規模の大小を問わず、企業の存続・成長のために取り組むべき課題となったデジタルトランスフォーメーション(DX)。
各企業がデジタル化による新たな付加価値の創造に取り組むことで、いま次々に新しいビジネスモデルが生まれています。
その中でも成長著しい「サブスクリプション」について、今回は取り上げたいと思います。
サブスクリプションとは
サブスクリプションとは、特定の期間内においてサービスや製品を利用することに対して料金を支払う契約形態をいいます。
AmazonプライムやAppleミュージック等のデジタルコンテンツサービスが代表例です。
一定額の利用料を毎月支払うことで、様々な映画や音楽を好きなだけ観たり聴いたりすることができます。
もともと英語の「subscription」は直訳すると「購読」や「加入」になりますが、最近ではすっかり「定額利用」の意味として定着しています。
サブスクリプションが急成長した背景
従来はモノを所有しなければ、やりたいコトが実現しませんでした。
しかし、消費者はモノの所有それ自体ではなく、利用すること(経験)に価値を見出すようになってきています。
その結果、提供側の企業は製品やサービスを売り切るのではなく、消費者に定額料金で貸し出すようになりました。
冒頭の例でいえば、少し前まで、映画を観たり音楽を聴いたりするために、DVDやCDを購入する必要がありましたが、DXに伴う定額配信サービスの登場により、購入することなく体験できるようになりました。
このように、「所有から利用へ」「モノからコトへ」と消費形態が変化する中で、顧客ニーズへの対応を後押しする技術革新が進んでいたこともあり、サブスクリプションは急速な広がりを見せています。
サブスクリプションがもたらしたもの
これまでの売り切りモデルでは、売り手は製品を買ってもらった後は、どのような使い方をされているのか、ほとんど知ることができませんでした。
一方、サブスクリプションの場合、企業は顧客にサービス提供をしながら、様々なデータを収集することができるため、従来できなかった顧客との直接的かつ継続的な関係を構築できるようになりました。
サブスクリプションの成否のカギ
サブスクリプションはその形態から、いかに顧客との良好な関係を構築し、維持できるかが重要です。
そのために顧客との関係性を特徴的なKPIで管理することがあります。
以下に代表的なものをご紹介します。
取引開始から終了までの間に1人の顧客がもたらす利益
(顧客生涯価値)
1人の顧客を獲得するために必要な営業コスト
(顧客獲得費用)
LTVやCACの観点で評価することにより、全体期間での損益分岐点管理が可能になります。当然ですが、CACがLTVを上回るようであれば、早急に改善または撤退が必要です。
全ユーザー数に対する解約ユーザー数の割合
(解約率)
サブスクリプションは先述の通り、良好な関係を構築できた顧客をいかに維持できるかが重要です。そのため、チャーンレートは顧客維持において注視すべき指標です。
1人の顧客の月次平均売上
※サービスの性質によって、日次になる場合もあります。
LTVはARPUを使って以下のように分解することができます。
顧客との長期的な関係構築を前提とするサブスクリプションビジネスでは、顧客単価の向上はもちろん、各顧客の継続期間をできるだけ伸ばすことも、LTVの最大化を考える上で重要な要素となることが分解式からも分かります。
まとめ
サブスクリプションは、単なる課金形態の変更ではなく、ビジネスモデルの変革です。
「所有から利用へ」「モノからコトへ」と消費形態が変化し、デジタル化が後押しする形で生まれました。
コロナ禍において、社会変革が一気に促され、DXが推進される状況となりました。
こうした環境変化を背景に、安定収益を狙う各社が生き残りをかけ、今後益々サブスクリプションの幅は広がっていくことでしょう。
筆者紹介
- 株式会社アタックス・エッジ・コンサルティング 代表取締役 公認会計士 酒井 悟史
- 慶應義塾大学経済学部卒。2014年アタックス税理士法人に参画し、主に上場中堅企業の法人税務業務に従事。2019年株式会社アタックス・エッジ・コンサルティングの代表取締役に就任。現在はクラウド会計や開発システムの導入を通じ、中堅中小企業および会計事務所のイノベーション促進に取り組んでいる。
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