2022年もあと一月余りとなりました。
思えば今年は、コロナ第6波で始まり、ウクライナ戦争、円安に起因した原材料・エネルギーコストの高騰。中小企業の経営環境の不透明感が一層増した一年であったように思います。
このような中、足元で倒産件数が増えています。
倒産件数の推移と国の政策
東京商工リサーチ調べによる2022年度上半期の倒産件数は、3,141件、負債総額は1.7兆円(うち超大型倒産1.1兆)。
コロナ融資により歴史的低水準であった2021年度(5,980件、1.1兆円)から、倒産件数はジワジワ増え始め、倒産規模も相対的に大型化しているようです。
2022年下半期から来年度にかけてコロナ融資の返済が始まる企業は多く、原材料等の価格高騰に出口が見えない事を踏まえると、事業・財務基盤の脆弱な中小企業の倒産件数は、残念ながら益々増加するのではないかと考えます。
経済産業省や中小企業庁等もこのような予測の中、中小企業の『倒産』を可及的に減らすため、2022年度は中小企業活性化パッケージ等の政策を打ち出しています。
『倒産』の定義と経済社会への影響とは?
では、そもそも『倒産』とはどう定義され、何が経済社会的にマイナスなのでしょうか?
上記のようなリサーチ会社等の調べにより公表される『倒産』件数は、一般に、破産法や会社法に規定される特別清算、民事再生法・会社更生法の適用対象となった会社の件数としてカウントされます。
夫々の法律に則った債務整理がなされるため専門的には『法的整理』と呼ばれます。
改めて『倒産』が倒産企業の利害関係者にもたらす影響を整理すると、大きくは以下の3点と考えます。
影響①:民事再生等の例外を除き、会社のビジネスが無くなります
- 会社が担ってきたサプライチェーンが無くなり、顧客、仕入先のビジネスに悪影響を与えます。
- 会社に従事してきた従業員の雇用が無くなります。
影響②:金融機関と仕入先の債務が完済されません
- 金融業である金融機関と異なり、中小企業の仕入先は財務基盤が弱い会社も多く、自社の『倒産』はこれまでのパートナーである仕入先の『倒産』を招きます。
影響③:金融機関から保証責任を問われます
- 経営者保証ガイドラインという一定のセーフティーネットが適用できない場合、保証人は私財提供等の保証責任の履行を求められます。
最悪の場合、社長をはじめとした保証人は個人破産となります。
『倒産』は、社長の仕事が無くなってしまう以外に、これまでの会社の関係者に大変な悪影響を与えます。
事業再生の道を模索する!
政府が何とか『倒産』を減らそうとしているのも、上記の経済社会に対する悪影響を抑制するためです。(一方で、既に多額の営業債務延滞や金利が払えていない、所謂、ゾンビ企業は既に『倒産』状況であるため、退場を促してもいますが)
筆者は財務コンサルタントとして長らく、この『倒産』の一歩手前の会社を顧客として、事業再生の業務に携わっています。
目の前のクライアントである社長をお助けすることに加えて、その会社が『倒産』を回避することで、目に見えないその会社の利害関係者にも貢献できる素晴らしい仕事であると考えています。
勿論、事業再生の道も大変険しいものです。
事業再生の道を選んだ社長に「破産した方が楽」と言われたことは何度もあります。
事業や財務の失敗を金融機関やコンサルタントから突き付けられ、ビジネスのあり方の改革を求められ、社長・役員・幹部も行動を変えなければなりません。また、社長の経営責任も問われます。
それでも、苦境に陥った社長には、社長自身のためのみでなく、会社の利害関係者のために、事業再生の道を模索してほしいと思います。
事業再生を進めていくにあたって、金融機関等との調整の枠組みは中小企業活性化協議会をはじめとして、非常に多様化されており、金融機関の認知もかなりすすんでいます。
事業・財務が苦しくなってきた社長は、自分はもとより、周りのために、顧問税理士や金融機関、公的窓口に事業再生の相談を是非してみてください。
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株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティングは、ファイブステップ(調査分析→問題発見→課題整理→改革提案→実行支援)コンサルとして中小企業の経営改善に関する様々なお悩みに対し、現状分析から課題解決のためのご支援を行っています。こちらからお気軽にご相談ください。
筆者紹介
- 株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティング 取締役 公認会計士 森下 大
- 1999年 早稲田大学卒。中堅中小企業の事業再生・買収のアドバイザーとして、財務・事業デューデリジェンス、経営計画策定支援を中心としたコンサルティング業務、並びに、計画経営推進のための経営顧問業務に従事。公認会計士としての知識・経験を活かし、社長の良き相談相手として伴走型の支援を行うことで定評がある。
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