中小企業の社長の報酬

経営

わが国企業の圧倒的多数派である中小企業の社長の報酬は、1800万円から2000万円という調査結果もあるが、筆者の親しい、ある会計事務所が毎年発刊している資料を見ると、総平均は1000万円であった。

もとより上は5000万円から、下は450万円まで、大きくばらついてはいるが、回答企業約1300社の中で最も多かったのは550万円(全体の25%)、以下1200万円(全体の12%)、そして700万円(全体の10%)などであった。ちなみに赤字企業の社長の総平均は800万円、そればかりか、赤字でも1000万円の報酬企業が2%あった。

社長の報酬はいくらが正しいかは難しい。ここでは算出する1つの考え方を示しておく。それは社長の報酬もまた、労働の対価であるということを踏まえると、他の社員の給料との兼ね合いも1つのヒントである。

つまり社員と比較して、どのくらい多く仕事をしているかである。例えば、新入社員で言えば、その年収はおよそ300万円である。しかしながら、社長は新入社員のように朝8時に出社し夕方17時に退社すれば、その後は自分の時間というわけではない。

まともな社長であれば、24時間仕事のことが頭を離れないだろうし、時には夜中に飛び起き、明日の経営のためにメモを取ることもある。そうして考えると、労働の質はともかく、量だけ見ても、新入社員の3倍は働いているということになる。

加えて言えば、新入社員は、土曜日・日曜日は休日であり、また祝日や夏休み等もある。しかしながら、まともな社長は、休日とは言え、仕事のことが頭から離れないばかりか、仕事の処理や勉強に充てている。この分をプラスすると、1.5倍程度となる。

祝日手当や深夜手当等もあるが、それは社長の宿命であり、それらは別にしても、3倍+1.5倍となり4.5倍程度になると思われる。もとよりこの倍率は、社長が365日24時間、企業のために働いているという基本的前提のもとである。

その意味で言えば、そんなにも長く経営のことを考えず、行動していない社長、仕事とはいえ、ゴルフや飲食が大半という社長は、倍率を下げなければならない。

こうして考えると、もしも、新入社員の年間給与が300万円程度であれば、社長の適正報酬は、1350万円前後ということになる。

親しい仲間から聞いた話であるが、社長の報酬額は3000万円でありながら、障がいのある社員の給与は最低賃金の除外申請をしている会社があるという。

これまた聞いた話ではあるが、コロナ過で業績が大幅に低下したにもかかわらず、自身の報酬はたいして下げず、何人かの社員をリストラしたという。こうした偽物の社長がいる限りわが国経済は良くはならない。

一方、筆者の周りにいる社長の対応は全く異なる。不況の折は、自分の報酬をゼロにしてでも、社員とその家族の命と生活を守る。また自分の報酬を下げてでも、障がい者にまともな給与を支払う。

世の中には自然と不自然がある。また「いいかげん」ではなく「いいかげん」「ほどほど」という言葉がある。誰にも後ろ指さされないような報酬を得てもらいたいものである。

アタックスグループでは、1社でも多くの「強くて愛される会社」を増やすことを目指し、毎月、優良企業の視察ツアーを開催しています。
視察ツアーの詳細は、こちらをご覧ください。

坂本光司の快進撃企業レポート一覧へ

筆者紹介

坂本光司

アタックスグループ 顧問
経営学者・元法政大学大学院教授・人を大切にする経営学会会長  坂本 光司(さかもとこうじ)
1947年 静岡県生まれ。静岡文化芸術大学文化政策学部・同大学院教授、法政大学大学院政策創造研究科教授、法政大学大学院静岡サテライトキャンパス長等を歴任。ほかに、「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞審査委員長等、国・県・市町村の公務も多数務める。専門は、中小企業経営論、地域経済論、地域産業論。これまでに8,000社以上の企業等を訪問し、調査・アドバイスを行う。

タイトルとURLをコピーしました