失敗しない投資判断5つのポイント~その投資、本当に『今』必要?

経営

新型コロナウイルス感染症の位置づけが5類に変更となり、最近では、企業活動が活発化してきています。

このような中、筆者のいる名古屋市とその近郊では、自動車産業を始め製造業の中堅中小企業のお客様が多く、最近では、大きな投資を検討される相談が増えてきています。

そこで今回は、投資について考えてみたいと思います。

経営者が投資をする理由

まず経営者が投資をする背景には、次の4つが多いように思います。

1.老朽化による取替投資
2.自動化・合理化の為の投資(人手不足への対応の為の投資)
3.生産能力増強の為の拡大投資(得意先からの受注増対応の為の投資)
4.新規事業への投資

投資は会社を成長させる必要な行為の一つですし、企業活動としても大変重要なことだと思います。
そのため、投資を否定することはありません。

投資を始める前に考えるべきこと

ですが、その前にまず考えなければならないことがあります。
それは、次の5つです。

1.そもそも投資をする目的は何か
2.それによって得られる効果は何か(現状と比べ何がどのように変わるのか)
3.その手段として、本当に投資が必要なのか投資をしないで目的を達成する(解決する)方法はないのか
4.その投資は本当に今必要なのか
5.投資後にはどのように利益とキャッシュを創出していくことを考えているのか

経営者の方からお話をきいていますと、投資内容は違うものの共通して上記の5つの視点で、検討が必要なケースが多いと感じます。

陥りがちな事例

例えば、以前から新工場を建設して生産能力を増強したいと考えていたものの、これまで得意先からの受注増を、現状の設備と稼動でなんとか乗りきってきていた。しかし、そこに突然、土地等物件情報が相場より安い価格で舞い込んできたとします。

その際、今がチャンスと考え、新工場を建設したい、となるケースです。

経営者としては、目ぼしい物件情報は、常に意識していたことかもしれませんが、他に物件がとられないようにと決断を急ぐ気持ちと、工場を新設したい意識が強いため、上記5つの視点での考えが薄くなってしまっているのです。

これはある意味仕方のないことかもしれません。

ですが、そんな時だからこそ、冷静に上記5つの視点で、改めて検討しておく必要があります。

特に慎重に検討すべきこと

また投資をする際には、自社の現預金で対応できれば良いのですが、借入で対応することが大半です。

その点からも、特に慎重に下記3・4・5について検討を行うことが重要です。

再掲
3.その手段として、本当に投資が必要なのか投資をしないで目的を達成する(解決する)方法はないのか
4.その投資は本当に今必要なのか
5.投資後にはどのように利益とキャッシュを創出していくことを考えているのか

投資後のリスクを想定しているか?

更に、注意しなければいけない点は、上記5の、投資後の利益とキャッシュを創出していく際に内在されるリスクや課題を認識し、その対応をどのように行っていくかです。

例えば、

  • このまま高い受注が安定的に続くことを前提としている(受注が減少する可能性を想定していない)ケース
  • 売上の大半を担っている優秀な営業マンが突然辞めてしまい受注が減少するケース
  • 新規事業への投資の中で、思うように展開が進んでいかないケース

このようなケースで、想定通りの利益やキャッシュが創出できなくなった場合にどうするのか。

経営者の中には、そのようなことを考えていては、投資はできないと思われる方もおられます。

ですが、経営者はリスクとリターンを比較して、リスクをとって投資の判断をする以上、何がリスクで、何が課題かを知った上で、判断することが必要になると筆者は考えます。


現に、投資による失敗で財務が棄損してしまい、立ち行かなくなるというケースは多々あります。

その後、復活するまでに何年も要するケースもあります。

そうならない為にも、本格的に投資を決める前に、大まかな投資シミュレーション(※)を行い

1.目的の達成や期待している効果が得られるのかどうか
2.投資前と投資後の差額創出キャッシュと借入金の返済のバランスがとれそうか否か
3.上記2の結果、投資額を何年で回収できるのか、借入金を何年で完済できるのか
4.PL・BS・CFの点から、財務がどのように変化するのか
5.リスクと対応すべき課題は何か

これらを、洗い出しチェックすることが必要となります。

※この場合の投資シミュレーションとは、前提条件をおいて、PL・BS・CF・指標の試算を行うことと、投資前と投資後の税引後差額利益+減価償却費で創出されるキャッシュフローを試算することを意味します。

まとめ

そして投資を決める際には、実行の主体となる経営幹部を巻き込んで、上記のシミュレーション段階から、より具体的な資金調達を含めて投資計画に落とし込み、経営者、経営幹部がベクトルを合わせ、経営者は決断することが重要だと言えます。

今回の内容は、ごく当り前のことですが、その当り前のことができなくなるのが投資判断です。

投資を検討されている場合は、投資の失敗を防ぐ第1歩だと考え、まずは、上記5つの視点での検討と投資シミュレーションで、冷静に判断されてはいかがでしょうか。

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筆者紹介

株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティング 執行役員 土屋 元樹
1974年長野県生まれ。大手メーカー(上場会社)勤務を経て、株式会社アタックス戦略会計社 入社。中堅・中小企業を中心に、中期経営計画の策定、利益計画の策定、経営改善計画の策定、業績管理制度の構築・運用支援、経理業務改善、月次業績モニタリング支援、企業再生支援等に従事。各支援を通じて、経営者の片腕となる経営幹部の育成に情熱を燃やす。
土屋元樹の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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