海外難民・国内避難民の視力支援 -株式会社富士メガネ

経営

西浦道明のメルマガ 2024年4月

2014年から、当メルマガでは自社独自の「池(市場)」を見つけ出し、その池の「クジラ(圧倒的なシェア・ナンバーワン)」となった結果、高収益を獲得・維持している中堅中小企業をご紹介している。

連載116回目の今回は、北海道札幌市中央区に本社を置き、札幌並びに北海道内を中心に、眼鏡、サングラス、補聴器、弱視眼鏡、光学機器の販売ならびに加工・修理を行う株式会社富士メガネ(以下、F社)の池クジラぶりを見ていきたい。

F社は、1939年、創始者の金井武雄氏(以下、K氏)が、樺太(現サハリン)で、F社の前身「富士眼鏡商会」を設立した。

わずか4坪半の小さな店であったが、自らウィンドウや看板をつけ、外装を整え、上品で風格のある店構えに作り上げた。

また、永遠に力強く、富士山のような富貴な名前にしたいという思いを込め、「富士眼鏡商会」と命名した。

その後、終戦をきっかけに、日本に戻り、1946年1月8日に、当時、札幌を代表する商店街で、北海道で店を経営しようとする人たちの憧れの地でもあった狸小路商店街に店を設け、再出発をした。

来店するお客様の多くは、戦時中に破損したままになっていたレンズ1枚、ツル1本の修理のための来店だった。

他の店では、1枚のレンズの入れ替えは快くは引き受けていなかったが、富士眼鏡店では、お客様の求めに応じて、どのような仕事もこなした。

そして樺太時代と同じように、簡単な修理は無料とし、利益の確保を優先させなかった。

それゆえ、売り上げは思うように上がらなかったが、親切丁寧な対応が評判になり、急速にお客様が増えていった。

その後K氏の思いは、世界での視力支援の構想へと広がった。

この思いは後継者の米国オプトメトリスト金井昭雄ドクターに引き継がれ、F社が創業45周年を迎えた1983年から海外難民視力支援活動が開始された。

それは、F氏が「モノが見えることで、人生を助けることもできる」と口癖のように言っていたこと。

そして「これまでに様々な方から受けたご恩をお返ししたい」という強い思いがあったから。

タイやネパール、アルメニア、アゼルバイジャンなど海外の難民キャンプを訪問し、一人ひとりの視力を検査して最適なメガネを寄贈する活動を通して、難民や国内避難民の自立や生活の質向上に向けた支援を40年以上行っている。

ちなみに、これまでに活動した社員は延べ201名、寄贈した新しいメガネの総数は181,545組に達している。

さらに、厚生省援護局(当時)の要請により、1987年から毎年、肉親調査のために日本を訪れる中国残留日本人孤児のために日本滞在中の宿舎に出向いて視力の確認をし、一人ひとりに最適の眼鏡を寄贈してきた。

最終的には第31回まで継続され、検査総数は869名。
寄贈眼鏡数は931組になった。

それらの取り組みは高く評価され、2006年には、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)との長年の協力関係に基づく海外難民視力支援活動が評価され、F社を後継した現会長・社長兼任の金井昭雄ドクターが、「ナンセン難民賞」を日本人として初めて受賞した。

これは、「難民支援のノーベル賞」とも言われ、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)より授与された。

この活動を可能にするのが、F社の志と技術力の高さである。

「よく見えて、疲れにくく、よく似合うメガネ」をつくるには、たくさんの複雑なプロセスを重ねる必要がある。

そのため、F社には、日本ではまだ公的な資格にはなっていないが、欧米など世界45ヶ国では医師に匹敵する国家資格とされている眼科学と光学に渡る総合的な学問で学位を得たオプトメトリスト(検眼医)が3名在籍している。

また、2022年に厚生労働大臣から新たに認可された日本唯一の眼鏡に関する国家資格「眼鏡作製技能士」に関して、F社では264名がその資格を取得し、目とメガネの専門家として国からお墨付きを得ている。

F社は、一人ひとりの視力の状態とライフスタイルを考慮し、最適なレンズとフレームを正しく選んでフィッティングしてきた。

アフターケアはもちろん、視力の変化や健康との関係も踏まえたアドバイスをすることで、地域のお客様から高い評価・信頼を得てきた。

ただ、それに留まらず、海外難民・国内避難民の、視力に悩みを抱える方たちに対して日々の生活と将来に希望を与えるという支援活動に大変な尽力をして、海外難民・国内避難民の視力支援活動(池)のクジラとなっている。

  
  
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筆者紹介

西浦道明

アタックスグループ 代表パートナー
公認会計士 税理士 西浦 道明(にしうらみちあき)
1981年、株式会社アタックスを創業。中堅中小企業の経営の専門家として「社長の最良の相談相手」をモットーにしている。
東京・名古屋・大阪・静岡・仙台を拠点に、中堅中小企業の総合的なご支援に力を注ぎ、約200名のコンサルタントとともに日本に「強くて愛される会社」を一社でも多く増やすために汗をかく。

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