ホテル業をはじめ、介護業、マンション管理業、そして人材派遣業などを展開する大阪本社の「スーパーホテルグループ」がある。
中核はいうまでもなく、ホテル業であり、現在、全国各地に125店舗、海外ではベトナムとミャンマーに3店舗運営する著名ホテルである。
同社の創業は1989年であるが、今日のスーパーホテルを展開するのは、1996年である。
以来22年の歳月が流れたが、この間、店舗数はもとより、売上高も社員数も右肩上がりに増加している。
同社のこれまでの成長発展の要因は多々あるが、その最大の要因は「人間力と感性をベースに自立型感動人間を育てて、社員とその家族を幸せにしたい」等、5つの創業者精神に基づくぶれない経営と思われる。
こうした社員とその家族第一主義経営に共感共鳴した社員が、創業者の熱き思いを、顧客満足度を高めることで、ご恩返しをしようと感動サービスを提供しているのである。
ちなみに、同社の全ホテルの平均稼働率は90%以上、より驚くのは、そのリピーター率で、最近では70%以上という。
こうしたこともあり、ある調査会社が毎年実施している「ホテル宿泊客満足度調査」(1泊9,000円未満部門)では直近でも4年連続ナンバーワンホテルである。
近年、多くのホテル・旅館は、顧客満足度を高めることを重視するあまり、その担い手である社員満足度が総じて低く、その結果として、社員の離職や、働きがいの低下が顕著である。
ちなみに、社員満足度を示す代表的バロメーターである転職的離職率を見ると、ホテル業界のそれは10%~20%である。
しかしながら、スーパーホテルのそれは、僅か2%以下である。加えて言えば、月間残業時間が30時間をはるか上回るホテルが多い中、同社のそれは10時間程度以下である。
同社が支持される所以がここにこそある。
また近年、インバウンド客が増加する中、これまで8,000円前後で宿泊していたビジネスホテルであるにもかかわらず、需給のバランスで値段を上げ下げしたり、顧客が困っているという足元を見て20,000万円とか30,000円とか、望外の価格を提示するビジネスホテルも正直多い。
こんなことをしていたら、顧客がやがて離れていくばかりか、誠実な社員ですら嫌気がさすのは当然である。
こうした点から見ても、ぶれないスーパーホテルの経営姿勢は見事である。
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筆者紹介
- アタックスグループ 顧問
経営学者・元法政大学大学院教授・人を大切にする経営学会会長 坂本 光司(さかもとこうじ) - 1947年 静岡県生まれ。静岡文化芸術大学文化政策学部・同大学院教授、法政大学大学院政策創造研究科教授、法政大学大学院静岡サテライトキャンパス長等を歴任。ほかに、「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞審査委員長等、国・県・市町村の公務も多数務める。専門は、中小企業経営論、地域経済論、地域産業論。これまでに8,000社以上の企業等を訪問し、調査・アドバイスを行う。