ヘッズ~創業以来快進撃を続ける中小企業

経営

右肩下がりの包装資材業界で、創業以来29年間増収を続ける企業がある。大阪市の「ヘッズ」という社名の、社員数は約60名の中小企業である。

当社の創業は、今から30年前の1985年、現社長である暮松社長が、人生計画どおり勤務していた企業を退職し、スタートしている。創業以来、幾多のターニングポイントがあったが、見事にそれらをクリアーし、今や低迷続く業界にあって、29年連続増収企業である。

当社の成長発展の要因は多々あるが、ここではとりわけ重要と思われる4点を述べる。

第1点は理念経営の徹底である。ちなみに当社の社是は「幸せ制作会社」である。暮松社長の考える「幸せ」とは、社員をはじめとした企業に関わる全ての人々の「安心」「健康」「心の充実」であり、全ての経営の意思決定や言動は、この3つをモノサシに実行しているという。このことが社員の心をしかと捉えていることは間違いない。こうした社是・経営理念が正しく実行されていることは、社員とその家族のために設けた素敵な「社員食堂」や、産休後の女性の職場復帰率が実質100%であること、さらには社員の誕生日等メモリアルデイに対する、社長や仲間からの心温まるメッセージカードやプレゼントを見ればよくわかる。

第2点は、やはり当社の新商品開発力と思われる。いうまでもなく、包装資材は感性に訴える商材であり、かつ商品のライフサイクルも短い。

このため、新商品開発力こそが企業の生命線である。このため当社では、週2回、全社員が部門ごとに分かれ、商品企画会議を開催し、生まれる新商品は毎年約300~500アイテム誕生している。

ちなみに当社の社名である「HEADS」は「先端」と「頭脳」の2つの意味を込めているという。

第3点は、当社のマーケテング力と思われる。当社の現在の取引先は全国の2万3千社の小売店であるが、当然のことながら販売方法はカタログ通販である。

カタログ通販におけるカタログの発行は、通常年5回といわれているが、当社の発行回数は実に年10回であり、それを1回に1万2千社から1万5千社に発送している。

加えて言えば、そのカタログは商品を売らんがための自社都合のカタログではなく、社是「幸せ制作会社」を十分すぎるほど感じさせる表現・提案提示である。

第4点は、あれもこれも持たず専門特化経営を実践している点と思われる。当社は企業の持つリソースを最も得意な企画部門と販売部門に集中し、生産機能はすべて国内外に張り巡らせたネットワークを行動利活用しての「持たざる経営」を実践している。

もとよりこれが可能なのは、当社が外注企業・協力企業に対しても社是を実践しているからに他ならない。

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筆者紹介

坂本光司

アタックスグループ 顧問
経営学者・元法政大学大学院教授・人を大切にする経営学会会長  坂本 光司(さかもとこうじ)
1947年 静岡県生まれ。静岡文化芸術大学文化政策学部・同大学院教授、法政大学大学院政策創造研究科教授、法政大学大学院静岡サテライトキャンパス長等を歴任。ほかに、「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞審査委員長等、国・県・市町村の公務も多数務める。専門は、中小企業経営論、地域経済論、地域産業論。これまでに8,000社以上の企業等を訪問し、調査・アドバイスを行う。

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