令和5年2月20日、中小企業庁から経営者保証を不要とする創業時の新しい信用保証制度として、「スタートアップ創出促進保証制度」の創設がリリースされました。
中小企業庁によれば、失敗時のリスクが大きいために起業することをためらう起業関心層のうち、およそ8割が「借金や個人保証を抱えること」を懸念しているとのことです。
今回は令和4年6月7日に閣議決定された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」を踏まえ、その起業・創業の阻害要因を取り除くために同制度が設けられました。
日本にスタートアップ企業が少ない現状
経済産業省の吾郷進平・スタートアップ創出推進政策統括調整官によれば、令和3年までの8年間で、国内スタートアップへの投資額は約9倍に増えたとのことですが、それでも世界のスピードには追いついていません。
ユニコーン企業(企業価値10億ドル超の非上場企業)は、日本11社に対し、米国は488社、中国は170社。
世界にはデカコーン(同100億ドル超)やヘクトコーン(同1000億ドル超)と呼ばれるスタートアップも存在しており、数でも規模でも差が開いているとのことです。
岸田内閣のスタートアップ創出政策
岸田文雄首相の看板政策「新しい資本主義」では令和4年を「スタートアップ創出元年」と位置付け、5年間で起業を10倍に増やす考えを明らかにしています。
令和4年12月の拙稿でもご紹介しましたが、令和5年度税制大綱においてもスタートアップに対する税制面からの後押しが明らかにされました。
過去記事:オープンイノベーション促進税制の拡充~スタートアップのM&Aも所得控除の対象へ!
同内容の一部は社長塾チャンネルでも紹介されています。
経営者保証改革プログラムとは
今般、新たに中小企業庁から発表されたこの制度は、昨年12月23日に経済産業省・金融庁・財務省から同時発表のあった“経営者保証改革プログラム”と連動しています。
このプログラムは“経営者保証に依存しない融資慣行の確立”を更に加速させるため、経済産業省が金融庁・財務省と連携の下、下記4分野に重点的に取り組むものとされています。
① スタートアップ・創業
② 民間金融機関による融資
③ 信用保証付融資、
④ 中小企業のガバナンス
特に今回のターゲットである①の取り組みの概要は下記の通りです。
- スタートアップの創業から5年以内の者に対する経営者保証を徴求しない新しい信用保証制度(「スタートアップ創出促進保証制度」の創設(保証割合:100%/保証上限額:3500万円/無担保)
- 日本公庫等における創業から5年以内の者に対する経営者保証を求めない制度の要件緩和 (23年2月~)
- 商工中金のスタートアップ向け融資における経営者保証の原則廃止(22年10月~)
- 民間金融機関に対し、経営者保証を徴求しないスタートアップ向け融資を促進する旨を要請
スタートアップ創出促進保証制度の詳細
そのうち今回の「スタートアップ創出促進保証制度」の詳細は下記の通りです。
3月中に制度開始予定ですが、円滑な利用が可能となるように、2月より信用保証協会と金融機関が連携して、事前相談の受付を開始しています。
(詳細は金融機関または最寄りの信用保証協会にお問い合わせ下さい)
ご参考:中小企業庁HP(スタートアップ創出促進保証制度について)
■保証対象者の要件
・創業予定者(これから法人を設立し、事業を開始する具体的な計画がある者)
・分社化予定者(中小企業にあたる会社で事業を継続しつつ、新たに会社を設立する具体的な計画がある者)
・創業後5年未満の法人
・分社化後5年未満の法人
・創業後5年未満の法人成り企業■保証限度額…3,500万円
■保証期間…10年以内
■据置期間…1年以内(一定の条件を満たす場合には3年以内)
■金利…金融機関所定
■保証料率…各信用保証協会所定の創業関連保証の保証料率に0.2%上乗せした保証料率
※保証料率は各信用保証協会にお問い合わせ下さい。■担保・保証人…不要
■その他
・創業計画書の提出が必要。(スタートアップ創出促進保証制度用)の提出が必要。
・保証申込受付時点において税務申告1期未終了の創業者にあっては創業資金総額の1/10以上の自己資金を有していることを要する。
・本制度による信用保証付融資を受けた方は、原則として会社を設立して3年目および5年目のタイミングで中小企業活性化協議会による「ガバナンス体制の整備に関するチェックシート」(後日公開予定とのこと)に基づいた確認および助言を受けることを要する。
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筆者紹介
- 株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティング取締役 税理士 浦井 耕
- TFP(現山田)コンサルティンググループ、中小会計事務所を経て株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティングへ入社。ハンズオンによる管理制度構築支援や多数の企業再生支援に従事。2011年の東日本大震災以降は特に宮城県内の被災企業の再生支援を多く手掛ける。
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