経済センサスによれば、近年の年間開業企業数は約18万社(含む個人企業)。一方、廃業企業数は24万社である。廃業企業数が開業企業数を6万社も上回っており、この結果、この15年間で見ても、何と100万の企業が減少している。
ちなみに、現在、わが国には約380万の企業数があるので、今後もこうした規模とスピードで、廃業が進むと、乱暴に言うと、63年後には、わが国企業数は消滅してしまうことになる。
こうした廃業の増加の要因は多々あるが、最大の要因は、社長の高齢化と、後継者の不在である。その意味では、後継者対策なくして、廃業を減少させる方法はないと言える。
しからば、どうすれば、後継者を育て、結果として廃業を減少させることができるのであろうか。その最適な対策は、社長が自身の役割・仕事を理解・認識し、その役割を実行していただくことに尽きる。
もっとはっきりと言えば、近年の廃業企業の増加は、誰でもない社長の怠慢がもたらした結果としての現象と言える。
筆者が考える社長の仕事は3つである。別の言い方をすれば、他の仕事は社長の仕事ではなく他の社員の仕事と言っても過言ではない。
その社長の3つの仕事とは、
第2は、社員のモチベーションをあげる
第3は、後継者を発掘し育てる
である。
とりわけ重要な仕事は、社員や管理職の育成ではなく、第3の後継者の育成である。
新入社員の育成は先輩社員が担い、中堅社員の育成は管理職が担い、そして管理職の育成は、役員が担うべきだからである。
社長も他の社員も1日は24時間、年間365日しかないにもかかわらず、この3つの仕事に多くの時間をかけずに、営業や販売、さらにはコストダウンや全社員の育成といった、社長が前面に出るべき仕事ではないことに多くの時間を割いているのである。
この結果、時間が足らず、後継者が発掘できず、また育たないのは当然なのである。
余談であるが、後継者の育成は早くて5年、平均では10年かかるのが一般的である。より重要なことは、そのバトンタッチの時期である。
気力・能力・体力の衰えの見られるようになってからでは遅い。というのは、そうなってしまうと、後継者への適格なアドバイスができないからである。
多くの社長はそれに気づき、社長の仕事に集中するべきである。
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筆者紹介
- アタックスグループ 顧問
経営学者・元法政大学大学院教授・人を大切にする経営学会会長 坂本 光司(さかもとこうじ) - 1947年 静岡県生まれ。静岡文化芸術大学文化政策学部・同大学院教授、法政大学大学院政策創造研究科教授、法政大学大学院静岡サテライトキャンパス長等を歴任。ほかに、「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞審査委員長等、国・県・市町村の公務も多数務める。専門は、中小企業経営論、地域経済論、地域産業論。これまでに8,000社以上の企業等を訪問し、調査・アドバイスを行う。