2024年版「中小企業白書」によると、中小企業の業況判断DIは約30年ぶりの高水準に回復し、設備投資が伸びている兆候が見られるとのことです。
▶参考:2024年版中小企業白書
企業の人手不足が顕在化しており、これらを解決するために中小企業の生産性の引き上げが必要ですが、その解決策の一つとして足許では投資意欲が拡大しつつあるようです。
人手不足対応の設備投資とその可能性
また、同白書内では、“直近5年間の人手不足対応を目的とした設備投資の実施有無”に関するアンケートにおいて、以下の図の通り回答しています。
引用:中小企業庁HP「中小企業白書2024」第2部 第1章 第3節(https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2024/chusho/b2_1_3.html)
また、“売上高・経常利益の変化率(人手不足対応を目的とした設備投資の実施有無別、中央値)”のアンケートでは、以下のような結果となっています。
「実施していない」=△1.8%
「実施していない」=27.6%
これを見ると、「実施した」と回答した企業では、「実施していない」と回答した企業に比べ、売上高・経常利益共に増加という結果になっています。
一概には言えませんが、人手不足対応を目的とした設備投資の実施が、業績の向上に寄与している可能性が示唆されています。
これらの結果から、設備投資の検討は今後も有効な経営改善手段として重要な位置づけであることは変わりありません。
以下では、設備投資を成功させるためのポイントを解説します。
課題を明確に。設備投資は目的ではなく手段
設備投資は目的ではなく手段です。
従って、まずは“何を解決したいのか”という投資目的を明確にしておく必要があります。
よくある失敗は「補助金があるから何か使えないか」という点から検討が始まり、手段が目的化するパターンです。
2021年に「事業再構築補助金」という大型補助金ができましたが、上記の傾向が顕著に表れた良い例ではないでしょうか。
補助金活用を薦める業者にうまく乗せられているケースを見かけることがありますが、本当にその投資が必要なのか、他に解決手段はないのか、など冷静に判断する必要があります。
投資対効果はシビアに見る
次のステップでは投資対効果を緻密にシミュレーションをする必要があります。
投資額(イニシャルコスト・ランニングコスト)とそこから得られる改善効果を天秤にかけ、理論上、何年で投資が回収できるか、どの程度業績へ貢献するのかを見ていきます。
複数案あればそれらを比較し、最も効果的な解決手段を選ばなければなりません。
ここでのポイントは、客観的な視点から効果の蓋然性を検証し、数値をある程度保守的に見積もったりすることです。
補助金が絡む場合、交付申請を意識してか、数値計画が楽観的になるケースがあるので注意が必要です。
また経営判断として投資を実行することが先に決まっており、シミュレーションが可否判断として機能していないケースも見かけます。
加えて、投資が失敗するケースを想定していないケースも散見されます。
想定よりうまくいかなかったときにどれくらいマイナスのインパクトがあるのか、どのような状況になれば撤退を意思決定するかを、事前にしっかりシミュレーションを行い、投資の可否判断に加えるべきと思います。
キャッシュ・フロー計画(資金繰り計画)を策定する
最後に資金繰り計画の立案、検討です。
投資をするからにはキャッシュアウトが先に来るのが常です。
補助金を活用するにも、一旦、投資全額を会社が負担し、投資完了後に補助金が交付されるケースが多く、月次の資金繰りでは“つなぎ資金”の検討も必要となります。
借入で投資を行う場合は、数年間のキャッシュ・フロー計画を策定することで、投資を実行した後の資金繰り予想を見ておく必要があります。
キャッシュ・フロー計画も、うまくいったパターンとうまくいかなかったパターンの複数案を策定し、致命的な失敗にならないよう綿密にシミュレーションをする必要があります。
このとおり設備投資は“計画経営”そのものであり、十分な検討がなされて決定されるべきです。
ここまで投資の可否判断のポイントについて述べましたが、もう1点、投資の成否を分ける重要なポイントを以下に記載します。
プロジェクトチームを立ち上げて社員を巻き込んだものに
設備投資を成功させるためには、投資の内容そのもののみならず、実行フェーズが重要と言えます。
設備を実際に使用するのは現場の社員だからです。
設備投資の目的・狙いの周知に始まり、現場責任者・担当者の選任、導入スケジュールの進捗管理、効果測定などは現場の社員を巻き込んでプロジェクトチームを組成して進めていくのが良いと思います。
特に投資の検討フェーズから参画させれば、現場の意見を取り入れることもでき、また担当者にも当事者意識を持ってもらうのに効果的です。
補助金コンサルとは異なる外部専門家の活用メリット
当社も伴走支援の一環で、クライアントが設備投資を検討する際に、その可否判断を一緒に考えることが多々あります。
これまで見てきたポイントを社内で完結できるなら良いですが、それが難しければ外部専門家を活用することも検討していただきたいと思います。
メリットは以下の通りです。
1.効果の蓋然性や数値計画を客観的かつシビアに見ることができる
経営陣に忖度なく、客観的な視点でその投資が費用に見合うものかどうか、リスクの度合いがどれくらいかを助言できます。
経営陣にNOと言えるのが外部専門家の強みです。
2.財務計画の策定支援ができる
財務のプロとして資金繰り計画のみならず、損益計算書計画、貸借対照表計画、キャッシュ・フロー計算書計画等に落とし込むことができます。
社内の検討にも社外への説明にも活用できる資料作成のお手伝いが可能です。
3.プロジェクトチームの運営支援ができる
プロジェクト運営に不慣れな社員が多くても、専門家がファシリテーションしながら、投資実行から効果創出までポイントを押さえながら推進します。
プロジェクト運営に不慣れな場合でも、外部を活用することにより着実な設備投資の実行支援が可能になります。
以上の通り、客観的な目線で助言ができ、推進までお役に立てるのが外部専門家活用の最大のメリットです。
株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティングは、“社長の最良の相談相手”として課題解決のためのご支援を行っています。
社長の頼れる右腕として、ぜひお気軽にご相談ください。
筆者紹介
- 株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティング 執行役員 三阪 昌広
- 組織開発・人材育成のコンサルティング会社を経て、2016年アタックスに参画。以後、企業再生支援、財務・事業デューデリジェンス、経営計画策定支援、管理制度構築支援、組織開発支援、経営顧問業務等に従事。「ヒト・組織を動かす」ことをモットーに、クライアント経営者と一丸となって経営改善を遂行するプロジェクトマネージャーとして活躍中。
- 三阪 昌広の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。