2024年も残りわずかとなりました。
毎年12月に公益財団法人日本生産性本部より「労働生産性の国際比較」が発表され、昨年は日本の労働生産性(時間当たり及び就業者一人当たり)の国際的位置づけと併せ、コロナ禍での労働生産性の変化も報告されました。
▶参考:公益財団法人日本生産性本部HP
OECD データに基づく2022 年の日本の時間当たり労働生産性(就業1時間当たり付加価値)は、52.3ドル(5,099 円)で、OECD 加盟38カ国中30位。
また就業者一人当たり労働生産性では、85,329 ドル(833万円)で31 位と、データ比較が可能な1970年以降で最も低い水準でした。
まもなく発表されるコロナ禍を経た2023年の数値においても大きな改善は見られないでしょう。
伸び悩む営業組織の根本的な原因
私の所属するアタックス・セールス・アソシエイツは、企業の現場に入り目標達成を支援する会社です。
日本の生産性が伸び悩む中、我々の支援先はコロナ禍の2019年から2022年の間においても売上2.1倍、利益4.8倍のメーカーをはじめ、特定の取引先との関係に依存することが多い地域商社においても売上1.4倍、利益2倍など、多数の支援先が大きな成長を遂げています。
もちろん、全ての支援先がすぐにこのような大きな成長を遂げる訳ではありません。
コロナ禍のような極めて大きな環境変化に直面してもなお、これまでの顧客や商材に頼ったまま、考え方や行動を変えず、緩やかに状況を悪化させている営業組織は少なくありません。
これまで規模の大小、業界業種問わず、15年以上、様々な営業組織の指導にあたってきました。
そのなかで、過去の営業スタイルに固執し、攻めに転じることが出来ない営業組織のマネージャーに共通する特徴があることがわかってきました。
今回はその中から代表的な3つをご紹介します。
2.時間管理をしない
3.自分の言葉で語らない
特徴1:目標が経営とずれている
どんな営業組織でもマネージャーが表立って「社長が言う3年後に売上2倍など、営業は誰も追っていませんよ!」と、直接社長に言う人は当然ながらほとんどいません。
しかし、実際に口にしなくとも3年後の売上2倍にむけて新たな顧客、新たな商材の開拓を部下に「させ続けている」営業マネージャーはどのくらいいるでしょうか。
市場調査やリストアップなどの社内での準備作業を行い、1回2回顧客にアプローチする程度まで、あとは目先の仕事の忙しさを理由に放置している事がほとんどです。
このような営業マネージャーの口癖は「まずは今の売上を確保することを優先します」です。
社長からすれば当然「今はもちろんだが、先もだろ!」と言いたくなるでしょう。
どんなに良い選手がそろっていても、監督とコーチで目指すところが違うチームでは勝てません。
特徴2:時間管理をしない
次に挙げるのは口を開けば「忙しくて新しい取組みをする暇がどこにあるのですか!」と言う営業マネージャーです。
先々まで成果につながる仕事を仕込んでいて忙しいなら結構な話ですが、このような発言をする営業マネージャーの多くは、文字通り目先の仕事に忙殺されています。
このような営業マネージャーはほぼ間違いなく部下の「時間管理」が出来ていません。
時間管理には2つの要素が必要です。
一つは、成果につながる仕事の総量を具体化していること。
もう一つは、その仕事を具体的な行動に分解して時間とセットで部下に示し、後追いしていること、です。
「忙しい」が口癖のマネージャーは、このどちらも出来ていません。
自分自身が環境や顧客に反応して感覚で成果を出してきたことが大きな要因の一つとなっています。
これまで目の前の事を反射的にこなしてきただけなので、発生していない未来のことについては反応しようがなく、今に執着しがちです。
特徴3:自分の言葉で語らない
「本社からの通達だから、これやっておくように」
「社長が『やれ』って言っているのだから、やらないとしょうがないだろう」
このように何か取り組むときに、その責任を常に他の誰かに置き「自分の言葉」で語ることが出来ない営業マネージャーも、組織を攻めに転じさせることはできません。
人間は他人の言葉で動きたくありません。
しかし、目の前の人間が自身の責任と判断のもと情熱を込め、まっすぐ目を見て語り掛けたときは例外です。
目の前の人間の「本気の言葉」に人は感化されます。
部下はもちろん、営業であればお客様でも同じです。
私は多くの営業組織を再生させてきましたが、攻めに転じて勝ち続ける組織になるときは仕組みや手法だけではなく、必ず営業マネージャーが自分の言葉で組織に語る、という要素が必要となります。
伝書バトの言う事に動かされる者などいません。
いかなる目標や方針であったとしても、それを達成することで自分たちがどのような成長が出来、お客様にどのような貢献が出来るのか、言葉を練り上げ伝えることが不可欠なのです。(ここでは割愛しますが、自分の言葉で語れない営業マネージャーの多くは本を読む習慣がなく、人の話を聞くときにメモを取りません)
最後に
企業が変わるときに率先して変わるべきなのは、お客様に相対する営業組織、そしてその長たる営業マネージャーです。
今回は、現状維持に甘んじ、攻めに転じない営業マネージャーの特徴の中から代表的な3つをご紹介しました。
厳しい変化の時代においても組織の力で売上利益を伸ばす組織をつくるためには、小手先の手法や道具ではなく、これら組織の中にいる人間の考え方の習慣や、行動の習慣こそ、見つめなければなりません。
筆者紹介
- 株式会社アタックス・セールス・アソシエイツ 取締役副社長 桑原 賢一
- 1999年 同志社大学卒。大手化粧品メーカーにて、経営指導から現場販売員の指導育成に携わり、延べ100名以上のトップセールスの育成実績をもつ。アタックス参画後は、上場企業の営業戦略構築、小規模企業の営業組織に対しての直接指導、営業職の個別指導等にあたっている。コンサルティング支援における行動変革率は100%を誇る。
- 桑原賢一の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。