一時期落ち着きを見せたコロナ騒動ですが、ここに来て東京を中心にまた増加傾向の様相を呈しています。
経営者は社員の皆さまのお体を守りながらビジネスを進めるという難しい対応になりますが、全社で知恵を出しながら前向きに活動して頂きたいと思っております。
経営で重要視する「付加価値」とは?
先日、初対面の経営者(後継者)の方とお話しする機会を頂きました。その時の会話をご紹介しながら、付加価値について改めて考えてみます。
決算書を三期分拝見しながらお話しする中で、こんな質問をさせて頂きました。
「3期の中で、直近期の付加価値率が下がっていますが原因は何ですか?」と。
その経営者は、「付加価値?損益計算書にそんな利益は表示されていますか?」と不思議そうに私を眺められました。その経営者が経営する会社は製造業です。
読者の皆さまはご存知の通り、財務会計で作成した損益計算書には付加価値は表示されていません。
では、あらためて「付加価値」とは何か?
売上から変動費を差し引いたものが付加価値です。変動費とは外部から仕入れた材料費や商品の代金そして外注費などです。
※変動費とは外部から仕入れた材料費や商品の代金そして外注費のこと
製造業や建設業は、売上から材料費や外注工賃を差し引いた金額が付加価値、そこから製造原価(建設原価)を差し引くと損益計算書に表示されている売上総利益になります。
卸売業や小売業は、売上総利益=付加価値です。
サービス業のように変動費がない業種は、売上=付加価値です。サービス業でも外注費がある場合は売上から外注費を差し引いた金額が付加価値になります。
業種 | 付加価値計算 |
---|---|
製造業 建築業 |
付加価値=売上-材料費・外注費 |
卸売業 小売業 |
付加価値=売上総利益 |
サービス業 | ※変動費がない場合 付加価値=売上 ※外注費がある場合 付加価値=売上-外注費 |
そして、冒頭の私が質問した付加価値率とは、付加価値を売上で割って算出したパーセンテージで、私はこの率が下がった理由(原因)をお尋ねしたわけです。
前置きが長くなりましたが、私の問いに対し、その経営者は付加価値については理解されたものの、なぜ直前期に付加価値率が下がったのかは分からないとのことでした。
●この率を何%にするかは経営そのものであること
●毎月チェックして上がったり下がったり変動するときはその原因を知ること
上記は経営者や経営幹部にとって、重要なテーマにして頂きたいと思います。
経営において「付加価値」が一番重要な理由
では、なぜ私が付加価値にこだわるかというと、経営において付加価値が1番重要な利益だと考えているからです。
まず、付加価値は利益の源泉です。ここから会社が営業(経常)利益をどれだけ出せるかが決まるのです。
ビジネスで使うことができる固定費は稼いだ付加価値内の範囲内でしか使うことができません。逆に言えば、固定費が100必要なら付加価値は101以上ないと赤字になります。繰り返しますが、付加価値は利益の源泉なのです。
次に、経営管理上は売上総利益や営業利益や経常利益よりも重要度が高いのが付加価値です。
なぜか?改善の打ち手が多いからです。
具体的に事例をお話ししましょう。皆さまの会社で営業利益を今期より来期は多くしたい、または営業利益率を向上させたいと考えて計画を作るとします。
では、どうやって利益を増やしますか?利益率を向上させますか?
例えば、製造原価(建設原価)や一般管理費は固定費と呼ばれています。その固定費で利益を増やそうとした場合の打ち手は何が考えられますか?
固定費への打ち手は「減らす」しかありません。つまり固定費に対策を打って利益を増やすには固定費を減らすしか無いのです。
具体的には、
営業利益を増やす=売上総利益を増やすか一般管理費を減らす
もちろん、どうやって減らすのか?は色々方法は考えなければなりませんが、打ち手としては一つ(減らす)だけです。
では、付加価値を増やす、または付加価値率を向上する打ち手はどうでしょう?製造業や建築業の皆さまは考えてみて下さい。
付加価値を増やす打ち手は、以下の通りです。
売上を増やす |
---|
①売上単価を上げる ②売上数量を増やす |
変動費を減らす |
③仕入(外注)単価を下げる ④不良品を減らすなど使う量を減らす |
打ち手は4つあり、固定費の打ち手と全く違って、多くの角度から検討、実行して利益の額や率を上げることが可能になるのです。
現在の厳しい経営環境では売上を増やす①および②の打ち手は難しいかもしれません。
しかし、付加価値や固定費の構造をきちんと理解していれば、得意先への見積金額の出し方も精度が上がり、適正な利益を乗せた正しい価格が提示できることで①を達成できるかもしれません。
また、④は自社の徹底した努力で不良や廃棄を少なくすることで材料費を下げることに繋げることが可能になります。
この様に自社の付加価値を増やす打ち手を徹底的に考え、実行して頂きたいと思います。自社の決算書から詳しくお尋ねになりたいときは、無料相談をご活用ください。
コロナ騒動で非常に厳しい経営状況が暫く続く中、自社の努力で少しでも経常利益を増やすには、付加価値に注目した経営管理をお勧めします。
最後に、皆さまと皆さまの大切な方々が健やかにお過ごし頂くことを願っています。
筆者紹介
- 株式会社アタックス戦略会計社 代表取締役会長 片岡 正輝
- 1952年生まれ。アタックス税理士法人の前身である公認会計士今井冨夫事務所に入社。現在は、アタックスグループの統括マネージャーとして、広範囲な知識と豊かな経験という両輪を武器に、経営・財務・会計業務を中心に計画経営の推進、経営再構築、事業承継等のコンサルティング業務に従事、経営者の参謀役として絶大なる信頼を得ている。
- 片岡正輝の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。