「男性の職場」というイメージが強い物流業の中で、宅配便業界首位のヤマトホールディングス(HD)は、従業員に占める女性社員の比率が、既に3割に達しているという。
更に、宅配便第2位の佐川急便を傘下に持つSGホールディングス(HD)が、2012年度から3年間で女性社員を新規に1万人採用し、ヤマトHDに追随する形で、現在の2割から3割に引き上げるという方針を打ち出した。
これで、宅配便取扱個数で両者合わせて8割のシェアを占める業界2強が、女性活用でも競うことになる。
厚労省から発表された「働く女性の実情」の統計結果によると、平成22年の雇用者数は、女性は、2,329万人となり、前年に比べて18万人増加し、過去最多となった。男性は、3,133万人と16万人減少し3年連続の減少、結果、雇用者総数に占める女性の割合が、過去最高の42.6%となり3年連続上昇の傾向にある。
特に、有配偶者の就業率が高まっており、これは、育児・介護と仕事の両立可能な環境が、国・企業によって整いつつあることを現している。
SGHDの動きや、統計データからも分かるように、少子化による「労働者人口の減少」という課題を前に、女性の労働力に対する企業の期待は、今後ますます高まっていくであろう。しかし、頭数を揃えることに主眼を置き、男性が採れないから女性をというのではあまりにも能がない。女性社員ならではの特性をどう活かしていくのかという採用後の戦略が不可欠である。
例えば、商品・サービスの競争力には、商品の品質・価格・ブランド力等あるが、これらの要素が競合他社と拮抗している場合、最後は、「商品の提供の仕方」が決め手となる。具体的には、「懇切丁寧な対応をしてくれる」「話をよく聞いてくれる」「対応がきめ細かくて安心できる」である。
これらはすべて、「社員の対応力」であり、この点は、男性よりどちらかと言えば女性の方が適している。現にSGHDは、単身世帯の増加により、「女性の配達員の方が安心」という独身女性のニーズに応え、採用した女性社員を、都市部の即戦力として活用する考えである。
今後企業は、「女性の労働力」を、頭数ではなく、生活スタイルの変化、顧客の求めるニーズの変化の中で、新たな企業競争力の一つとして位置づけることが必要である。
しかしそこに至るには、女性自身の働く意識、組織の中でのキャリア形成の道筋、教育の機会等、取り組まなくてはならない課題も多い。
経営者の皆様には、来たるべき「労働者人口の減少」に備え、これからの時代を見据えた採用戦略、人材活用戦略に、是非とも知恵を絞って頂きたい。
<参考記事>
「女性1万人 佐川が採用~従業員の3割に 都市部の即戦力~」
2011年10月22日(土)日本経済新聞 夕刊
筆者紹介
- 株式会社アタックス 執行役員 中小企業診断士 北村 信貴子
- 1963年生まれ。中小企業診断士、産業カウンセラー、BCS認定ビジネスコーチ。大手食品メーカー勤務後、アタックス入社。中堅中小企業を対象に経営診断や人事制度設計運用・人材育成業務に従事。現在は、後継者育成、管理者教育、女性リーダー育成を中心に実践型の教育訓練・能力開発に特に注力。講演・セミナー実績多数。受講者との対話を通じて理解を深めていく迫力ある指導には定評がある。
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