団塊の世代にあたる現経営者が60歳代半ばとなり、後継者への事業承継がいよいよ本格的に始まったのでしょうか、昨今、ご紹介やセミナー後の無料相談などで、自社株について悩んでおられるオーナー経営者の方とお目にかかる機会が増えてきています。
その際、まずは自社株の常識として、「経営権確保のためのシェア」や「利益と株価の関係」「自社株の移転先、移転方法と株価の関係」などのお話しから始めるようにしています。
税務上問題なく安価で移転できる先に自社株を移転してしまうと経営権の問題が発生してしまったり、その後、後継者が分散した自社株を集約するのに四苦八苦することとなってしまったりなど、自社株は将来を見据えながら慎重に取り扱わなければならない財産であり、対策を検討する際には、オーナー経営者として最低限、知っておいて頂きたいことを共有しておくと、望ましい方向性を一緒に検討することができるからです。
今回はこの自社株の常識のうち、株価について触れたいと思います。
オーナー家の悩みの大半は、自社株が高いことや、現金化することができず、後継者に承継しようにも贈与税や相続税などの承継コストが多額にかかってしまうということです。
このようなとき、私は次のようなお話しをしています。
『利益が出れば株価は上がります。』
特別な場合を除き、利益が出ると株価は上がり、赤字になれば株価は下がることになります。しかし、株価を下げるために会社を赤字にする、これは経営者としてやってはいけないことだと思います。
ただ、リーマンショックや東北震災などの外部要因で一時的に会社が赤字となることがあります。会社がたいへんな時期に経営以外のことを考える、ということは難しいのでしょうが、自社株の承継としては絶好のタイミングとなります。
『株価が0円となる裏技はありません。株価がいくらまで下がればよいですか?』
稀に株価が0円となるケースも無いことはないのですが、株価を0円にする策は基本的にはありません。ではいったいいくらまで株価が下がればよいのでしょうか。
自社株も財産のひとつであり、原則現金一括納付である相続税を今の財産で支払うことができるのか、ということが最初の判断基準ではないかと思います。仮に相続が発生した場合でも相続税を支払えるだけの現金などがあれば、まずは一安心、ということです。当然、その後の相続人の生活資金も考えておかなければならないのですが。
株価対策はあくまで相続対策(先述の「納税資金」と特例を適用するためなど「財産分割」、「相続税の引き下げ」)のひとつとして捉えるべきであると思います。例えば株価引き下げが難しくても、他の方法で相続税が下がるのであれば目的達成、と言えるのではないでしょうか。
オーナー家にとっては、自社株承継のタイミングを逃さないようにするため、また、相続対策としての株価対策を検討するためにも、株価を毎年算定し把握することが自社株対策の第一歩であると思います。
自社株の扱いについては、下記の特別レポートでさらに詳しく解説しています。(無料レポート)
筆者紹介
- アタックス税理士法人 社員 税理士 村井 克行
- 1987年 南山大学卒。「会計税務の知の集結と事例の体系化」を確立すべく立ち上げた「ナレッジセンター室長」を務めた後、現在は、組織再編や相続対策など、最新の税法・会社法の知識を生かした永続企業のための総合的な支援業務に従事。誠実で緻密な仕事ぶりは多くのオーナー経営者から高い評価を得ている。
- 村井克行の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。