何が組織を腐らせるのか!~古典的理論に学ぶ組織活性化策

人材育成

「全社方針が現場までなかなか浸透しない」
「職場に活気がみられない」
「コミュニケーションが悪く、情報共有できていない」

企業規模、業種を問わず、経営者や幹部から最近このような悩みをよくお聞きします。そもそも組織は、一人では不可能なことを成し遂げるために存在します。しかし、規模が拡大していくと徐々に動きが鈍くなり、活力が失われるという性質をもっていることも確かなようです。

どうすれば、組織の活力を維持することができるのでしょうか。“活き活き職場”を創造し、組織の持つ力を最大限に発揮するためのヒントを、改めて古典的な理論からひも解きます。

「活気があり、社員の動きにスピードがある会社」
「社員が無表情で暗く、停滞ムードが漂う会社」
など、会社の持つ雰囲気は、たとえ組織論の専門家でなくても、その空間に一歩足を踏み入れただけで、簡単に見抜けるものです。

この組織風土、組織が人間の集まりであることを考えると、社員一人ひとりの思考や行動習慣がそれを形成していると言ってもよいでしょう。 つまり組織の活性化を突き詰めていくと、社員一人ひとりの“やる気”にたどりつきます。

しかし現在は、「働く目的」や「働き方」に対する価値観が多様化する中で、“やる気”の源泉が見えにくくなっていることも事実です。 そんな時代だからこそ、改めて「人間に対する理解」が必要ではないかと思います。

「生産性に影響を及ぼす条件は何か」
「ひとの“やる気”の源泉は何か」
「ひとは何によって、動機づけられるのか」

やる気の源泉とは何なのか?

産業革命以降、長年にわたりこの問いに対する研究に多くの学者が取り組んできました。 臨床心理学者のハーズバーグは、アメリカのピッツバーグで200人を超える技師と会計士を対象に面接を行い、「やる気を左右する要因」についてインタビューを行いました。 その結論が、1959年に発表された「動機づけ・衛生理論(ハーズバーグ理論)」です。

(1)経営方針
(2)人間関係
(3)雇用条件(給与)
(4)職場環境(作業条件)
といった要因が不明確、低水準だと、社員の不満が増大するが、逆にそれらが充足したからといって、“やる気”が持続、増大するわけではない。

一方、
(1)成長の手ごたえ
(2)成果が認められる
(3)興味深い仕事
(4)価値や責任ある仕事への挑戦の機会
といった要因は、充足すればするほど、“やる気”が持続、増大すると結論づけました。

前者を、「衛生要因」、後者を「動機づけ要因」といいます。 「衛生要因」を遜色ない水準に引き上げるための経営努力は必要です。しかしそれは、不満足を解消するだけに過ぎません。 「動機づけ要因」の増大こそが大切であり、それは現場の管理職が鍵を握っているといってもよいでしょう。

「動機づけ要因」を増大させるには?

つまり、日常の仕事を通じて管理職が部下にレベルの高い仕事に挑戦できる機会と環境を作っていく、そしてその成果を認めることこそが、組織活性化の第一歩であるといえます。 多くの企業が、「目標管理制度」の導入に合わせて、「目標設定面談」や「フィードバック面談」をおこなっています。 しかし、面談スキルが稚拙なために形式的な運用にとどまり、部下のやる気を返って削いでしまうことに悩む企業も少なくありません。

しかし、ハーズバーグ理論に学ぶならば、「面談」は部下の成長のために目標を与え、どれだけ成長したかを確かめ承認し、更なる成長に向けて目標を考える「場」であるという認識に立つことが大切です。 そのためには、面談を管理職任せにするのではなく、面談スキルのトレーニングをしっかり行った上で、管理職本人が自信をもって面談に臨めるよう教育することが必要です。

社員の“やる気向上”には、管理職が重要な役割を果たすことを述べました。 これをさらに組織の活性化に発展させるには何が必要でしょうか。組織は役割関係で成り立っており、相互協力や情報共有が大切なことは理屈の上では理解しています。 しかし、現実には情報が滞り、組織としての力を発揮できない状況に陥っているケースが見受けられます。

これらを解消する方法として、部門の垣根、階層の垣根を超えた「共同体験」の場作りをおすすめします。 「問題解決型プロジェクト発足」「教育研修の機会」「レクリエーションの開催」などを通じて体験を共有することで相互に理解しあい人間関係を深めていくのです。

それによって、仕事の上でも抵抗なくコミュニケーションがとれるようになり協力関係が築けるようになります。 組織の成り立ちは、企業によって十社十通りです。

しかし、人間の本質は時代が変化しても変わることはありません。「社員一人ひとり」を活かし、さらに「社員と社員」のつながりを強化することが、組織を活性化させる基本だと思います。

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筆者紹介

アタックスグループ パートナー
株式会社アタックス・ヒューマン・コンサルティング 代表取締役
中小企業診断士 北村 信貴子
1963年生まれ。中小企業診断士、産業カウンセラー、BCS認定ビジネスコーチ。大手食品メーカー勤務後、アタックス入社。中堅中小企業を対象に経営診断や人事制度設計運用・人材育成業務に従事。現在は、後継者育成、管理者教育、女性リーダー育成を中心に実践型の教育訓練・能力開発に特に注力。講演・セミナー実績多数。受講者との対話を通じて理解を深めていく迫力ある指導には定評がある。
北村信貴子の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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