ECスタジオ~電話が一本もない会社

経営

電話が一本もなく営業する社員も、一人もいないという珍しい中小企業がある。その名前は、「ECスタジオ」といい、従業員数は約35名の中小企業である。主事業は、ITビジネス、より具体的にいえば、ITの高度利活用のコンサル会社である。

正直こうした企業は全国に多々あるが、コンサル会社自身が,ITの高度利活用に成功している会社が少ない中、当社は傾聴に値する企業である。

当社の設立は2004年、現社長である山本氏が弟と一緒に再スタートしている。再スタートと言ったのは他でもない。2000年に山本兄弟は留学先のアメリカで一度創業したが、あえなく一旦は挫折している。挫折の理由は、株主や業績を最優先した経営をベースとしたため、社員や仕入先の反発を招いたからである。

ともあれ、その失敗を教訓にメンバー(社員)最優先の経営に転換し、故郷の大阪で再びスタートしたのである。その結果、2004年再スタートから今日までその業績は一貫して右肩上がりである。

当社がこの間、社員満足度を高めるため行ってきたユニークな取り組みの中で、読者の企業でも参考になると思われるものを5つ紹介する。

1つ目は、「ゴーホーム制度」という福利厚生制度である。この制度は社員が出社しているオフィスから一定距離以上、実家が離れている場合、年2回まで、1回14,000円を実家に戻る旅費交通費として社員に支給するというものである。配偶者がいる場合は2人分となり、さらに配偶者の実家に帰る場合も同様である。

2つ目は、「アイフォン支給制度」である。会社から携帯電話を支給する会社は多い。しかしながら、その大半は営業マンなど、外回りが多い社員向けである。しかしながら当社では、内勤、外勤そして正規、非正規を問わず、全社員にアイフォンを支給している。そして毎月の給料に必要経費として6,000円を支給している。その目的は、会議・商談・面接そして朝礼などの動画の配信により、全社員の情報・成果の共有をするためである。

3つ目は、「バースデイ制度」である。これは社員やパートナー(配偶者や恋人)の誕生日に社員の食事代を支給する制度である。ちなみに支給金額は14,000 円である。余談であるが、恋人が変わっても何回でも支給するという。

4つ目は、「食券制度」である。これは社員1 人ではなく、会社のメンバーと一緒に会社が契約したお店で外食する場合、食券を支給するという制度である。ちなみに月の支給上限は、3,500円である。

5つ目は、「長期休暇制度」である。当社は完全週休2 日制であることはもちろんであるが、この他、年4回の10日間連続の休暇が義務付けられている。さらに単発ではあるが、当社独自に4日の休暇があり、当社の年間休日数は実に140日を超す。

なお、当社は、ある調査会社の調査で、2年連続社員満足度第1位に選ばれている。

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筆者紹介

坂本光司

アタックスグループ 顧問
経営学者・元法政大学大学院教授・人を大切にする経営学会会長  坂本 光司(さかもとこうじ)
1947年 静岡県生まれ。静岡文化芸術大学文化政策学部・同大学院教授、法政大学大学院政策創造研究科教授、法政大学大学院静岡サテライトキャンパス長等を歴任。ほかに、「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞審査委員長等、国・県・市町村の公務も多数務める。専門は、中小企業経営論、地域経済論、地域産業論。これまでに8,000社以上の企業等を訪問し、調査・アドバイスを行う。

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