今まさに、事業において、社会や環境に良いものが評価される時代へと変わりつつあります。
近年、世界中で注目を集めるSDGsは、「持続可能な世界」を前提とし、企業の成長と社会の持続性を両立するために、人々の価値観や規制・ルールの変化を促しています。
つまり、SDGsは「経済価値」と「社会価値」の両方によって、企業の市場競争が行われる仕組みをつくろうとするものです。
中小企業こそSDGsに取り組むべき
世界的なSDGsの潮流が、自社の成長と生き残りの根幹に関わる環境変化であることを中小企業こそ、強く認識しなければなりません。その理由は以下の通りです。
SDGsに則さない事業を続けていると 企業の存続が危ぶまれる
これまで購買要因の大部分を占めていた品質・価格・納期といった「経済価値」に加えて、環境や社会にとってのメリットである「社会価値」が、購買時の判断基準として重視されるようになっています。
実際に、大手企業を中心にサプライヤーがSDGsに配慮しているかを確認する動きが出てきており、SDGsへの取り組みが、中小企業の生存戦略につながる時代が到来しています。
しかし、取り組みにコストや人員が割かれることで、本業自体がおろそかになってしまっては本末転倒です。自社の事業分野や規模、財務力などを十分考慮して、自社が取り組む必然性も含めて慎重に検討することが大切です。
SDGsに取り組むことは事業・経営資源を見直すことにもつながる
事業とSDGsの関係性を整理することで、自社の経営理念、経営ビジョン、経営戦略などを見直すためのツールとして活用することができます。
事業として、SDGsに取り組む方法を考え、実践することは、自社を持続可能にし、事業を成長させる可能性を生み出します。
優秀な人材の採用に効果的
SDGsを意識しない企業では、優秀な人材を採用し、定着させることが難しくなります。
社会に貢献できる仕事に携わることは、社員にとって、「社会の役に立っている」「必要とされている」と実感でき、優秀な人材を惹きつける重要な役割を果たします。
中小企業のSDGsへの取り組み方
SDGsの取り組み内容については、企業に一任されているため、中小企業の大半が、手探りの状態で取り組みを進めています。
そこで、国連関係機関が公開している「SDGコンパス」を参考に、中小企業のSDGsへの取り組み方をお伝えします。「SGDコンパス」は、こちらのサイトで確認できます。
ステップ①:SDGsを理解する
ステップ②:優先課題を決定する
ステップ③:目標を設定する
ステップ④:経営へ統合する
ステップ⑤:報告とコミュニケーションを行う
ステップ① ■SDGs を理解する■
まずは、SDGsで設定されている17のゴール、169のターゲットとはどのような項目か?中小企業の実践事例はどうか?について、調べることから始めてください。
理解を深めるにあたり、環境省の持続可能な開発目標(SDGs)推進サイトにある活用ガイドは読みやすく、事例集や動画もありおすすめです。
そして、自社事業での取り組みで、既にSDGsに貢献しているものがないかを探します。
バリューチェーンや取引先を含むサプライチェーンに目を向けて、企業活動全体で、既に取り組んでいる項目を探します。
見つかったら、SDGsの17目標の下に設定されている169のターゲットに紐付けて、整理し可視化します。
ステップ② ■優先課題を決定する■
SDGsに関する現在および将来発生する正と負の影響を洗い出して、これから優先的に取り組む課題を決めます。
まず、自社のバリューチェーン、もしくはサプライチェーンの各工程を分析の対象として、自社の強みと弱み、事業機会と脅威を確認しながら、
自社の事業活動がSDGsに及ぼすプラスとマイナスの影響を特定します。
次に、環境配慮・地域社会との関係に係る内容をもとに、取り組まなければ自社の経営リスクになり得るものや、取り組むことで自社の成長機会となるものを見極め、どのゴール・ターゲットに貢献するのかを整理する紐付け作業を行います。
よくある間違いが、社会課題から入ってしまうという間違いです。
何をやらないのか?
何が得意なのか?
自分たちのやりたいことやこだわりを追求していく中で、自社事業に関係する社会課題を紐付けていくことが重要です。
その中から自社にとって重要性や優先度が高いものを選択して優先課題を決定します。
ステップ③ ■目標を設定する■
ステップ2で決定したSDGsへの貢献で取り組む優先課題に対し、具体的な成果の目標を設定します。
具体的かつ計測可能で期限付きの持続可能な目標を設定しましょう。
そして、定量・定性で目標を設定し、SDGsへのコミットメントを公表します。
ステップ④ ■経営へ統合する■
SDGsを「経営へ統合する」とは「実際に事業にあてはめて行動を開始する」ということです。
本業として SDGs に取り組む際には、大きく⼆つの考え⽅があります。
一つ目は、SDGsの視点で既存製品の「作り方」やサービスの「提供の仕方」を改善していく方法で、すぐに着手することができます。
二つ目は、製品やサービスそのものを改善していく方法で、新規事業開発、技術開発を伴うこともあり、長期的な取り組みとなる場合が多くなります。
どちらの取り組み方も製品やサービスの付加価値を高め、収益にもつながる効果が期待できます。
そして、自社の事業分野や財務力などを踏まえて、中期長期経営計画に落とし込み、全社で取り組んでいきます。
ステップ⑤ ■報告とコミュニケーションを行う■
SDGsを経営に取り込み社内に定着させたら、社外に対してもSDGsを推進している企業であることを発信していきます。
訴求すべきは、商品の値段や性能ではなく、それによって解決される社会問題や、生み出される社会価値です。
企業のWebサイト、SNS、動画、イベントなど目的や状況に合わせて併用すれば効果的です。
また、定期的に自己評価を行い、SDGsの取り組みを評価・改善し、次のサイクルに繋げていくことが重要となります。
以上の5つのステップをもとに、是非SDGs経営の第一歩を踏みだして頂ければと思います。
今回は、中小企業のSDGs経営として、その必要性と取り組み方をお伝えしました。
アタックスグループでは、経済価値と社会価値を実現する「強くて愛される会社」に向けた支援を行っております。「強くて愛される会社」の考え方を体系的に学びながら、自社の「価値創造計画」を策定する経営者育成プログラムとして、「アタックス社長塾」を開講しております。一人でも多くの「強くて愛される会社」を志す経営者を輩出することが、我々アタックスグループの使命であると考えております。
ご関心のある方は、アタックス社長塾のホームページをご高覧ください。
筆者紹介
- アタックスグループ アタックス社長塾 コンサルタント MBA(経営学修士)
小島 健嗣 - 1979年生まれ。名古屋商科大学ビジネススクール卒。税理士法人、商社勤務を経て、2013年アタックス税理士法人入社。2019年からアタックス社長塾に参画。前職の商社で財務責任者を務めた経験を活かし、経営を財務の面からサポートする社外CFOとして、「いかにすれば可能かを語れ」をモットーに、経営者の戦略的な意思決定を導くことに従事。現在は、中堅中小企業への豊富なコンサルティング業務を通じて培った知識と経験を活かし、アタックス社長塾サブディレクター兼伴走コンサルタントとして活躍中。
- 小島健嗣の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。