深刻な事業所数の減少

経営

今から約20年前の1996年の「事業所・企業統計調査」をみると、わが国に存在していた民営事業所数は約650万ヶ所であった。

しかしながら、これを最新の2014年調査(経済センサス)でみると、約554万か所となっており、この約20年間でなんと100万ヶ所の減少となっている。

少し乱暴であるが、このスピードで事業所が減少していくと、111年後にはわが国の事業所がゼロになってしまう。

とりわけ、この間減少著しいのは、これまでわが国経済をけん引してきた工場や小売商店である。事実、工場数の動向を見ると、1983年の78万工場をピークにその後一貫して減少を続け、1995年では65万、そして2014年では40万工場となっている。

この約30年間で工場数は半減、この20年間で見ても、25万工場と、1年間でなんと、1万2千工場の減少である。これまた乱暴な計算ではあるが、こうした推移で行くと、33年後にはわが国工場数はゼロになってしまう。

こうしたことは、小売商店でも同様に進んでいる。事実、1982年の172万商店をピークに、その後一貫して減少を続け、1994年では150万商店、そして2014年では103万商店となっている。この約30年間で69万、またこの約20年間では47万もの減少である。

こうした事業所の大幅な減少の最大理由は、いかなる環境変化があったにせよ、雇用維持拡大業・変化適応業・市場創造業といった、企業本来の使命と責任を果たすことができなくなってしまった企業自身にあるが、決してそれだけではない。

その1つが、わが国代表する大企業の理不尽な取引姿勢である。かつてとは言わないまでも、わが国大企業は、程度の差こそあれ、業績を高めているにもかかわらず、赤字や収支トントンの取引先中小企業に対し、相も変わらず低単価発注や、コストダウン、さらには極度の短納期発注等を強いているからである。

こうしたことが重なれば、多くの中小企業は経営の未来に嫌気がさし、力がある中小企業は脱下請・取引先離れを加速させ、一方、力が十分ない企業は廃業の道を選択することになる。

こうした傾向は、わが国産業社会にとってきわめて危険である。それは、そのことが、結果として組み立て型産業化しているわが国大企業の国際競争力を衰退させてしまうからである。

誰かの犠牲の上に成り立つ産業組織で長期にわたって繁栄した産業は、歴史上存在しないことを肝に銘ずるべきである。

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筆者紹介

坂本光司

アタックスグループ 顧問
経営学者・元法政大学大学院教授・人を大切にする経営学会会長  坂本 光司(さかもとこうじ)
1947年 静岡県生まれ。静岡文化芸術大学文化政策学部・同大学院教授、法政大学大学院政策創造研究科教授、法政大学大学院静岡サテライトキャンパス長等を歴任。ほかに、「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞審査委員長等、国・県・市町村の公務も多数務める。専門は、中小企業経営論、地域経済論、地域産業論。これまでに8,000社以上の企業等を訪問し、調査・アドバイスを行う。

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