2025年も4月に入り、新社会人が入社する季節となりました。
一部の企業では華々しい入社式が行われ、話題となっていますが、新入社員にとってはあくまでスタートであり、今後のキャリアを輝かしいものにすることが重要です。
そこで、今回はキャリア開発について考えます。
Z世代とベテランですれ違う仕事観
昔の日本におけるキャリア開発の一般的な理解は、ポスト・役職・肩書を手に入れていくことを指しました。いわゆる昇進です。
しかし、人口減少の現代は、組織が大きくなる時代ではありません。ベテランでも役職に就くことが狭き門であり、もちろん若手にとっても、ポストは潤沢ではありません。
一方、仕事観の変化もあり、役職に就くことを重要視しない人も出てきました。
「5年後には係長になってほしいから頑張れ」といったコミュニケーションでモチベートすることが難しくなっているのです。
また、今でこそインターンを経験する人が増えていますが、新入社員の多くは具体的な業務を知りません。
承認欲求の強いZ世代は、ルーチンワークよりも華々しい企画的な業務をすぐにしたいと考えていますし、すぐにその機会が訪れると思っていたりします。
「こんな単調な仕事がいつまで続くのだろう」「これは、私が取り組む仕事ではない」などルーチンとは言え、誰かがやらなくてはならない重要な仕事を軽視する発言も出がちです。
就職氷河期世代の人間からすると「仕事を軽く考えるな」「四の五の言わずに、まずはできることをやれ」「それほど言うなら、能力を見せろ、能力をあげろ」と感じてしまうかもしれません。
しかし、上司や先輩はこうした仕事の魅力や重要性をしっかりと伝えられているでしょうか。
すべての仕事には魅力があり、必ず誰かの役に立っています。
しかし、仕事の魅力や必要性を語るべき上司や先輩は、自分の仕事をいつかは引き継いで欲しいとの思いから、立場に偏った伝え方や、自身の成功体験を語ってしまっているケースも少なくありません。
「MUST−CAN−WILL」がキャリア開発の鍵
これからのキャリア開発には、コミュニケーションに工夫が必要と考えます。
そもそも「キャリア」とは中世ラテン語で「車道」を意味する言葉です。ビジネスパーソンにおけるキャリアはポスト・役職の経歴だけに限定されるのではなく、職務経験全般の「道筋」を指します。
しかし、職務経験全般の道筋開発と言われても範囲が広すぎて、かつ新入社員にとっては遠い未来の目的地のように受け止められて、どの様にコミュニケーションすべきか多くの上司・先輩、新入社員が悩んでいるのが現実でしょう。
そのような場合は、まず「MUST」「WILL」「CAN」の視点で、キャリアを話し合うことをお勧めします。
「MUST」「WILL」「CAN」はキャリア開発で使われる代表的な視点で、様々に定義付けされますが、私は以下の考え方が使いやすいと思っています。
上記の定義では、「MUST」「WILL」「CAN」をそれぞれ円で表現したときに3つの円の重なりを拡大させることがキャリアの拡大となります。
最近では高校からキャリアに関する授業があるそうで、社会が求めていること(MUST)を考察することで、自分のやりたいこと(WILL)を見つけ、「自己理解」を深めていくのだそうです。
会社・組織においても当然必要ではないでしょうか。
プレイングマネジャーが増えた現代では、日常業務の中で、仕事の必要性や目的を語ることが少なくなっています。
キャリアを考える時間をしっかりと確保し、上司と新入社員でディスカッションすることが重要です。
MUSTの視点で、上司・先輩が仕事の魅力を語ることで、日々の仕事の見え方が変わってきます。
また、新入社員の視野が広がり、やりたいことつまりWILLが増え、MUSTと重なっていく可能性もあるのです。
一方、部下のWILLについてもしっかりと聴くことが重要です。
やりたい仕事が、会社が求めることと全く重ならないのは採用のミスマッチですが、多少はズレがあるのが現実です。
ポイントのズレとしては主に以下が挙げられるでしょう。
いずれも話し合うことが出来れば、ズレを完全に解消できなくとも、道筋をつけることができるものです。
特に方向性のズレについては「役職者になれば企画・提案も通りやすくなる」とポストとしてのキャリアを考えてもらいやすくなります。
また、当たり前ですが、求められていて自分がやりたいことを認識できれば、できるようになりたいと思えます。
つまりCAN、能力の開発に関するモチベーションを上げる効果が期待できるのです。
まとめ
成長・育成に関する人事面談では、どうしても営業スキルや、技術知識の向上など「CAN」のコミュニケーションになりがちです。
その前に、やってもらいたい「仕事」、やりたい「仕事」に焦点を当てた「MUST」と「WILL」のすり合わせをディスカッションすることも取り入れてみてください。
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筆者紹介
- 株式会社アタックス・ヒューマン・コンサルティング 取締役社長 永田 健二
- 1999年 静岡大学卒。中期経営計画策定支援、組織風土分析支援、人事制度構築支援、人事制度運用支援などに従事。新入社員研修、中堅社員研修、管理者研修、各種個別研修など研修講師としても活躍中。