単身赴任を問う

経営

企業経営の最大・最高使命は、企業に関わる全ての人々の永遠の幸せの追求・実現である。

そして、経営者をはじめとした組織のリーダーが、とりわけ、その幸せの追求・実現に注力しなければならない人は「社員とその家族」である。それもそのはず、社員満足度なくして顧客満足度などあり得ないからである。

それゆえ、企業経営者やリーダーは、いつでも・どこでも、またどんな事態になっても、社員とその家族の命と生活を守らなければならない。逆に言えば、もしもそれができなくなったら、経営者やリーダーは潔く企業から退出すべきである。

経営者やリーダーが、社員とその家族の幸せの追求・実現のために、やるべきこと、やってはいけないことは多々あるが、今回は社員の「単身赴任」について考えてみよう。

これまでの企業経営においては、家族ぐるみであれ、単身赴任であれ、遠隔地への転勤について、疑問を呈する人はほとんどいないばかりか、当然のことのように実行されてきた。

また企業によっては、遠隔地に赴任し、そこで成果を上げることが、その後の出世の登竜門等と位置付けているような面もあった。

しかしながら、企業経営の使命と責任は、人、とりわけ社員とその家族の幸せの追求・実現であることを考えると、本人やその家族等の強い要望等、特別な事情がない限り、社員の遠隔地への単身赴任は決して望ましいことではない。とりわけ、社員の子供が中学生以下の年少の場合、原則辞めるべきといえる。

というのは、単身赴任は、誠実に生きている社員ならば、最も幸せを実感する家族団らんの一時を、企業の都合で奪い・切り裂いてしまうからである。

先日、ある経営者から、社員の小学校1年生の女の子が書いた800字ほどの作文を読ませていただいた。

内容は「小学校にも、ようやく慣れ、友達もでき楽しいけれど、とても寂しいことが1つあります。それは毎日遊んでくれていた大好きなお父さんが、仕事の関係で、遠くの町に転勤し、学校から帰ってきても、会えなくなってしまったことです・・・。お父さんから転勤の話を聞いた夜は、悲しくて一晩中眠れませんでした・・・。」とあった。

「私たちが、これまで当然・当たり前と思っていた単身赴任が、こんなにも小さな子供たちの幸せまでも奪い、悲しませていたのか・・・」と、深く考えさせられた。

「異常が長く続くと異常があたかも正常に見える」「異常と比較すると正常があたかも異常に見える」ではないが、企業経営を原点的に見直す時期に来ている。

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筆者紹介

坂本光司

アタックスグループ 顧問
経営学者・元法政大学大学院教授・人を大切にする経営学会会長  坂本 光司(さかもとこうじ)
1947年 静岡県生まれ。静岡文化芸術大学文化政策学部・同大学院教授、法政大学大学院政策創造研究科教授、法政大学大学院静岡サテライトキャンパス長等を歴任。ほかに、「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞審査委員長等、国・県・市町村の公務も多数務める。専門は、中小企業経営論、地域経済論、地域産業論。これまでに8,000社以上の企業等を訪問し、調査・アドバイスを行う。

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