敬護で頑張るリハプライム株式会社

経営

同社は、2011年、現社長である小池修氏が脱サラし、数名のスタッフと共にスタートした、さいたま市に本社がある介護サービス業です。

設立のきっかけは、小池さんの母親が病気で倒れ、介護施設のお世話にならざるを得ない身体になってしまったことでした。

小池さんは、大好きな母親がお世話になると思われる地域の介護施設を10数ヶ所見て回ったのですが、小池さんが、「ここならば大切な母親を…」と思える施設が見つからなかったのです。

それで、勤めていた会社を脱サラし、大切な母親のために、この事業を始めたのです。

同社の特徴の1つは、お年寄りを介護して護る「介護」ではなく、人生の先輩を敬って護る「敬護」を理念に掲げ、そのための事業活動を実施している点です。

こうした事業姿勢と努力の結果、事業も年々拡大し、今や「リハビリを中心とした歩行訓練型デイサービス」「コンパスウォーク」「訪問介護ステーション」「介護タクシー」そして「シニア向けの美容室を併設した茶の間(喫茶店)」等に拡大しています。

小池さんの夢は、高齢者がプライドや幸福感を持ち続けられる「ハッピーリタイアメント社会」の実現です。

もう1つの同社の特徴は、大変な仕事である介護サービス業ではありますが、全社員のモチベーションのレベルが極めて高い点です。

その要因の1つは、なんといっても、「敬護」を経営理念に、真にお年寄りに喜ばれる事業を実施していることもあり、毎日多くの利用者から、社員が直接、「あなたのおかげ…」と感謝の言葉をいただけていることにあると思います。

そしてもう1つは、社員のモチベーションが自然に高まるような、やらされ感のない、様々なハートフルな仕掛けが講じられているからと思います。

その1つは、個人の価値観と会社の価値観を紐づけるため、年に2回、経営層と社員が、時間をかけた丁寧な話し合いをしながら、個人のビジョンマップと会社のビジョンマップを作成していることです。そして、会社は、双方のビジョンマップを見ながら、双方のベクトルが合うようきめ細かな情報提供や支援が行われるのです。

また、「コンパス美学」―SKYSIGHT―(やりがいと幸せの8か条)を指針とした経営の実践も、社員のモチベーションアップに役立っていると思います。

ちなみに、Sは成長思考、Kは感謝の心、Yは役立ち(恩返し)、Sは全ての因は我にあり、Iは一日一生、Gはグッドグラス、Hは褒める(価値の発見)、そして、Tはチーム(全体最適)の意味です。

一般的に、社員のモチベーションは、人により属性により大きく異なります。そのことを、小池さんは、社員間のモチベーションや価値観の違いは、その人の属性にあるのではなく、その人の「学びの深さ」に関係していると考えているのです。

このため、同社では、社員教育には、ことのほか注力しています。その1つが、オンラインセミナー「コンパスウォークアカデミー」の開催です。

アカデミーは、全社員を対象に、毎月1回開催されるほか、属性に応じた研修も毎月開催されています。講義の内容は、テクニック論ではなく、人としてのあり方・生き方や、物事の捉え方に関するテーマが大半です。つまり社員の人間力を高めるためなのです。

終了後は、参加者全員にアンケートを実施し、疑問や意見には必ず経営層がフィードバックしています。言いっぱなし、聞きっぱなしではなく、些細なことでも、必ず丁寧にフィードバックしていることが、社員のモチベーションアップになっているのだと思います。

また、「社長からの動画配信」も、社員のモチベーションアップに大きく寄与していると思います。これは、毎朝4時3分から3分間の「社長からのメッセージ」が、全社員に動画配信されるのです。

その内容は、社員との面談で社長自身が気づいたことや、コンパスウォークアカデミーでの社員のアンケート結果の内容、さらには、経営への思い・社員への思い等が語られます。

小池さんは、体調の良い時も悪いときも、またどんなに忙しくても、365日、全社員に毎日発信しているのです。

これにより、社員の多くは、小池社長の経営への思いや考え方・進め方をダイレクトに受け、知ることができるのです。ともあれ、いちばん大変な人は、社長である小池さん自身と思います。

しかしながら、こうした日々の努力と苦労こそが、社員数が300名近くなった今も同社は一体感があり、社員のモチベーションが高い要因と思います。

 
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筆者紹介

坂本光司

アタックスグループ 顧問
経営学者・元法政大学大学院教授・人を大切にする経営学会会長  坂本 光司(さかもとこうじ)
1947年 静岡県生まれ。静岡文化芸術大学文化政策学部・同大学院教授、法政大学大学院政策創造研究科教授、法政大学大学院静岡サテライトキャンパス長等を歴任。ほかに、「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞審査委員長等、国・県・市町村の公務も多数務める。専門は、中小企業経営論、地域経済論、地域産業論。これまでに8,000社以上の企業等を訪問し、調査・アドバイスを行う。

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