生産性とは?
生産性は、ヒト、モノ、カネ、情報という経営資源の中でとりわけ重要な経営資源である「人材の活用度」を分析するものです。
その目的は、人材の「付加価値」の獲得能力をチェックすることにあります。
「付加価値」とは、会社が経営活動の中から生み出した経済的な価値です。
「付加価値」の計算方法には控除法と積上法というこつの方法がありますが、実務的には控除法がわかりやすく計算も簡単ですので、ここでは控除法を説明します。
控除法では、売上高から売上原価の中に含まれる「外部から購入した経費」(商品仕入高、原材料費、外注加工費、消耗品費)を差し引くことで「付加価値」を計算します。
なお、「付加価値」は卸売業、小売業などでは「粗利益」と言われているものであり、製造業、建設業などでは「加工高」と言われているものです。
人材の生産性の指標としては次のものが存在します。
(2)一人当たり人件費(月)
(3)付加価値分配率(労働分配率)
(4)人材生産性
(1)一人当たり付加価値(月)
「一人当たり付加価値」は生産性の中では最も重要な指標です。
この指標は従業員一人当たりの稼ぐ力であり、誰にも大変わかりやすいことから、一人当たり付加価値を必達目標として経営している中小企業は多いと思います。
収益性の指標の一つに付加価値率があり、付加価値率の高い会社は一般的に優良会社であることを収益性(利益の獲得力を分析する)で述べましたが、たとえ付加価値率が低くても、一人当たり付加価値が高ければその会社は生産性が優れていることで優良会社と言えます。
他社がまねのできない省力化された効率性の高い製造、販売、サービス提供システムを考案し、一人当たり生産性を高めた会社は優良企業です。
インターネットが進化する中で、このタイプの優良会社が今後もどんどん生まれてくるでしょう。
(2)一人当たり人件費(月)
人件費には、賃金、給与、賞与以外に退職金、法定福利費、厚生費などの総人件費が含まれます。
「一人当たり人件費」は高ければ高いほど従業員にとっては望ましいことになりますが、高い人件費を支払うことのできる源泉は付加価値にあります。
付加価値とのバランスを欠いた高い人件費は利益を圧迫することになります。このバランスについては(3)をご覧ください。
(3)付加価値分配率(労働分配率)
「付加価値分配率」は、付加価値に占める人件費の割合を示しています。
付加価値分配率は「労働分配率」ともいわれます。
この方がみなさんには聞き慣れた言葉かもしれませんね。
付加価値分配率(労働分配率)の上昇は、人件費の増加率が労働生産性の上昇を上回っていることを意味しており、早めに対策を講じないと収益性が悪化し、人件費の負担が重くなってきます。
付加価値分配率(労働分配率)は業種によってバラツキが大きいのですが、中小企業の場合だと、労働集約的な産業である小売業、飲食業、サービス業で50~60%、製造業、卸売業では45~55%といったところでしょう。
理想を言えば、付加価値分配率(労働分配率)を一定に保ちながら、より高い一人当たり人件費を支払うことのできる付加価値を稼ぐことを経営目標とすべきでしょう。
また、売上減少に対して耐久力をつけるためには、人件費は次のような適正人員管理をすることによって、経営を行えるように人員計画を立てることです。
適正人員数=許容人件費÷一人当たり人件費
※許容付加価値分配率の考え方に決まりはありませんが、営業利益と経常利益が共に黒字であることが許容範囲でしょう。
(4)人材生産性
付加価値分配率(人件費÷付加価値×100)の逆数(付加価値÷人件費)を「人材生産性」と言います。
会社を長期にわたって繁栄成長させる原動力となる人こそ最高の経営資源であると言えます。
人材生産性は、高いほど従業員が人件費に比べて高い付加価値を稼ぎ出していることを意味しています。
計算式(付加価値÷人件費)のとおり、従業員一人一人が自分の人件費の何倍の付加価値を稼いでいるかを表す指標と言えます。
人材生産性は2倍以上であれば優良会社と言っていいでしょう。
(1倍では粗利の段階で人件費分しか稼げていないということになります)
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筆者紹介
- アタックスグループ 代表パートナー 公認会計士・税理士 丸山 弘昭
- 数百社のクライアントについて「経営のドクター」として、経営・税務顧問、経営管理制度の構築・改善、経営戦略・経営計画策定、相続対策・事業承継、M&Aなどを中心としたコンサルティング業務に従事。幅広いネットワークと数多くの実績を生かし、経営者の参謀役、「社長の最良の相談相手」として活躍中。
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