「メタバースとweb3、そしてNFT」
昨年あたりから目につき始めたキーワードですが、多くのビジネスパーソンは横目でこれらのキーワードを眺めつつ、自分とは関係のない話だと思いこもうとしているのではないでしょうか。
web1からWeb2.0、そしてweb3.0へ
インターネットもスマートフォンも最初はそうでした。
私自身は高校生だった90年代に初めてのPCとモデム(インターネットを電話回線で行う装置)を親に買ってもらい、“これで世界と繋がる”などと思ってワクワクしていたのを覚えています(web1)。
2007年にアップル社が初代iPhoneを発表した頃には、歳を取ったせいか何らワクワクもせずガラケーを手放す気も一切なかったのも覚えています。
しかし革命はそんな旧人類の気持ちなどお構いなしにやってきます。
スマホ、SNS、クラウドが席巻する中Webは2.0へ。
キーワードは“双方向”であり、“read”から“write”でした。
特にアマゾンのAWSの出現はスムーズな革命を引き起こし、GAFAMは成熟化、巨大プラットフォーマー達とそれ以外での貧富の格差が拡がる中、「メタバース」「web3」「NFT」という言葉が世界的なバズワードになったのが昨年です。
「NFT」の出現が世の中の前提を変えた
大きなきっかけだったのは「NFT」です。
この言葉については昨年3月に大手オークションハウスChristie’s(クリスティーズ)において、アーティストのNFT作品が約75億円で落札されたというニュースを覚えている方も多いのではないでしょうか。
NFTは「Non-Fungible Token」の頭文字で、直訳すると「代替できない価値を持つ証拠」、という意味になりますが、具体的には“偽造不可な鑑定書付きデジタルデータ”といったところでしょうか。
これまでデジタルデータはコピーできてしまうもの、という前提で世の中は成立していましたが、NFTの出現は唯一無二な価値(75億円!)を持ち得る、ということを証明することとなりました。
メタバース、Web3のGDPが、リアルのGDPを超える?
これによりフィアットエコノミー(法定通貨)の世界からクリプトエコノミーと呼ばれる、ブロックチェーン技術に信用を支えられた暗号資産が流通する経済圏への人口移動が本格的に始まっています。
また、90年代からあまり一般には普及しないまま成長してきたバーチャルリアリティはメタバースへ名を変え、リアルでの対面が難しくなったコロナ禍で急速に身近になりました。
そして、「サトシ・ナカモト」が2009年に提唱したブロックチェーン技術と、その「信用創生」を軸とするWeb3も、急速に仮想通貨や暗号資産、クリプトによる「非中央集権的」な構造化を進めています。
これらはGAFAMを代表とする「中央集権的」な巨大プラットフォーマーからデータの所有権を「個人」に取り戻す大きな潮流です。
NFTはこれらの10年以上前からあった技術に急速に力を与えました。
それは近年の暗号資産の急激な時価総額の拡大に顕れています。
今後、メタバース、Web3のGDPがリアルのGDPを超えていく、ということも十分に考えられるでしょう。
「株主、経営者、従業員」の構図が崩れる
そして我々のようなコンサルタントの視点から見た場合、「経営」「組織運営」にゲームチェンジが起こり、大きな影響を及ぼしそうです。
個人の働き方は個人ベースからプロジェクトベースになると言われています。
その主体はこれまでの「法人」ではなく「DAO」です。「Decentralized Autonomous Organization 」の略称で、直訳すると「自律分散型組織」と言われるものです。
個人の「学位」や「資格」、「実績」などもNFT化され、これらもブロックチェーンに記録されることで改ざん不可能な履歴書代わりになります。
結果的に経歴詐称はリアルよりも難しくなり、自身の実績ベースの自己紹介が仲介業者なしで可能になり、個人はやりたい仕事のあるDAOに手を挙げ、好きな時間、場所でプロジェクトベースでの仕事ができるようになってくるわけです。
こうなると働き方は勤め先に縛られなくなってきます。
そしてDAOには役員、社員、従業員、アルバイトなどの区別もありません。
自律した構成員のみが手を挙げて参加するものであるため、「株主、経営者、従業員」の構図が崩れる、とも言われています。
基本的に法人の利益は株主や経営者に集まりますが、DAOでは結果的にこういった働き方や性差、地域などでの格差が是正されていくともいわれています。
「DAO」は始まっている!
折しも今月、岩手県紫波町は「Web3タウン」の計画を発表し、海外も含めた多様な人材のまちづくりへの参加を可能にするためのDAOを設立していくというニュースが流れました。
「Web3タウン」で目指すものとして、DAOの設立以外に「Web3技術を活用した新型地域通貨の発行に向けた活動」「ふるさと納税の返礼としたデジタルアートのNFT化」「Web3技術の推進に取り組む企業の誘致」が挙げられています。
そしてアメリカなどの規制が強い国でさえ、DAOを法人格として認めるなどの動きが活発化してきました。
これらの新しい技術には当然様々なリスクがあり、静観している人々も未だ多いですが、元MITメディア・ラボ所長の伊藤穣一氏は、「全人類が不可避」、これらの時代の変化に取り残されないために必要なのは、テクノロジーに対する「リテラシー」と、そのテクノロジーによって社会はどう変わるのかという「ビジョン」だと言います。
アタックスグループは、「社長の最良の相談相手」として皆様に伴走できるよう、日々努力しています。今後10年で変化していく時代に合ったビジョン、事業の変革をご検討の際は是非、アタックスグループにご相談ください。
筆者紹介
- 株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティング執行役員
税理士 浦井 耕 - TFP(現山田)コンサルティンググループ、中小会計事務所を経て株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティングへ入社。ハンズオンによる管理制度構築支援や多数の企業再生支援に従事。2011年の東日本大震災以降は特に宮城県内の被災企業の再生支援を多く手掛ける。
- 浦井 耕の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。