「結論から先に言ってください」
社会人であれば、このフレーズを聞いたことがない、言われたこともない、という人はいないでしょう。
特に上司に報告する場合に、この言葉はよく聞かれるのではないでしょうか。
確かに、結論を言わずに細かい事情説明などをされると、相手は結局何が言いたいのか分からず、かなりストレスに感じてしまいます。
逆に、結論を先に聞けば「そういうことが言いたいのか」と安心して詳しい話を聞くことができます。
結論から言わない方がよいときとは
ところで、場合によっては結論から言わない方がいいことがあるのですが、どういう場合かご存じですか?
一般に我々が仕事の中で話をする場合、
「結論」-「理由」-「事実」
という構造で話をします。
結論から話す場合は、例えばこんな感じです。
例①:商談の結果を上司に報告する場合
[理由]先方の部長が私たちの製品をとても気に入ってくれたのです。
[事実]やはり製品Pが他社製品に比べてランニングコストが半分ということが決め手になりました。
結論から話しているのでわかりやすいですね。
しかし、次のような場合は上のような順番で話すのは得策ではありません。
例②:初めての見込客に結論から話す場合
[理由]製品Pは多くのお客様から大変好評を頂いています。
[事実]何しろ製品Pはランニングコストが他の製品の半分で済むのです。
何となく押しつけがましい感じがしますね。
それでは、順番を逆にして、
「事実」-「理由」-「結論」
で話すとどうでしょう。
例③:初めての見込客に事実から話す場合
[理由]このため製品Pは多くのお客様から大変好評を頂いています。
[結論]ぜひ製品Pの購入をご検討ください。
どうでしょうか。
上の例②よりは受け入れてもらいやすいですね。
結論から話すべきかどうかは、相手が自分と同じ認識レベルにあるかどうかで変わってきます。
例①の場合は、上司はその報告事項の背景やこれまでの経緯などはわかっています。
つまり上司と部下とは同じ認識レベルを持っているわけです。
上司が知らないのは商談の結果だけですので、こうした場合は結論を先に言わなければなりません。
一方、例②の場合、初めて製品を紹介する相手は、我が社の製品のことは何も知りません。
私と相手との製品Pに対する認識レベルは全く合っていないわけです。
こうした場合には、例③のように、事実や理由などをきちんと述べて、まず相手と私の認識レベルを合わせることをせねばなりません。
そしてその後に結論を述べれば、相手にはわかりやすい話になります。
コミュニケーションは「相手ありき」
結論から先に言うべき場合と、結論は最後に言った方がよい場合についてお話しました。
双方に共通していることは、相手が知りたいこと、相手が知っておいた方がいいことから肉厚に語る、ということです。
コミュニケーションはすべて「相手ありき」です。
「相手ありき」で考えると、どの順番で話せばいいかも判断できるのです。
日本話し方センターの話し方教室では、相手を意識した話し方について、様々な角度から解説し、またトレーニングで具体的なアドバイスをしています。
多くの受講生がその成果を実感されています。ぜひ一度「受講者の声」をご覧ください!
筆者紹介
- 株式会社日本話し方センター 代表取締役社長 中小企業診断士 横田 章剛
- 1983年 神戸大学卒。メガバンクで、国内・海外の勘定系システムの開発、ガバナンス業務、銀行決算・銀行税務の取り纏めなどに従事。2007年 アタックスに入社し、グループ全体の経営企画、総務、経理、法務等の間接部門を統括。2016年、日本話し方センターの代表取締役社長に就任。研修等で話し方の指導に従事。「話し方」に関する横田のコラムはこちらをご覧ください。