組織や人財の面で変化が求められる
1月23日の日本経済新聞に、実質賃金をプラスにするために必要な賃上げは3.6%が焦点という記事が出ていました。
※実質賃金プラス…物価上昇率を超えて賃金がプラスになる水準
2024年も物価上昇、賃上げが大きなキーワードとなっています。
そして企業は必然的に「変化」を迫られています。
原価アップに伴う価格転嫁(値上げ)もそうですが、ビジネスモデル、組織や人財といった、より根本的かつ一朝一夕では変わらないものに対する変化が生き残りのためには求められています。
本項では、組織や人財に焦点をあて、「技(ぎ)」「理(り)」「情(じょう)」の3つの軸で、改善のポイントを整理します。
技(ぎ)・理(り)・情(じょう)とは?
まずはこの3つの軸が何を指すか説明します。
3つの軸を向上させる手法
個人や組織の力として、この3つの要素は相互に関連してパフォーマンスを生み出しています。
では、3つの軸を向上させる手法について説明します。
これらの3つの軸の力を向上のしやすさとしては、技(ぎ) > 理(り) > 情(じょう)の順番であると捉えています。
形式知化やしくみ化のしやすさと言い換えることもできます。
技(ぎ)
知識はOFF-JTで書籍や研修により学ぶことができます。
技能はマニュアルやOJTで学ぶことができます。
暗黙知化されたノウハウの形式知化や伝承というのは、ハードルが高いテーマではありますが、どの企業も技(ぎ)の教育には力を入れている、入れようとされているのではないでしょうか。
理(り)
この力が高い人財≒仕事のできるヒトと感じる方も多いかと思います。
ロジカルな人は元からロジカルだし、後天的に伸びる力ではないのでは?という声も耳にします。
結論から言えば、後天的にでも教育(Off-JT、OJT)で伸びる力です。
技(ぎ)が形式知化されたものから習得が可能なように、理(り)も論的に考えるための型というものが形式知化されています。
型を学び、実践することで一定水準は伸びるものです。
Off-JTで言えば、ロジカルシンキングやクリティカルシンキングといった分野が各種研修機関やMBAで体系化されています。
OJTで言えば、仕事の段取りを組む、会社の問題点に対するなぜなぜ分析をする、QCサークルを実施する等、日常的な場に訓練の場は存在しています。
筆者がロジカルシンキングを体系的に学んだ際の先生の言葉の中で、「ロジック3割、感情7割」という言葉が印象に残っています。
ロジカルであることは武器にもなりますが、そこに情がないと冷たい刃物になってしまうという点は付け加えておきます。
情(じょう)
情(じょう)の力が最も認識しづらい力です。
なぜなら、形式知化が難しい要素だからです。
組織として「変化」が求められる現在、個人の集合体である組織・チームとしての情(じょう)の成熟度によって、スピード感や各種施策の実現可能性に大きな影響を及ぼします。
情(じょう)は、会社の理念やあり方によって、求められる要素も多様なものになるため、打ち手も個人レベルではなく、組織レベルで取り組みを進めて行くことが必要です。
例えば、
・経営計画を幹部と一緒に作りあげてベクトルを合わせること
・社員相互の良さを知り、弱さを補うチームビルディングに取り組むこと
といった、一見効果が見えにくいモノゴトに対する取り組みの重要性を近年より強く感じます。
国の制度を有効的に活用すべき
国の制度としても、人材開発支援助成金をはじめとした助成金の取り組みが強化されています。
個人としても組織としても変化が求められる時代の中で、「技(ぎ)」「理(り)」「情(じょう)」の3軸で人財育成、組織力強化を考えてみてはいかがでしょうか。
筆者紹介
- 株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティング 取締役
中小企業診断士 平井 啓介 - 業務系システムを扱う大手システムベンダーを経てアタックス入社。 システムエンジニア時代は、会計システムを中心に、中堅中小企業~上場企業まで業種を問わず、約60社の業務改革を支援。システム企画~導入・運用支援まで、プロジェクトマネジメントのみならず、現場の実態を理解したうえでのサポートを得意とする。アタックス参画後は、システムエンジニア時代に得たITスキル、ロジカルシンキングスキルを応用し、業績管理制度構築サポート、業務プロセス改革サポート(BPR)、事業再生サポートに従事。経営者、管理部門責任者の相談相手に注力している。
- 平井啓介の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。