乱世は企業の本性を顕在化させる

経営

筆者がつくった言葉の1つに「大不況になると経営者ばかりか社員の本性が顕在化する。だから時々不況になった方がいい」がある。

本物は好況期であろうが、不況期であろうが、社員とその家族の命と生活を守る経営をする。

その一方、偽物企業は、好況の時には、ある程度、経営的に余裕があるので、総じて社員や協力企業を大切にしているような経営をするが、いったん大不況になると、まるで手のひらを返したように、社員や協力企業に理不尽なことをする。という意味である。

好況時には、両社とも、同じように見えるので、区分けが難しいが、不況時とりわけ大不況になると、両者の対応策が全く異なるのである。

このことは、「新型コロナウイルス感染拡大」の影響で、企業の業績が大幅に低下したことに対しても同様であった。

偽物企業は、この時、社員の希望退職を募ったり、十分な内部留保金があるにもかかわらず、人件費の大幅な削減を行った。

ひどい場合は、僅か2ヶ月程度の経済活動のストップで、赤の他人の社員が、そこにいるのもかかわらず、廃業を選択した企業もあった。

これら企業の経営者は、企業は「社会的公器」、企業経営の使命と責任は、「社員とその家族の命と生活を守ること」を忘れてしまっていると言える。

一方、本物企業は、偽物企業と同じように業績が低下しているばかりか、多くの社員が自宅待機状態であるにも関わらず、これが同じ企業かと思うような立派なことをしている。

例えば、筆者の良く知る企業は、希望退職を募らないことはもとよりであるが、自宅待機中の社員に対しては、この日のために始末し、蓄えてきた内部留保金を取り崩し、1円もカットせず給料を支払い続けた。

そればかりか、もっと困っている人々がいると、規模の小さな協力企業に対しては、政府も顔負けの支援金を支給するとともに、資金繰りの支援までした。

加えて言えば、地域社会に対しては、まったく業種が違うにもかかわらず、社員には自宅で慣れない手作りマスクをつくってもらい、そして、つくったマスクを、社員が交代で、医療従事者や買い物難民でもある高齢者宅や社会福祉施設に無償で提供をし続けた。

なかには、千載一遇のチャンスとばかり、マスクを生産し高値販売をした企業等もあったが、それら企業とは大違いである。

本物と偽物の違いは、平時では分からないが、企業が本当に困ったときに、その対策を見ればわかるのである。私たちはこのことこそ見て判断すべきである。

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筆者紹介

坂本光司

アタックスグループ 顧問
経営学者・元法政大学大学院教授・人を大切にする経営学会会長  坂本 光司(さかもとこうじ)
1947年 静岡県生まれ。静岡文化芸術大学文化政策学部・同大学院教授、法政大学大学院政策創造研究科教授、法政大学大学院静岡サテライトキャンパス長等を歴任。ほかに、「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞審査委員長等、国・県・市町村の公務も多数務める。専門は、中小企業経営論、地域経済論、地域産業論。これまでに8,000社以上の企業等を訪問し、調査・アドバイスを行う。

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