ボーダレスジャパン等~最近の年寄りは・・・

経営

「最近の若者は…」という言葉をよく年寄りが使用する。その意味は「自分たちが若い頃はこうだったとか、こうしたが…、今どきの若者は、自分たちが若かったころとは違い、努力が足りないとか、やり方が間違っているとか…」といったことである。

しかしながら、今や、年寄りの一人でもある筆者に言わせれば、「最近の若者は…ではなく、最近の年寄りは…」という言葉の方が、今の時代を正確に示しているように思えてならない。

仕事柄、多くの経営者や指導者にお会いする機会が多いが、近年、このことを実感する場面が多い。先日も、「ボーダレスジャパン」「ファクトリエ」「こころと」といった、いずれも40歳前後の若い創業経営者にお会いする機会があったが、まさにこのことを痛感した。

「ボーダレスジャパン」(福岡県・東京都)は、貧困や環境汚染・難民といった地球規模での社会的課題を、ビジネスという手法で解決するために立ち上がった企業である。創業者でもある田口社長らのユニークな組織運営により、創業後10年程度しか経っていないにもかかわらず、既に20以上のプロジェクトを立ち上げ、難題といわれた多くの社会的課題をビジネスで解決している。

また「ファクトリエ」(熊本県・東京都)は、今や国産化率が3%程度までに低下してしまい、壊滅状態の縫製業界をはじめとした中小の軽工業品業界を再生するため、山田社長らが事業を立ち上げている。

小売希望価格こそが、業界衰退の根幹と、逆に、メーカー希望小売価格を高らかに掲げ、既に全国各地の50社以上の中小企業と、タッグを組み、復活を支援している。

さらに「こころを」(東京都)は、大手企業のエンジニアであった大島社長が、障がい者の実情を知り、障がい者の安定的雇用就労と賃金改善を目的に、あえて脱サラし、スタートした社会企業である。

障がい者の特性と才能を見出し、それをIT分野で活かす事業運営で、創業後間もないが、既に多くの障がい者の夢と希望を実現しつつある。
いずれの若手経営者も、「自利ではなく利他」「損得ではなく善悪」「強者ではなく弱者」そして「誰かがではなく自分が」といった基準をモノサシに事業運営している点が共通している。

その意味では、問題の所在は、最近の若者はではなく、それをさせない、邪魔をする最近の年寄りなのである。

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筆者紹介

坂本光司

アタックスグループ 顧問
経営学者・元法政大学大学院教授・人を大切にする経営学会会長  坂本 光司(さかもとこうじ)
1947年 静岡県生まれ。静岡文化芸術大学文化政策学部・同大学院教授、法政大学大学院政策創造研究科教授、法政大学大学院静岡サテライトキャンパス長等を歴任。ほかに、「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞審査委員長等、国・県・市町村の公務も多数務める。専門は、中小企業経営論、地域経済論、地域産業論。これまでに8,000社以上の企業等を訪問し、調査・アドバイスを行う。

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