「経営課題を可視化」が難点
筆者は税理士として、クライアントの税務顧問を通し、多くの経営者と接する機会があります。
クライアントの規模は様々ですが、年商10億円~100億円規模の中小企業が大部分を占めます。
そして、このような中小企業の多くは自社の経営課題を明確に把握できていないことが多いように感じます。
もう少し正確に言うと、経営者は経営課題を自分の頭の中では認識しているものの、それが可視化できていない場合が多いのではないでしょうか。
結果として、経営者は自分一人で物事を考え、意思決定する、というプロセスにつながっているように思います。
税理士に経営相談できていますか?
2020年に中小企業庁から、経営者の日常の相談相手の属性調査として以下のデータが公表されています。
データを見ると、税理士・公認会計士が1位となっており、多くの中小企業の経営者は顧問税理士に経営の相談相手を期待していることが伺えます。
では、実際にどれだけの税理士が経営者の良き相談相手になれているのでしょうか。
弊社では、新規で税務顧問の引き合いが来ることがありますが、その理由として、今の顧問税理士は日常的な業務や決算業務しか対応してくれず、経営の相談ができない、といったお話を聞くことも少なくありません。
顧問税理士に「相談相手」を期待しているにも関わらず、相談ができないというのは、なかなか厳しい状況と言えます。
やはり期待されている以上は、経営者のお悩みに応えられる税理士でありたいものです。
経営者の良き相談相手になるためのプロセス
では、どういったアプローチで経営者の相談相手になるべきか、ということについて考えてみたいと思います。
冒頭、中小企業の経営者の多くは自社の経営課題を可視化できていない、ということを挙げましたが、この部分を支援することが有効と考えています。
具体的には、経営者と話をする中で、経営者の頭の中を整理し、整理された課題を何らかのアウトプットに可視化する、といったプロセスが効果的に思います。
弊社では、毎月の訪問時や決算終了時の決算報告会などの場で、経営者と自社の経営課題を共有、棚卸をし、定期的にこれらの項目をアップデートするというご支援をしています。
また、新規のクライアントについては、顧問契約前に自社の経営課題を簡単に整理させていただく、マネジメントレポートの提供なども行っています。
中小企業が抱える経営課題とは
最後に、実際の現場で、中小企業の経営課題としてよく取り上げられる項目をご紹介します。
経営課題を挙げだしたらキリがありませんが、顧問税理士として関りが深いものとしては、大きく以下の2つが挙げられます。
2.事業承継系の課題
1.経理改善系の課題
1つ目の経理改善系の課題は、さらに細かく例を挙げると以下のようなものがあります。
- 自社で記帳ができていない。
- 月次決算を締めるのが遅い。
- 記帳が現金主義になっており、発生主義になっていない。
- 試算表が部門別等で管理されていない。
- 経理のDX化が進んでいない。
会社のレベルに応じて課題は様々ですが、いずれも中小企業では対応が遅れがちになる傾向があります。
2.事業承継系の課題
2つ目の事業承継系の課題は、大きく分けると以下の2つに大別されます。
- 後継者育成
- 自社株承継
後継者育成については、次期後継者や次世代の経営幹部をどのように選定し、どういったスケジュールで育成していくのか、ということを検討する必要があります。
自社株承継については、現経営者の保有株をいかにスムーズに次期経営者に承継していくのか、承継コストなども考慮し、最適な方法を検討していくことになります。
最後に
それ以外に、最近は採用や人材評価などの人事系の問題についても経営課題に挙がることが多いように思います。
いずれにせよ、こういった経営課題をしっかり可視化し、優先順位をつけて解決していくことが重要と言えます。
アタックス税理士法人は、「社長の最良の相談相手」として、税務顧問を通じて、自社の経営課題の把握をお手伝いしています。
筆者紹介
- アタックス税理士法人 代表社員 税理士 長沢 健史
- 主に中小・中堅企業に対する税務顧問、税務コンサルティング業務に従事。税理士として、顧問先の経営課題の解決に日々奮闘している。組織再編等の手法を利用したタックスプランニング、自社株に関する資本政策の策定にも強みを持つ。お客様あっての税理士であることを信条に、常にお客様が相談しやすい関係づくりを心掛けている。