今、日本の企業は働き方改革に向け動き出しているが、その先進国の1つはドイツである。例えば、ドイツの労働時間等に関する法律・規則の一部を見ると
①1日の労働時間は残業を含め10時間以内とすること
②6か月平均の労働時間は1日、8時間以内とすること
③労働時間貯蓄制度があり、残業分は別の日に早退可とすること
④有給休暇は完全取得すること
⑤病気による休暇は別途法律で定める
⑥部下の有給休暇消化率は上司の評価項目にすること
等となっている。
ちなみに、ドイツの労働者の年間平均残業時間は52時間。月平均では3.78時間である。
いやはや、驚くべき働き方改革が進んだ国である。
こういうと、24時間操業が常態化している、コンビニエンスストアをはじめ、小売店はどうなっているんだ…、と疑問に思う人がいると思われる。それも納得である。
ちなみに、ドイツでは「閉店法」という法律があるが、これを見ると、
①日曜日・祝日は、外食産業や遊楽産業等を除き営業禁止
②平日・土曜日の営業時間は朝6時から夜20時まで
となっている。このため、ドイツ人の大半は、土曜日や平日の夜に1週間分をまとめ買いするのだという。
ドイツの労働者1人当たり年間労働時間は1,371時間、一方、日本のそれは1,719時間である。またドイツの年間休日付与日数は145日であるが、日本のそれは137日である。
さらに言うと、ドイツの労働者の平均時間給は3,570円であるが、日本のそれは2,300円である。それでいて、時間当たり労働生産性はドイツの66ドルに対し、日本は42ドルとドイツの64%の水準に過ぎない。
つまり、ドイツは日本よりはるか労働時間が短く、賃金は日本よりはるか高いにもかかわらず、その生産性は1.6倍と高いのである。
その最大の違いは何であろうか。
一言で言えば、ドイツの多くの企業は、世界を相手に値決めのできる経営を行っているが、日本の多くの企業は、狭い市場の中で、値決めのできない経営・コストダウン経営を強いられているからである。
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筆者紹介
- アタックスグループ 顧問
経営学者・元法政大学大学院教授・人を大切にする経営学会会長 坂本 光司(さかもとこうじ) - 1947年 静岡県生まれ。静岡文化芸術大学文化政策学部・同大学院教授、法政大学大学院政策創造研究科教授、法政大学大学院静岡サテライトキャンパス長等を歴任。ほかに、「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞審査委員長等、国・県・市町村の公務も多数務める。専門は、中小企業経営論、地域経済論、地域産業論。これまでに8,000社以上の企業等を訪問し、調査・アドバイスを行う。