歴史に学ぶ中小企業のための「倫理的リーダーシップ」

歴史に学ぶ、中小企業のための「倫理的リーダーシップ」 経営

企業の不祥事・不正が後を絶たない時代です。

短期的な利益追求に惑わされず、倫理的な経営を行うことが、企業の持続的な成長には不可欠です。

特に、中小企業にとって、コンプライアンスは企業の信頼性と存続に直結する重要な要素です。

今回は、先人たちの教えを頼りに、コンプライアンス遵守の重要性を再認識し、激動の時代を生き抜くための「倫理的リーダーシップ」についてお伝えします。

西川仁右衛門の「先義後利」:時代を超える商道徳

江戸時代、近江商人の一人として活躍した西川仁右衛門は、「先義後利者栄 好富にしてその徳を施す」という家訓を遺しました。

「義(正しい商い)を先にし、利を後にする者が栄え、富を得たらその徳を社会に施せ」というこの教えは、現代のコンプライアンス経営やCSR(企業の社会的責任)の根幹を成すものです。

短期的な利益に捉われず、倫理的に正しい行動をとること、そして社会貢献を通じて商人の存在価値を高めることの重要性を説いています。

西川仁右衛門は、自らの家訓を実践し、地域社会の発展にも尽力しました。

江戸時代のピーター・ドラッカー:石田梅岩の「石門心学」

江戸時代中期の思想家 石田梅岩は、「石門心学」という庶民のための道徳を説き、商人の倫理観の確立に大きな影響を与えました。

ピーター・ドラッカーより約250年も早く経営の本質を説き、そしてマックス・ウェーバーより約200年も早く経済倫理を説いたとして江戸時代のドラッカーとも呼ばれています。

当時は「士農工商」制度の中で最下層に位置していたのが商人であり、商人が得た利益は、何も生産せず悪知恵で得たものとの理由で、社会からは軽蔑されていました。

このような時代背景のなか、石田梅岩は商売で利益を得る事は、正しい事なのだと肯定しました。

ただし、その利益は梅岩の考える商人道「正直・勤勉・倹約」にそって得た利益でないと長続きはしないと説いています。

社員や取引先、顧客、地域社会など、すべてのステークホルダーとの信頼関係を築くことが、企業の持続的な成長につながるという梅岩の思想は、近江商人の「三方よし」の精神や現代のサステナビリティ経営の礎となっています。

武士道に学ぶ「仁」と「義」:普遍的な倫理観

新渡戸稲造が「武士道」で説いた「仁」(思いやりや慈愛)と「義」(正義や道徳)は、時代を超えた普遍的な倫理観であり、リーダーが持つべき重要な資質です。

西川仁右衛門の「先義後利」の精神や石田梅岩の商道徳にも通じるこれらの徳目は、コンプライアンス遵守を徹底し、倫理的な企業経営を行う上で欠かせないものです。

現代社会においても、「仁」と「義」に基づいたリーダーの行動は、企業の信頼性を高め、持続的な成長を支える基盤となります。

歴史に学ぶリーダーシップ:人材育成の重要性

歴史に学ぶリーダーシップ:人材育成の重要性

法令遵守を実現し、倫理的な企業文化を醸成するためには、リーダーシップが不可欠です。

歴史に学ぶリーダーシップの要諦は、人材育成にあります。

社員一人ひとりの倫理観を高め、コンプライアンス意識を浸透させるためには、継続的な教育と適切な指導が必要です。

また、リーダー自らが倫理的な行動の模範を示すことで、企業全体の倫理観向上に繋げることが重要です。

人材育成は、企業の持続的な成長を支えるだけでなく、コンプライアンスリスクを軽減するための重要な投資です。

中小企業の事例:倫理的経営の実践

独自の取り組みを通じて倫理的経営を実践し、成功を収めている中小企業の事例をご紹介します。

事例1:「心の経営」を実践する産業廃棄物処理会社の例

廃棄物処理を一貫体制で行う企業の事例を紹介します。

経営の根幹を成す経営理念は、「会社は社員とその家族を幸せにするためにある」です。

「人」を財産と考え、「心」を重視した経営を実践する同社は道徳や倫理感を最優先し、行動指針を「十徳」として社員と共有し人事評価に丁寧に落とし込まれています。

まさに「仁」と「義」に基づいた経営の実践です。

社長は、「義を見てせざるは勇なきなり」を座右の銘とし、特に社員とその家族にとって何が正しいのか、あるべき姿は何かを常に考え続けています。

短期的な利益よりも倫理を優先する勇気が求められる現代において、自らの信念に基づいて行動する勇気の大切さを示唆しています。

事例2:四方よし経営で「いい家づくり」と「会社づくり」に挑戦する建築会社の例

「四方良し経営」を実践し、社員とその家族、仕入先・協力業者とその家族、お客様、地域住民のすべてが幸せになることを目指す建築会社の事例を紹介します。

「シックハウス症候群」を出さない正しい家づくりを行うだけでなく、「お客様づくりよりも先にファンづくり」を行うなど、「先義後利」の精神を体現しています。

社員の二割が自社の施主であるという事実も、経営の透明性と一貫性を示す証左と言えるでしょう。

こども食堂の運営や地域貢献活動にも積極的に取り組み、地域社会との繋がりを深めています。

これらの活動は、採用活動にも好影響を与え、地域社会への貢献を通じて優秀な人材を確保することに成功しています。

また、地方公共団体や組合、NGO、大学との連携を通じて、サステナビリティ経営も実践しています。

 

倫理的な経営

これらの企業は、それぞれの経営理念に基づき、倫理的な経営を実践することで、社会から必要とされる存在となっています。

コンプライアンス違反が社会問題化する現代において、倫理的な企業経営は、企業の持続的な成長に不可欠です。

中小企業のリーダーは、高い倫理観とビジョンを持ち、社員を鼓舞し、未来を切り拓く強い意志を持つことが重要です。

皆様が倫理観に基づいたリーダーシップを発揮することで、激動の時代を乗り越え、持続的な成長を遂げる一助となれば幸いです。

 

アタックスグループでは、「強くて愛される会社」の考え方を体系的に学びながら、自社の「価値創造計画」を策定する経営者育成支援として、「アタックス社長塾」を開講しております。

一人でも多くの「強くて愛される会社」を志す経営者を増やしていくことが、我々アタックスグループの使命であると考えております。

ご関心のある方は、ホームページをご高覧ください。

アタックス社長塾を見る

筆者紹介

小島健嗣

株式会社アタックス 社長塾推進室 室長 MBA(経営学修士) 小島健嗣
1979年生まれ。名古屋商科大学ビジネススクール卒。税理士法人、商社での財務責任者を経て、2013年アタックス税理士法人入社。2019年からアタック社長塾に参画。中堅中小企業への豊富な事業承継支援を通じて培った経験と知識を活かし、経営者の育成支援に従事。現在は、「強くて愛される会社」を志す経営者の育成機関「アタックス社長塾」の責任者兼伴走コンサルタントとして活躍中。

タイトルとURLをコピーしました