出雲土建の挑戦~「炭八」でアレルギー症状改善に貢献する企業

経営

出雲市の郊外に「出雲土建」という社名の中小企業がある。主事業は建設工事や土木事業、さらには緑化事業やリサイクル事業である。

設立は1980年、もともとは、土木建設会社としてのスタートであったが、その後、多彩な事業の多角化と規模の拡大を志向した。その結果、公共事業の激減や多角化の失敗等もあり、一時倒産の危機に瀕している。そのおり、再建社長として抜擢されたのが、当時営業の責任者であった、現社長の石飛裕司氏である。

石飛社長は、なんとしても社員とその家族の生活を守らねば…と、営業努力を行うとともに産学官連携を活かした新商品開発に注力した。そして開発された商品が現在の当社の主力商品である「炭八」というブランド商品である。

炭八という商品は、住宅の最大級の問題である湿度の調整とにおい消しを同時解決する「高機能木炭」のことである。

周知のように、日本の建材として使われている床材や壁紙・合板・断熱材・接着剤などの中には、「ホルムアルデヒド」が含まれている。また畳には有機リン系の農薬が大量に使用され、さらにはカーテンやカーペットにも、有害な防虫剤や防カビ剤・抗菌剤が多く含まれている。これらの物質が、アトピーや喘息を発生させているのは明確である。

石飛社長は、新商品のテーマを探索している最中、この問題をアトピーや喘息で困っている多くの人々から聞き、建設会社としてこの問題を解決することに取り組んだのである。地元島根大学の医学部や総合理工学部等と「新しい炭」の共同研究に取り組み、苦節10年ついには「炭八」が開発されたのである。

医学部の先生方と共同し、小児気管喘息で薬を飲んでも改善しない子供達を、開発した「炭八」を床下や天井さらには壁の中に敷設した家屋に住んでいただいたところ、なんと7人中6人の症状が大きく改善したという。こうした成果が認められ、今や出雲市においては戸建て住宅の1割以上に「炭八」が敷設されているという。

出雲土建には、アトピーや喘息で苦しむ多くの人々から、症状がでなくなったとか、改善した…と言った、うれしいサンキューレターが殺到している。ピークと比較し、公共工事が半減化する中、建設工事会社の、これからの生き残りの方向・方策方向を示唆する中小企業である。

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筆者紹介

坂本光司

アタックスグループ 顧問
経営学者・元法政大学大学院教授・人を大切にする経営学会会長  坂本 光司(さかもとこうじ)
1947年 静岡県生まれ。静岡文化芸術大学文化政策学部・同大学院教授、法政大学大学院政策創造研究科教授、法政大学大学院静岡サテライトキャンパス長等を歴任。ほかに、「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞審査委員長等、国・県・市町村の公務も多数務める。専門は、中小企業経営論、地域経済論、地域産業論。これまでに8,000社以上の企業等を訪問し、調査・アドバイスを行う。

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