アタックスグループには、日本で最初にできた話し方教室である日本話し方センターがあります。
設立から69年を経た現在も多くの受講生に話し方やコミュニケーションの取り方を学んでいただいています。
日本話し方センターのセミナーでは、話し方のトレーニングのために、受講生に2分間のスピーチを行ってもらいます。
話し方でトラブルが起こっていないか?
先日、そのスピーチで受講生のCさんがこんなスピーチをされました。
お客様に資料を作成してお届けする約束をしていました。
しかし、約束の時間に間に合いそうになかったので、「すみません。午前中のお届けは間に合いそうにありませんが、今日の夕方には必ずお届けします」とお客様に連絡しました。お客様は「夕方なら宅配便の発送に間に合うからいいですよ」と言ってくださいました。
ところが、その日の夕方、お客様から電話がありました。
「もうすぐ6時だぞ!いつまで待たせるんだ!」大変なお怒りだったので、すぐに上司に報告してお詫びいただきました。資料はそれからしばらくしてからお届けしましたが、お客様のお怒りは収まりませんでした。
これからは仕事をもっと前倒しでやろうと思いました。
さて、少しこの話を振り返ってみましょう。
Cさんが「今日の夕方」とお客様に伝えたところ、お客様は「それなら宅配便の発送に間に合う」と答えています。
この時点で、お客様は夕方ということは宅急便の集荷が来る5時ごろには届けてくれるだろう、などと、具体的な時間を想定していたはずです。
一方、Cさんは、6時までならまだ夕方と言えるだろう、と思っていたかも知れません。
Cさんとお客様の「夕方」という言葉から想定される具体的な時刻にずれが生じたことが伺われます。
もし、お客様に電話をした時、Cさんが「その宅配便の集荷は何時ですか?」と確認し、お客様から「5時です」というお答えを聞いていたら、「夕方」という曖昧な表現ではなく、一定の時刻がお互いの間で認識できたはずです。
事例から学ぶポイント
この話のポイントは次の2つです。
相手のことを考える:具体的に想像できているか?
一つは「常に相手のことを考える」ということです。
Cさんは自分の仕事は、お客様に資料を提出することだと思っていたように感じます。
日本話し方センターでは、折りに触れて、「相手の立場に自分を置き換えて物事を考えてください」とお伝えしています。
この言葉通りに、Cさんが電話をしている時にお客様の立場に自分を置き換えて考えたならば、きっと、その資料をいつ、どのように使うか、ということに思いを馳せ、宅配便の集荷時間を確認することができたでしょう。
具体的に話す:曖昧ワードは厳禁
もう一つのポイントは「具体的に話す」ということです。
上でも述べたように「夕方」という言葉を聞いて連想する具体的な時刻は、人それぞれ違います。
この曖昧さが円滑なコミュニケーションの妨げになることがよくあります。
こうした曖昧な表現を我々は何気なく使っていることが驚くほど多いので要注意です。
「近く」「大きい」「すぐに」などはよく使う言葉ですが、曖昧だな、と感じた時はぜひ具体的に確認してください。
そうすれば、後々のトラブルを防ぐことができるでしょう。
おわりに
この曖昧な表現は、相手は私と同じように理解しているだろう、という思い込みがあるから、つい使ってしまうのかも知れません。
そう考えると、相手の立場に立って考えるということがすべての基本とも言えそうです。
ぜひ意識してみてください。
日本話し方センターが提供する各コースでは、オンラインでもリアルでも活用できる話し方のポイントやコミュニケーションの取り方をお伝えしています。
そして参加者への個別指導を通して、相手に伝わる話し方のスキルを身につけていただいています。ぜひ実際の成果を「受講者の声」でお確かめください!
筆者紹介
- 株式会社日本話し方センター代表取締役社長 中小企業診断士 横田 章剛
- 1983年 神戸大学卒。メガバンクで、国内・海外の勘定系システムの開発、ガバナンス業務、銀行決算・銀行税務の取り纏めなどに従事。2007年 アタックスに入社し、グループ全体の経営企画、総務、経理、法務等の間接部門を統括。2016年、日本話し方センターの代表取締役社長に就任。研修等で話し方の指導に従事。