民間金融機関には「メガバンク」「地方銀行」「信用金庫」そして「信用組合」などがあります。それぞれ存在目的や使命が異なりますが、信用金庫はメガバンクや地方銀行とは異なり、地域密着で中小企業専門の金融機関である。
戦後一貫して、右肩上がりに増大してきた信用金庫であるが、バブル崩壊以降、経済成長の著しい減速化や少子高齢社会の進行に伴う人口の減少、さらには開業の不足や廃業の多発、加えて言えば、メガバンクや地方銀行の中小企業分野への攻勢等もあり、多くの信用金庫は、この25年間、再編のあらしが吹き荒れている。
事実、バブル経済末期(1991年3月末)、全国には454庫もの信用金庫が存在していたが、今や264庫と、この僅か25年間で190庫、率にして42%もの信用金庫が合併等により消滅している。
経済社会のグローバル化やボーダレス化の進行等、世界的な金融環境の変化の中で、地方銀行や信用金庫を問わず、こうした厳しい傾向は、恐らくこれからも続いていくものと思われる。
こうした中にあって、創業以来、地域企業や地域住民に絶大な支持を受け、独立独歩の道をひた走っている信用金庫が全国にはいくつかある。その代表格が、今回取り上げた兵庫県加古川市に本店を構える「但陽信用金庫」という名の信用金庫である。
信用金庫の中には、地方銀行とそん色ないほどの巨額な資金量を誇るところもあるが、但陽信用金庫は決して巨大な信用金庫ではない。2017年の資料を見ると、預金高は約6,800億円、貸出高は約2,700億円であり、信用金庫業界の中で中規模といえる。
しかも、但陽信用金庫が立地し、営業エリアとしている地域は、東京都や大阪府、さらには神奈川県や愛知県といった巨大県でも、県庁所在地に本店を有する信用金庫でもない。まさにどこにでもあるような、地方の中規模の信用金庫なのにである。
その最大の要因は、但陽信用金庫の経営の考え方・進め方が、地域企業や地域住民の高い評価を得てきたからと思われる。
その具体的内容を、詳細に述べる紙面の余裕はなくなってしまったが、あえて言えば、信用金庫は「まち医者」「まちの交番」「よろず相談所」と評価位置づけをし、この間、地域や地域住民の幸せの実現のために、全役職員が一丸となって、その使命と役割を愚直一途に実行してきたからといえる。
こうして見ると、一般企業であろうと信用金庫であろうと、正しい経営は決して滅びないということが証明される。
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筆者紹介
- アタックスグループ 顧問
経営学者・元法政大学大学院教授・人を大切にする経営学会会長 坂本 光司(さかもとこうじ) - 1947年 静岡県生まれ。静岡文化芸術大学文化政策学部・同大学院教授、法政大学大学院政策創造研究科教授、法政大学大学院静岡サテライトキャンパス長等を歴任。ほかに、「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞審査委員長等、国・県・市町村の公務も多数務める。専門は、中小企業経営論、地域経済論、地域産業論。これまでに8,000社以上の企業等を訪問し、調査・アドバイスを行う。