これからの企業の盛衰は男性社員より女性社員の活躍度が決すると思われる。というのは、時代は男性が好むと好まざるとに関わらず、一段とソフト化・サービス化していくことは明らかだからである。
こうした物財ではなく、ソフト・サービス財優位の時代は、その生産はもとより消費の中核である女性の役割が一層拡大する。
さらに言えば、男性労働力人口の減少時代の中、未だ総じて低い女性のなお一層の社会参加無くして「人財集約産業」でもあるソフト・サービス産業の発展はないからである。
つまり、これからの時代、女性に嫌われた企業・商品には未来はないといっても過言ではない。
こうした中、注目に値する企業が高知市にある。社名は「株式会社ファーストコラボレーション」で、主事業は不動産の賃貸借や管理業務である。社員数は正社員が23名、非正規社員が12名、計35名の中小企業である。業種がらもあるとはいえ、全社員の85%が女性社員である。
当社がいかに女性を活かしきっているかは当社の業績がそれを物語っている。事実、業界資料を見ると、この10年間で業界の企業は10%減少している中、当社は年々その業績を高めているからである
当社の女性をトコトン活かす方策は随所にみられるが、ここでは当社の女性社員の多数を占める子育て世代の女性に対する支援策を2点に絞り述べることとする。
第1は、勤務形態に対する配慮である。
当社の育児期間の勤務形態は女性社員一人一人に対し実にハートフルである。例えば、勤務日・勤務日数・勤務時間は本人がいちばん良い方法を自由に選択できる。それどころか、自宅・実家や保育所の場所を考慮して勤務する支店すら選択できる。
加えて言えば、その間の社内会議や残業の免除、病院や買い物さらには子供のお迎え等も自由に取れる、といった支援策である。
第2は、職場環境に対する配慮である。
当社の社内の奥まった部屋は、なんと「授乳専用室」や「昼寝奨励室」もある。子育てに疲れたお母さん社員に、束の間とはいえ、休息の機会をつくっているのである。加えて言えば、親子出勤もOKであり、その時は社長をはじめ全社員が交代で社員の子供のお世話をしている。
こうした一見非効率に見える経営を重視しながら好業績を持続できているのは、「世界でいちばん『超家族』カンパニーを目指そう」「業績よりは組織風土」「会社ではなく家族」「会社の主役は社長ではなく社員」といった経営目的を掲げ、良いリーダーシップを果たしている「武樋社長」の存在が大きい。
アタックスグループでは、1社でも多くの「強くて愛される会社」を増やすことを目指し、毎月、優良企業の視察ツアーを開催しています。
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筆者紹介
- アタックスグループ 顧問
経営学者・元法政大学大学院教授・人を大切にする経営学会会長 坂本 光司(さかもとこうじ) - 1947年 静岡県生まれ。静岡文化芸術大学文化政策学部・同大学院教授、法政大学大学院政策創造研究科教授、法政大学大学院静岡サテライトキャンパス長等を歴任。ほかに、「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞審査委員長等、国・県・市町村の公務も多数務める。専門は、中小企業経営論、地域経済論、地域産業論。これまでに8,000社以上の企業等を訪問し、調査・アドバイスを行う。