5月14日、政府は39県の緊急事態宣言を一斉に解除する方針を固めました。解除される地域では、一定の感染防止策を前提に、一部の社会・経済活動を再開する動きが広がっています。
この状況の中、多くの企業が、緊急融資依頼・助成金申請・納税猶予等により、資金繰り対応をされています。
当然、足許の対策は、資金を確保し、雇用を守り、事業を継続していくことですが、もう少し先を見据えた対策も考えていく必要があります。
特に中堅・中小企業の経営者・経営幹部の方には、今後、意識して取り組んでいただきたいことが、以下の2つです。
現状を把握した上で、今立てている目標を見直し、今後このような状況になった場合でも、余力を持って生き抜いていける経営体質にするために、この2つが必要だと考えています。
生き抜く財務戦略1~現状を知る
それでは、1つ目の「現状を知る」とは、どのようなことでしょうか。
それは、次の3つ(①②③)を知ることです。
②自社はそのお客様に、どのような価値を提供しているか。
③その価値を生み出すために、どのような技術・ノウハウ=強みがあるのか。
言い換えれば、どういう人が、自社の製品・商品・サービスのどこに魅力を感じて購入していただけているのかを知る(考える)ということです。
そしてその価値は、自社のどのような技術・ノウハウ=強みから生み出されているかをしっかりと考えるということです。
例えば、製造業であれば、小ロット短納期対応ができる。
卸売業であれば、企画提案力が他社より優れている、などです。
この3つは、事業領域(ドメイン)を構成する要素です。
自社は、どのようなお客様に、何を強みとして、どのような価値を提供しているのかを、きちんと理解し整理しておく必要があります。
筆者は、中長期の経営計画策定のサポートを行っていますが、現状分析ができていないまま、計画を策定し、実行段階で、行き詰っている企業様からご相談を受けます。
そのような状況において、現状とあるべき姿のギャップを把握する上で、上記の現状分析は非常に有用です。
生き抜く財務戦略2~今後の進むべき方向性や目標を再検討する
次に2つ目の「今後の進むべき方向性や目標を再検討する」について説明します。
まず目標は、利益目標だけではなく、
・損益分岐点売上高(BEP)比率(※ご参考)
・自己資本比率
・自己資本○億円
・現預金残高(月商○ヶ月分)
等、複数の重要指標を目標として掲げることが必要です。
私は、特に損益分岐点売上高(BEP)比率は重要な指標と考えています。
この比率を目標にすれば、いくらまでの売上高減少に耐えられるのか、自己資本比率や自己資本を適正水準に保つには、いくらまでの赤字に耐えられるのか、現預金残高は、いくらまでの支出に耐えられるのか、など、経営のコントロールがしやすくなります。
今後、今回のコロナ禍のような状態になった場合でも、資金繰りに困らず、次への対策を打てる財務体質にしておく必要があります。
その為には、経営者・経営幹部の方が、自社の提供価値を見直し、更に高め、価格以上の価値を、誰にどのように提供していくのか、それをするためには、何を行う必要があるのかを考え実践していくことが求められます。
また、価格以上の価値を提供できれば、お客様の値下げ要求に悩むことなく自社で値決めを行うことができます。
結果として、利益向上に繋がり目標を達成することができる体質にしていくことができます。
言うは易く行うは難し、ですが、まずは意識を変えていくことが必要です。
このような状況だからこそ、今できることは何かを真剣に考えて行動して頂きたいと思います。
私共アタックスグループでは、経営体質強化の為の様々な支援を行っています。お気軽にお問い合わせください。
筆者紹介
- 株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティング 執行役員 土屋 元樹
- 1974年長野県生まれ。大手メーカー(上場会社)勤務を経て、株式会社アタックス戦略会計社 入社。中堅・中小企業を中心に、中期経営計画の策定、利益計画の策定、経営改善計画の策定、業績管理制度の構築・運用支援、経理業務改善、月次業績モニタリング支援、企業再生支援等に従事。各支援を通じて、経営者の片腕となる経営幹部の育成に情熱を燃やす。
- 土屋元樹の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。