最近「売上は増加しているが利益は思ったほど増加しない」という相談を受けることが多くなってきました。その要因を分析してみると、販売価格の設定に問題がある場合がほとんどです。
今や、多くの企業において、自社が希望する価格での販売は困難であり、取引先から言われた価格や競合他社との値引き競争で販売価格の決定が行われる場合が多いのが現実となっています。
しかし、個別の取引毎に利益を残すことができなければ、売上は増加しても利益は増加しないため、以下の3点に注意して販売価格を設定することが必要になります。
1.実質の販売価格を把握する。
過去の経験から申し上げると、全売上の内、自社が定めた定価どおりに売られた商品が何割程度あるかを正確に把握している会社はほとんどありません。
一般的には、定価から数量割引・競合割引等の値引きが行われているのが実態であり、これらの値引き額=利益額の減少となりますので、自社の実質販売価格の把握が重要となります。
2.値引き要請があった場合、必要利益を確保する具体策を明確にする。
例えば、100円で販売している商品を競合他社との関係から1割値引き、販売価格を90円とした場合、この値引き額の10円は利益が減少することとなります。仕入価格が80円であった場合、現状の20円の利益を獲得するには、2倍の販売量が必要になりますが、それが可能かどうかを検討する必要があります。
3.新商品等を販売する場合の価格は、全ての経費を計算した上で決定する。
経費には、その商品等を仕入れるために必要な直接的な経費の他に、事務所経費などの間接的な経費も含まれます。
利益を残すには、それらの全ての経費を漏れなく計算した金額よりも高い販売価格とする必要があります。
販売価格の設定は、利益に大きな影響を与えるものです。
外食業界で好調な日本マクドナルドホールディングスは低価格商品のイメージが強いのですが、過去8年で商品価格を25%引き上げており、確実に利益を上げながら売上増を実現しています。
今後、企業が利益ある成長を実現していくためには、「利益が残る適正な販売価格」の実現が不可欠です。
筆者紹介
- 株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティング 取締役 錦見 直樹
- 1987年 富山大学卒。月次決算制度を中心とした業績管理制度の構築や経理に関する業務改善指導を中心としたコンサルティング業務に従事。グループ7社を有す中小企業の経理・経営企画部門出向中に培った豊富な経理実務経験を武器に、経営者、経理責任者の参謀役として活躍中。
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