激動の事業環境の中、中堅中小企業の喫緊の課題は資金繰りの維持となります。
日本では新型コロナウィルスの蔓延が始まったころから、政府主導で中堅中小企業の資金繰り支援策が導入されており、資金繰りを維持するための新規特別融資は50兆円を超えるといわれています。
しかし、新型コロナウィルスの第6波は終息しているとはいえませんし、これに今回の軍事衝突による影響、特に原料不足や資源高騰等が加わるかたちとなり、ますます資金繰りがひっ迫することが予想されます。
この状況をうけ、経済産業省では2022年3月4日に「中小企業活性化パッケージ」を公表しました。
経済産業省「中小企業活性化パッケージ」
「中小企業活性化パッケージ」には、新型コロナウィルスによる資金繰り支援の継続や増大する債務に苦しむ中小企業への支援策が定められています。
このパッケージの策定当時、ウクライナ情勢は想定外だったでしょうが、おそらくこの影響に関する支援も、このパッケージを通じて行われると考えられます。
この中小企業活性化パッケージは、次の2つの柱で構成されています。
2.中小企業の収益力改善・事業再生・再チャレンジの総合的支援
コロナ資金繰り支援の継続
「コロナ資金繰り支援の継続」では、年度末および来年度以降の資金需要の対応として、現状のコロナ特別融資の期限延長や税金・社会保険料の支払い猶予制度の運用継続等が定められています。
足元の資金繰りに困っている企業はこの支援策の活用を検討頂ければと思います。
中小企業の収益力改善・事業再生・再チャレンジの総合的支援
「中小企業の収益力改善・事業再生・再チャレンジの総合的支援」では、過大となった債務や経営者保証の整理、廃業後の経営者としての再チャレンジ支援及び事業再構築補助金等の債務整理やビジネスモデル変革の支援について一歩踏み込んだ施策が並んでいます。
支援のベースとなるのは企業自身の「本源的な収益力の向上」
しかし、中小企業の事業再生に関するガイドラインによれば、それら支援のベースとなるのは企業自身の「本源的な収益力の向上」と考えられています。
収益力改善の支援メニューをみてみると、2つのキーワードが浮かび上がってきます。
それは「アクションプランの策定」と「伴走支援」という言葉です。
(参考)経済産業省「中小企業活性化パッケージ」概要
経済産業省「中小企業活性化パッケージ」関連施策集
「アクションプランの策定」とは?
アクションプランとは、事業計画を策定する場合に、経営方針にそって経営目標を達成するために各部門が何をするのかを明確にした行動計画書のことを指します。
具体的には、経営方針に基づく行動項目と責任者、行動結果を測定する指標と目標、行動項目を展開した行動要素、行動要素毎の担当者、実施スケジュール等を記載したもので、目標を達成するための道しるべとなるものです。
例えば、以下のようなイメージとなります。
内容 | |
---|---|
経営方針に基づく行動項目 | 在庫の適正化、社長 |
行動結果を測定する指標と目標 | 在庫回転率 90日以内 |
行動要素 | ・各商品の在庫回転率の測定と適正在庫回転率の設定、仕入担当、月末まで ・各担当者への在庫情報の開示と在庫販売計画の策定、営業担当、来月末まで ・定期的なモニタリング、営業会議、毎月1回 ・在庫処分計画の策定と実施、営業会議、3カ月に1回 |
アクションプランを作成するメリットは、各自がすべきことが明確になることや組織で課題に対応できること等があげられますが、一番のメリットは進捗確認をしてリカバリー策を検討、実施できることです。
いつまでに、誰が、何をするかが明確ですので、それぞれが順調にすすんでいるのかをチェックすることができ、順調でないのであれば原因は何で、どうリカバリーすればいいのかを組織的に検討でき、柔軟に目標の達成に近づくことができます。
「伴走支援」とは?
その意味で、次に「伴走支援」というキーワードがあげられます。
中小企業活性化パッケージでは外部専門家の伴走支援について補助金の対象となりますが、これは外部専門家といっしょにアクションプランのチェックをして、目標達成しましょうということに他なりません。
つまりアクションプランを策定し、その進捗確認を通して、目標を成し遂げることが「本源的な収益力向上」につながると考えているのです。
この難局を乗り切るため、収益力向上のためのアクションプランの策定と伴走支援の活用に取り組まれてはいかがでしょうか。
アタックスでは中小企業の様々な経営課題について、現状分析から課題解決のためのご支援を行っています。お気軽にご相談ください。
筆者紹介
- 株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティング 代表取締役社長
中小企業診断士 池ヶ谷 穣次 - 1993年 静岡県立大学卒。MBA。中堅中小企業の経営管理制度・管理会計制度構築サポート、事業再生サポート、財務・事業デューデリジェンス業務、M&Aサポート、株式公開支援、月次決算支援業務等に従事。システムエンジニア時代に得たシステム思考を応用し、経営者・経理責任者の参謀役として活躍中。
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