フジイコーポレーション~5方良し経営を愚直に続ける100年企業

坂本光司の快進撃企業レポート 経営

新潟県燕市に、フジイコーポレーションという社員数107名の企業があります。

創業は1865年ですから、今年でなんと160年の歳月が流れている企業です。現在の社長は藤井大介さんで、5代目の社長となります。

創業時は、地元らしく農業機械を製造販売していましたが、今から約50年前、これまた新潟ならではの除雪機の開発に成功し、現在では、これが主力商品になっています。

除雪機は大型機の分野では、世界有数の企業であり、現在では世界の19ヶ国に輸出もしています。余談ですが、あの極寒の地、南極で世界の越冬隊が使用する除雪機は、ほぼ100%同社製です。

商品的にも著名な企業ですが、私たちが同社を高く評価しているのは、5方良し経営を愚直一途に実践している点です。

160年の創業歴を見れば、同社がいかに顧客や株主に高い評価を受け続けているかは明白ですので、ここでは社員と協力企業、そして障がい者雇用の面から人を大切にする経営の一端を紹介します。

まず、社員に関することですが、同社の最大の経営方針は「雇用を守る」です。ですから、創業以来、どんなに厳しい状況下にあっても、雇用を守るどころか増加してきました。

以前、藤井社長から話を聞きました。それはかつて売上高が激減した時の話でした。

メインの銀行の役員や支店長が心配され、訪ねて来られ「藤井社長…、明らかに2割程度の社員さんは過剰雇用です…。他社も皆、今は希望退職者を募っています…。企業を維持されるためには、やむを得ない策と思いますが…」とアドバイスしました。

その話を聞き、温厚な藤井社長は「貴方は当社に廃業しろというのですか…、当社は一人でも社員の雇用を守れなくなった時こそが廃業する時です…、そのことは、銀行の皆さんは知っているはずだ…」と、烈火のごとく怒りました。

こうした社員とその家族に対する思いは、様々な面で見ることができます。工場は、継ぎ足し継ぎ足しで拡大していますので、敷地内には古い工場・新しい工場が混在しています。

しかしながら、共通しているのは全ての工場は明るく段差等のないバリアフリーであり、工場内には140センチ以上の高さの什器備品は一切ありません。

効率面から考えたらもっと高い方がと思いますが、同社では万が一の場合でも、社員の「頭」は守るという姿勢なのです。

加えていえば、工場内にはフォークリフトも1台もなく、社員は台車を使っているのです。これも効率ではなく、万が一の場合対策なのです。

こうした考えで経営をしていますから、多くの社員の職場満足度は高く、転職的離職をする社員もほとんどいません。

いつぞや、藤井社長から現役のまま末期がんで亡くなってしまった社員の話を聞きました。余命いくばくのないことが分かったその社員は、家族あてに遺書を書きました。

その一通を社長が涙ながらに読んでくれました。その遺書にはこう書かれていました。

「もしも私が死んだら、私がいつも着ていたフジイコーポレーションの作業服を、棺の中に一緒に入れてください…。そして火葬場に向かう霊柩車は、いつも自分が通勤していた同じ道路を通って行ってください。そして、会社の前に来たらいったん車を止めてください…」と。

余談になりますが、当日は遺書通りにしたそうです。会社の玄関先にはフジイコーポレーションの全社員が、整列し、作業帽を振って見送ったそうです。

同社のこうした人を大切にするという基本姿勢は、社員だけではありません、私が社外社員と名付けた仕入先や協力企業に対しても同様です。

同社は現在、協力企業が20社ほどありますが、一部を除き、大半が新潟県内です。これには訳があるのです。

つまり、地元優先に徹しているのです。同社では必要な部品が発生した場合、まずは燕市内の企業に依頼し、不可能な場合は新潟県内に依頼、それでも不可能な場合は県外が基本なのです。

一般的に行われている、流れている部品の競争見積もり等は一切やりません。そのことを藤井社長は、「自分がやられて嫌と思うことは決してしません…」と言います。

先日もコロナ禍での対応について話を聞きました。協力企業を担当している全スタッフを集めて話をしました。

「もしも、このコロナで廃業したり、倒産したりする協力企業が発生した場合、その責任は君たちにもある…、という気持ちで、できる限りのことをしてあげてください…」と。

最後は、地域住民とりわけ障がい者等への思いです。同社の障がい者雇用率が法定雇用率以上であることは当然ですが、同社では、私が名付けた間接雇用(みなし雇用)に以前から注力しているのです。

例えば、地域の障がい者施設で生産販売している商品のカタログ等を社内で回覧し、販売協力を日常的にしているばかりか、同社の社員が出張の折、相手に持参するお土産も、ほとんどすべて障がい者施設で生産販売しているものなのです。

何年か前、訪問した時、玄関の壁に大きな絵が飾ってありました。聞くと、「この絵も施設で暮らす絵が好きな障がいのある人が書いているもので、何とか協力したいと、時々レンタルさせていただいているのです…」と話してくれました。

こうしたこともあり、同社には家族ぐるみで働いている社員も事のほか多くなっています。

 

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筆者紹介

坂本光司

アタックスグループ 顧問
経営学者・元法政大学大学院教授・人を大切にする経営学会会長  坂本 光司(さかもとこうじ)
1947年 静岡県生まれ。静岡文化芸術大学文化政策学部・同大学院教授、法政大学大学院政策創造研究科教授、法政大学大学院静岡サテライトキャンパス長等を歴任。ほかに、「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞審査委員長等、国・県・市町村の公務も多数務める。専門は、中小企業経営論、地域経済論、地域産業論。これまでに8,000社以上の企業等を訪問し、調査・アドバイスを行う。

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