コロナ危機の資金調達状況
4月16日付けの日経新聞では、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大による経済ダメージの試算が5兆ドル(540兆円)になると報道されていました。
リーマン・ショック時を大幅に超える額であり、危機の封じ込めのために、世界各国の政府が合計で8兆ドル(860兆円)の財政出動を計画しているとのことです。
深刻な経済ダメージを想定し、トヨタ自動車をはじめとした大企業が多額の資金調達を金融機関から取り付けているとの報道も連日なされています。
弊社の中核のお客様である中堅・中小企業の方も、より深刻な状況と感じられており、新型コロナウイルス感染症に関連した事業者支援制度に関するお問い合わせを頂いています。
また、コロナがダイレクトに業績に影響しないお客様からも、先行き見通し不安から、資金繰り不安に関するお問い合わせ・ご相談が集中しています。
筆者が直接担当している、財務・事業基盤が十分ではないお客様の共通したご相談は、
「制度を使って、なんとか資金を銀行から調達できないか」
です。
筆者も微力ながらご相談に応じるべくお客様へのアドバイスや金融機関への橋渡しを行っていますが、新たな資金調達の可否やそのスピードはお客様毎にはっきり明暗が別れています。
例えば、経営改善計画の実行フェーズで金融機関からリスケ支援を得ているお客様でも、数千万円の融資を政府系金融機関から応諾いただきました。
従業員への給与遅配を回避しながら、秋までの資金繰り見通しがたち、経営者とひとまずの安心感を分かち合えました。
一方で、あるお客様は相応の説明を金融機関より求められ、残念ながら融資が難航している状況です。
この違いは何でしょうか?
融資を受けられる会社・受けられない会社の違い
融資の承諾をいただけたお客様は以下のことをされていました。
1.経営改善計画に沿った実績を出している、又は業績改善の兆しがある(あった)
これは、コロナ前の経営努力や工夫の成果が決算書や月次試算表でみてとれる状態
(足元赤字であっても赤字の改善が顕著で経営努力との関係性が説明できる状態)
といえます。
2.感染拡大と業績悪化の因果関係が明確である
これは、感染拡大による売上減少実績や減少見込み、重要な仕入れのストップ等がなければ業績が好調又は安定していたことの裏返しといえます。
3.説明可能な形で当面の資金繰り見込み表が提出できる
これは、感染拡大による業績悪化に対して、今できる企業努力を明確に織り込んだ資金繰り見込み表であり、筆者も下記の点を織り込むようにアドバイスをしました。
・従業員の解雇は絶対的に避けながら、生き残るための固定費削減
・雇用調整助成金や租税債務の繰り延べなど事業者支援の制度の活用
一方で、融資が難航しているお客様には、次のような傾向があります。
1.そもそもコロナ前から経営努力が成果に結びついておらず、「コロナ後の収支改善」や「事業性」につき金融機関から追加の説明を求められてしまう。
2.コロナ前から業績・資金繰りが深刻な低迷状態にあり、多額の租税債務の延滞がある。
3.資金繰り見込み表がつくれない、又は、つくっても経営努力がみてとれない。
これら金融機関の対応をみると、感染拡大による業績悪化企業を支援する一方で、リーマン・ショック後の金融円滑化法の負の遺産となってしまった、利払い不能企業(例えるとゾンビ企業)の現出を抑制しようとしているように感じます。
(もちろん、『弱者救済』を求める世論と政府方針に応じて、今後、融資ハードルを下げてくる可能性も十分あります。)
結局、コロナのような有事であっても、他者から事業資金を調達するには、有事後の事業収支見通しと、収支を稼得するための経営努力を示すことが重要だと理解しています。
この点、筆者は融資が難航しているお客様には状況を確認していただきながら、コロナ後の短期的な経営計画策定を推奨・支援しています。
また、現時点では比較的資金に余裕があるお客様に対してもコロナ終息までの資金繰りのリスクシナリオにもとづいた資金調達を検討するように推奨又は一緒に検討しています。
最後になりますが、マスク不足と感染拡大の報道で息苦しい日々が続いていますが、これもいつか終わりがきます。
数年後になるかもしれませんが、将来、「あの時は大変だったなぁ」と思い出せるように、皆様もご自身と会社の健康維持にご尽力いただきたいと思います。
筆者紹介
- 株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティング 執行役員 公認会計士 森下 大
- 1999年 早稲田大学卒。中堅中小企業の事業再生・買収のアドバイザーとして、財務・事業デューデリジェンス、経営計画策定支援を中心としたコンサルティング業務、並びに、計画経営推進のための経営顧問業務に従事。公認会計士としての知識・経験を活かし、社長の良き相談相手として伴走型の支援を行うことで定評がある。
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