がい」が8名、「聴覚機能障がい」が8名、「精神障がい」が4名、「内部疾患」が3名、そして「視覚障がい」が1名といった具合である。

またその職種は「組み立て作業」が37名、「パソコンやCADを利活用し、図面や説明書を作成する作業」が9名、そして「総務・広報の作業」が3名である。

筆者はこれまで優に100社を超す「障がい者雇用先進企業」を見てきたが、これほど多様な障がいのある人々が、これほど多様な職種で就労している企業は珍しい。

先日、北九州市で講演があった折、当社を訪問させていただいた。美しい外観の本社工場、これまた美しいまるでホテルのような、社内には正直驚かされた。当日は当社の西村和芳社長が玄関まで迎えに出ていただき、事務所や本社工場の隅から隅まで案内していただいたが、いちばん筆者の心を満たしたのは、そこで働く障がい者の自信に満ち満ちた仕事ぶりと笑顔であった。

それもそのはず、仕事は障がい者一人一人の個性に合わせていることはもとより、その職場環境は真に障がい者の幸せを願っていると感じる場面ばかりであった。

例えば、工場の周辺には、車いすの人に合わせた高さの、花壇や野菜畑・果物畑があり、その収穫は社員皆の楽しみという。また、障がい者用の駐車場は、本社工場に隣接しているばかりか、本社工場に入るアプローチは全て屋根付きで、障がい者が傘をささなくても工場に入ってくることができるように配慮している。

ちなみに西村社長ら健常者の駐車場には屋根がなかったばかりか、工場からはかなり離れた場所にあった。

西村社長はTOTOから派遣されたサラリーマン社長であるが、その才と徳はお見事である。

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筆者紹介

坂本光司

アタックスグループ 顧問
経営学者・元法政大学大学院教授・人を大切にする経営学会会長  坂本 光司(さかもとこうじ)
1947年 静岡県生まれ。静岡文化芸術大学文化政策学部・同大学院教授、法政大学大学院政策創造研究科教授、法政大学大学院静岡サテライトキャンパス長等を歴任。ほかに、「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞審査委員長等、国・県・市町村の公務も多数務める。専門は、中小企業経営論、地域経済論、地域産業論。これまでに8,000社以上の企業等を訪問し、調査・アドバイスを行う。

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