東京駅から中央線に乗り30分ほど走った三鷹駅で下車し、そこから車で5分ほどの住宅街の一角に、グッディーホームという社名の会社があります。
外から見ると、まるで素敵な喫茶店のような雰囲気が漂う本社です。こうしたこともあり、時々、喫茶店と間違えて事務所に入ってくる人もいるそうです。
同社の主事業は、住宅のリフォームです。創業は今から18年前の2004年、現経営者である卯月靖也さんが11年間の住宅関連産業のサラリーマン生活にピリオドを打ち、3人でスタートしています。
創業のきっかけは、既に独立し、住宅リフォーム会社を立ち上げていた、かつての職場の上司の影響やアドバイスが大きかったといいます。余談ですが、かつての上司とは、今やリフォーム業界では著名であり、モデルと言われている横浜の「さくら住宅」の会長の二宮生憲さんです。
創業以来、順調に業績を伸ばし、現在では、本社を含め、武蔵野エリアに4店舗を持ち、社員数は役員を含め40名を超えるまでに成長発展をしています。
同社の成長発展の要因は多々ありますが、ここでは3点に絞り述べます。
第1は、社員第一主義経営の実践です。卯月さんは、サラリーマン時代の自らの体験を踏まえ、自分が嫌なこと、できないことを決して社員に求めず、逆に自分が社員だったら、やって欲しいこと、言って欲しいことを、徹底し少しずつ実践してきました。
例えば、自らの公私区分経営を徹底するとともに、月次決算者の全社員への公開や、その内容の丁寧な説明、一人一人の社員との時間をかけた個別面談の実施です。
さらに言えば、近年言われている働き方改革にも、はるか以前から取り組んでおり、同社の働き方は社員の数だけ用意しているのです。
こうしたこともあり、業界の大半の企業は、慢性的人財不足に加え、10%以上という高い離職率に苦しんでいますが、同社には多くの学生が集まってくるばかりか、その離職率はなんと2%以下なのです。
第2は、徹底した顧客満足度を高める経営です。同社の経営の特長は、顧客の新規開拓ではなく、徹底した既存客重視の経営です。こうしたこともあり、同社のリピーター率は、業界の平均をはるか上回るばかりか、毎年行っている「顧客満足度調査」を見ると「満足」と回答した施主が、何とありえないレベルの99%なのです。
同社の事務所には、まるで自分の親戚のように気軽に立ち寄り、コーヒーを飲んだり、よもやま話をして帰っていく顧客も多い。加えて言えば、その方々からの紹介客も極めて多いのです。
先日、卯月社長から、ある施主からいただいた手紙を見せていただいた。一文を紹介すると「グッディーホームのある、この街に住んでいたことは、本当にラッキーな人生だった…」と、書いてありました。グッディーホームの経営の考え方ばかりか、サービスのレベルが良くわかります。
第3は、協力業者への配慮です。リフォーム業界は、その作業をすべて自社だけで行うことは当然困難で、様々な専門業者の力を借りることになります。同社はこうした協力業者に対しても正しい取引が貫かれていると思います。
例えば、協力業者から上がってくる見積書を1円もカットしないばかりか、資金繰りが大変な業者へは代金を前払いすることもあります。同社の会社の案内を見ると、40人以上の協力業者が一人一人、顔写真入りで掲載されているのです。まさに対等な仲間・なくてはならない存在として称えていることが良くわかります。
リフォーム業界だけではなく、多くの中小企業に学んでほしい中小企業です。
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筆者紹介
- アタックスグループ 顧問
経営学者・元法政大学大学院教授・人を大切にする経営学会会長 坂本 光司(さかもとこうじ) - 1947年 静岡県生まれ。静岡文化芸術大学文化政策学部・同大学院教授、法政大学大学院政策創造研究科教授、法政大学大学院静岡サテライトキャンパス長等を歴任。ほかに、「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞審査委員長等、国・県・市町村の公務も多数務める。専門は、中小企業経営論、地域経済論、地域産業論。これまでに8,000社以上の企業等を訪問し、調査・アドバイスを行う。