希望退職者を募集する。
つまり、リストラをする大企業が、最近、再び増加している。よりひどいのは、そのうちの約60%は黒字企業、なかには、前年比10%どころか30%を超える程、好業績の企業も存在する。
赤字企業のリストラも許しがたいが、より問題なのは、黒字企業のリストラである。いかなる理由があるにせよ、こうした正しくない・お天道様に顔向けできないような経営を行う企業が多数派である限り、わが国経済はもとより、社会の未来も危うい。
それは、本コーナーで筆者が繰り返し述べているように、企業経営の最大・最高の使命・目的は、5人の幸せの追求・実現である。そして、とりわけ重要かつ大切な人は、社員とその家族だからである。
業績も勝つことも重要ではあるが、それはあくまで使命・目的である社員とその家族の幸せの実現のための、手段・結果としての重要度に過ぎないのである。リストラをされた社員や、その家族で幸せを実感できる人など世界中に誰一人としていないからである。
このことは、会長・社長をはじめとした役員が、「自分自身が社員だったら…とか、自分自身が社員の家族であったら…」と考えれば、よく分かることである。
筆者はよく、「社員であった頃のことを忘れた人が、たまたま会長や社長、さらには役員になると、ろくなリーダーにならない…」という意味がこれである。
ともあれ、こうしたリストラを平然と行う企業に怒りを覚えるのは、これら大半の企業の会長・社長、そして役員は、リストラをお詫びするどころか、あたかも自身の成果のように誇り、依然居心地のいい椅子に座り続けているという点である。
加えて言えば、これら企業の大半の役員報酬は5000万円以上、なかには1億円どころか3億円以上の役員も存在しているという点である。わが国就業者の平均が約400万円前後であることを踏まえると、想像を絶する報酬と言わざるを得ない。
例え話で恐縮ではあるが、もしも筆者が、これら企業の役員であったならば、黒字企業のリストラはあり得ないが、赤字企業であったとしても、その場合は、自分の報酬を大幅(社員並み)に下げ、一人でも多くの社員とその家族の命と生活を守る決断をすると思われる。
もとよりそれは、誰が考えても、そうした経営が正しいからであり、自然の摂理に合っているからである。
長い歴史を調べてみると「正しい経営は決して滅びない…、欺瞞に満ちた経営・誰かの犠牲の上に成り立つ経営はやがて滅びる…」のであり、このことを心すべきである。
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筆者紹介
- アタックスグループ 顧問
経営学者・元法政大学大学院教授・人を大切にする経営学会会長 坂本 光司(さかもとこうじ) - 1947年 静岡県生まれ。静岡文化芸術大学文化政策学部・同大学院教授、法政大学大学院政策創造研究科教授、法政大学大学院静岡サテライトキャンパス長等を歴任。ほかに、「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞審査委員長等、国・県・市町村の公務も多数務める。専門は、中小企業経営論、地域経済論、地域産業論。これまでに8,000社以上の企業等を訪問し、調査・アドバイスを行う。